ハッピーエンド (大和ハッピーエンド)
午後の暖かい陽射しが君を照らす。洗濯物を2人で取り入れた後、干していた布団にそのまま寝転んで君は眠ってしまった。俺も隣で寝転んだまま君の眠る横顔を眺めていた。子供のように口が動き口元がほころぶ。寒そうに身動ぎするのでブランケットを取りに行こうと起き上がり縁側からリビングに戻った。
寝室に入るとすぐに目に入るのは君と出かけたたくさんの思い出の写真。どの写真の場所も全て思い出せる君との思い出を全て思い出せる。色んな事があって君を失いかけたりもしたけど今は2人でここにいる。この庭付きの一軒家に2人で。俺は出張が多いから君と相談して2人の実家の近くに家を買った。
クローゼットからブランケットを出して縁側に戻ると先程と違って君は向きを変えていた。そのまま陽射しに溶けて消えてしまう気がしてブランケットをそっと肩までかけて眠る君に言う。
「愛してる。お願いだからずっと健康で俺の横で長生きしてくれ。」
隣に寝転び祈るように君の背中に言う。一緒にずっと一緒に歳を重ねていきたいんだ君と。
「ふふっ私も愛してる。ずっと一緒に居ようね。おじいちゃんおばあちゃんになっても2人一緒に。」
君が言う。照れているのか振り返らずにそのままで言う。そんな君が心から愛おしくて後ろから抱きしめるとそっと俺の腕を掴んで抱きしめてくれる。
「急にどうしたの?珍しいね。」
腕を離して俺の方に向き直り聞く。
「言いたくなったんだ。お前が…傍に居るのが嬉しくて幸せなんだよ。だからお前に伝えておきたかった。お前のおかげで俺は幸せなんだよ。」
俺の話を聞き終えた君は慌てて俺の胸に顔を押し付けて自分の顔を隠す。確かに俺はこんな事を君には告げなかった。だけど言わないと分からないと君が言ったから、それに君の照れる姿が好きだから。
「ずるいわ。そんな事言うの。」
「ははは。明日はどこに行くんだ?決めたのか?」
「うん、久しぶりにおにぎりを持って釣りに行かない?」
「じゃあ今日は早く寝ないとな。」
「うん。それでその後、水族館に行ってあの変なレストランでご飯を食べて帰るの。」
「ああ、マンボウカレーだろ。」
「うん覚えてたね!」
「初デートを忘れるわけがないだろう。」
「それもそうね。ああー楽しみ。あそこの水族館は行けてなかったからね。」
「他の場所のはたくさん行ったのにな。」
「いつもありがとう連れてってくれて。」
「逆に仕事に付き合わせていつも申し訳ないな。」
「なんでよ!好きだから大丈夫。」
「俺が?」
「ぶふっ水族館が!」
わざと悲しい顔をして君を見ると照れながら俺にもブランケットをかけてくれて、
「もうちゃんと好き。」
と口付けてくれた。俺は眩暈がしそうな程、幸せを感じていた。
「明日、お弁当に何入れる?」
俺が黙って君を見ているのが恥ずかしいのか君が話を変えようと俺に聞く。
「じゃあ卵焼き。お前のが1番上手いから。」
「ふふっ分かった。」
「さあそろそろ中に入ろう冷えるぞ。」
「うんそうね。」
そう言って立ち上がり布団をたたみ始めた。10月の陽射しはもう君を照らしていなかった。