1話 冒険の始まり
1週間は毎日投稿できるように頑張ります
ふっふっふっふっふ。あ、これリアルに出したらただのヤベーやつだ。
「お兄、キモい」
「どストレートな罵倒やめろよ」
俺は風切優希。現高校一年生のゲーマーだ。
今現在俺をにやけさせ、妹の舞に罵倒された原因のフルダイブ型VRゲーム、『Freedom Surbive Online』通称FSO。
直訳で自由に生き延びろ。
このゲーム、名前からの雰囲気だけでも「うん?」と首を傾げられるのだが、実際その通り。この世界は、PKを許容している。流石に街中での攻撃にはダメージ判定は無いようだが、フィールド外でのキルにペナルティは付かない。
まあここまで聞けばわかる人はわかるだろう。そうだね、PKの巣窟のようなゲームだね。
そもそもsurviveって付いてる時点で確実にそれが狙いなんだよな……。
「そういや舞はどこかしらのクラン入ってるのか?」
このゲームの発売日は半年前、俺が受験シーズン真っ只中のタイミングだ。
で、この妹はそんな俺の事情など知ったことかとサービス開始当日から始め、俺に面白いだのなんだの煽ってきたのだ。
ならば相応のクランに入っているのではと思い質問したのだが……
「ひ・み・つ」
「うぜえ!」
教えるつもりはかけらもないらしい。それどころか煽りまで追加だ。本当にいい性格してやがる……!
「まあいいか。戦士職だっけ?」
「そそ、まあ魔法も少々使うけどね」
「器用貧乏になってないか?」
「だいじょーぶだよ。AGIそんなに振ってないし」
「俺あんまりMMOやらないからなぁ」
「ふーん。10個のゲームでトップクランを率いていた人のセリフとは思えないね」
まあ、否定はしない。まあどこも少数クランだったから率いられただけだけどな。
「まあいいだろ。さ、準備もできたしインするわ」
「最前線で待ってるよ」
「うぃうぃ」
最前線ってレベル幾つなんだろ? まあその辺はいいかなぁ。
そんな事を考えつつ、俺はフルダイブゴーグルの電源を入れ、意識をVRに沈めた。
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「ふむ」
「チュートリアルへようこそ! ここではあなたのキャラクターの容姿の設定、初期職業の決定、スキル決定。そしてお望みであれば簡単な戦闘チュートリアルを行います!」
目の前にはスーツ姿の幼女。これはいい。いや良くないけどいい。そう言うデザインだとわかる。
けどさぁ
「何で学校の教室なんだよ……!」
「ご不満ですか?」
「別にいいんだ。うん。ツッコミたかっただけだから」
「どこにです? は! もしかして私……!?」
「バカ違う下ネタダメ絶対。キャラ容姿の設定だっけ? どこまで変えれる?」
「あ、はい。性別は自由、ただし声は変えられません。種族は人間のみ。後で変えられるかも知れませんね? 身長などの体格は自由ですが、あまりに現実とかけ離れるのは推奨しません」
体格に関しては本当に変えたら現実と感覚が違いすぎて動かせないとか多々あるから基本一緒。性別を変える意味はない。で、種族? このゲーム種族変えられるんだな。
受験のせいで本当に情報を取っていないのがわかる。情弱すぎだな。
「現実の体格と同じで」
「了解です」
幼女が指をパチンっと鳴らすと一瞬で現実とほとんど同じ身体になった。
あとはメニューウィンドウで髪色と目の色を変えて、髪を少し伸ばし、後ろでまとめる。
「うん。こんなもんでいいだろ」
「挙動の確認が可能ですがどうしますか?」
「うーん、ちょっと試す」
バク転3連からの飛び上がりで壁に向かい壁を蹴る。そこから反転して何度か壁の間を跳び回る。ゲームじゃないとできない挙動だ。流石に現実でこれは無理だろ。
「問題なさそうだな。職業は……魔法使いと……サブに調合師で」
「………………」
「おーい?」
「事象確認、状況精査、物理エンジン確認…………ありえない」
壊れたのか? ていうかありえない?
「何が?」
「リアルの人間と同じ身体能力で今の行動を行うのは不可能のはずです」
「? 可能だろ? 現に出来た」
「ですからありえない。と。貴方は何者ですか?」
「ただのゲーマーだぞ? それ以上でもそれ以下でもない。ただ、体の動かし方を知っているだけだ。それより職業頼むよ」
何言ってるんだか。リアルと同じなら同じなりにやり方があるだろうに。
「分かりました。私は私の仕事を行います。メインが魔法使い、サブに調合師でよろしいですね?」
すると、前の黒板に俺のジョブが書かれる。何だこの仕様?
「おう。スキルは…………火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、魔力継続回復、調合、識別で」
「分かりました」
またもや黒板に。この遊びをしたいから教室にしたのか?
スキルは最初7つ選べる。武器を使う予定はないし、移動系スキルや回避スキルで、最初の枠を潰すのはもったいない。
であれば主力の魔法とそれを補う魔力、薬を作るための調合、そしてアイテム情報を詳しく見れる識別に限るだろう。
ちなみにこの識別、モンスター、プレイヤー、NPC相手には使えないらしい。
とは言えその辺の草とかにも何かしらの効能があったりするらしいのであって損はないスキルだろう。て言うか絶対7とか言う中途半端なの一つは識別枠だと思うんだよね。
まあどうでもいいか。
「最後に貴方の名前をお願いします」
そうだなぁ風切優希。カザキリユウキ。キリユウ、キリュウ。まあこんなところか。
「キリュウで」
「はいはーい、キリュウだね。あ、私はメグミだよ。まああんまり関わることはないんじゃないかなぁ」
ふーん、まあ頭の片隅あたりに置いておこう。
「さて、戦闘チュートリアルだっけか?」
「はい。ただ別に戦闘しなくとも魔法を使ってみる。と言うのもありです」
「じゃあ魔法を使うで頼む」
またもやパチンっと指を鳴らす幼女……メグミ。すると教室から体育館へ景色が変わった。
「ここっていつまで使える?」
「いつまででも。ただ熟練度は上がらないのでその点は気をつけて下さい」
あー、そうか。まあそんなうまい話はないよな。
このゲームの魔法は、使えば使うほど、使った魔法の難易度が高ければ高いほど熟練度が上がりやすくなる。
この熟練度が厄介で、レベルとは別カウントなのだ。つまり魔法を使い続けないと強い魔法にはたどり着けない。見かけ上は。
実は初期魔法がファイアーバレットのように属性名称+バレットなのだが、基本魔法にクリエイトというものがある。
このクリエイト魔法、形を変えられる上に、魔力を込める量を調整する事で大きくも小さくもできる。
つまり、例えばファイアーアローという魔法が存在したとする。そしてファイアクリエイトを使って矢の形をとる。
この2つなら、ファイアクリエイトで手間をかけた方が強いというわけだ。
まあつまりだ、このゲームの魔法は鬼畜だ。
まずファイアクリエイトは常にその形を想像しなければならない。それが崩れると四散するらしい。そして、込めた魔力が初期の値から離れれば離れるほど、制御が難しくなる。
そして何より、その形を維持したまま敵を攻撃しなければならない。
「クソゲーだろもう」
取り敢えず作ってみた火の矢を体育館の反対側にある木の的に向かって放つ。が、途中で消えてしまった。
「常に道を描く? いや、真っ直ぐでそうなるならどちらかというと形の維持が問題か」
という事でもう一回。今度は、完璧な維持をわざと少し崩してみる。
「うまいこと行かないなぁ」
少し崩した途端、四散、今度は完璧な形である程度ルートに自由度を持たせるも四散。
「無理じゃね?」
いやいや、システム上できるんだったら可能だろ。
はい、という事で反復練習だな。
1時間後
「ある程度は安定してきた」
「あのー」
「何?」
「この練習、中で行ってたらかなり熟練度稼げてましたよ?」
「マジで?」
え? 取り敢えず試すレベルでしかまだやってないよ? ていうか取り敢えず形作るぐらい出来ないと話にならないでしょ。
「まあいいでしょう。熟練度は規約上反映されません。ただ、ここまでのことをやらかしておいてその成果が見れないのも可哀想。と、運営が言ってます」
「メタイメタイ。つまり俺がこの練習で稼いだ熟練度を見せてくれると」
「はい。口頭ですが、38です」
「1時間で38か……結構熟練度上げって簡単なの?」
あの程度で40近く上がるんなら結構簡単にあげれるってことだよな? 最前線プレイヤーの熟練度ってどんなもんなんだろ?
「まぁ、またあげればいい話だろ。ていうかさっさと始めよっと」
「始まりの街ファースティックに行きますか?」
「おう、頼むわ」
さあ、開始1時間ちょっと、ようやくゲームスタートだ!