赤い鳥と青い鳥
ある所に綺麗な森がありました。その森に人間はおらずたくさんの動物が住んでいて皆、仲良く暮らしていました。
ある日、青い鳥が1羽、空を飛んでいると眼下の草原に1羽、赤い鳥が切り株に座っているのが見えました。
「おーいそこで何してるの?」
青い鳥は下に降りて同じように切り株に座りました。赤い鳥は少し驚いて言いました。
「……あのね飛べなくなっちゃったの。」
「えっ鳥なのに?なんで?」
「……わかんない。急に飛べなくなっちゃった。だから家族が戻って来るのを待ってるの。ご飯を取ってきてくれるってここで待っててって。」
「そうなんだ。それまで一緒にいようか?」
「えっいいの?じゃあお願いしようかな。」
「うん。」
ですが待てども待てども赤い鳥の家族は現れません。赤い鳥は徐々に不安そうな表情になりました。
「大丈夫だよ。ちょっと迷ってるのかも。もうちょっと待とうよ。」
青い鳥は赤い鳥を励まします。でも青い鳥はこの子は捨てられたのだと考えていました。飛べない鳥はただの足でまといだとグループに置いていかれているのを見た事があったのです。
どうにかして赤い鳥を元気にしたい青い鳥は昔、お母さんから聞いたお話をする事にしました。
「昔、お母さんから聞いたんだ。ほらあそこに険しい崖があるでしょ?あそこの上には綺麗な花が咲いててその花にお願いをすると叶うっていう伝説があるんだ。」
「えっ願いが叶う。」
赤い鳥は真剣考え込み始めました。
「うん、まあおとぎ話だから。それにあの崖険しいし高いから僕らみたいな小鳥には無理だしね。」
「い、行きたい!私は行きたい!だって飛べるようになったら家族を追いかけられる!」
「ああ、うーん。そうだけど。」
「よし行ってみよう。」
そうして赤い鳥は崖の方へ歩き始めた。青い鳥はなんだか心配になって赤い鳥を追いかけました。
「僕も行くよ。」
「えっいいの?」
「うん、君に付き合って歩くよ。」
「うわぁいありがとう。」
崖までの道は長く険しいものでした。ある時は川を越えてある時は谷を越えて、ご飯を1人ではろくに取れない赤い鳥だったので青い鳥がいつも食べ物を取ってきてくれました。
「ごめんね、私何も出来なくて。」
赤い鳥は悲しそうに言います。青い鳥はまた励ましたくてお話をします。
「あ、あの昔お母さんが言ってた!飛べない代わりに足が早くなるって!君もそうなるかも!」
青い鳥は大きな声で励まします。
「ふっ、ふふあはは。ありがとう。」
青い鳥は赤い鳥が笑うと心が暖かくなるのを感じました。
「じゃあ行こうか、崖はもうすぐそこだ。」
「うん!」
そして歩き始めるとなんだか怪しいリスのおじさんが現れました。
「ほほほ、これはこれは珍しい場所で…もしかしてあの崖に?」
「うん!」
赤い鳥は近付きこたえます。青い鳥は少し怖いと思いながら見ていました。
「そうかい、じゃあ右の道が近道だよ。右の道だ。」
何故かニヤニヤしながら言います。赤い鳥は頷き喜んで言いました。
「ありがとうございます。おじさん!行こ!」
「あ、ああ。」
赤い鳥はずんずん進みます。青い鳥は恐る恐る進み始めます。崖は岩ばかり筈なのに何故か道は木が生い茂り暗くなっていくではありませんか。怖がる青い鳥の姿を心配になった赤い鳥が言います。
「ねえくちばしで私の羽を掴んで!目をつぶっていいよ!」
「えっいいの?」
「うん!」
赤い鳥は元気よく羽を広げ青い鳥に差し出します。青い鳥がくちばしで掴んだ事を確認してまた元気よく歩き始めました。
「道が変わったよ!もう大丈夫かも!」
という赤い鳥の言葉に恐る恐る目を開くと確かに先程とは違い太陽の当たる場所に立っていました。そして目の前にいきなり虎が現れました。
「おやおや鳥なんて珍しい。もしかしてこの上に行くのかい?」
「うん、そうだよ!」
「何を願うんだい?」
「飛べるようにって!」
「おや君は飛べないのかい?」
「うん。」
「そうかい、だったら私が食ってやろう!」
虎がいきなり赤い鳥に体当たりをしようと突進してきました。
「危ない!」
青い鳥は赤い鳥を突き飛ばし虎の体当たりを受けます。虎は鳥達の後ろが険しい崖だという事を忘れていてそのまま崖の下へ落ちていきました。
青い鳥は地面に倒れピクリとも動きません。
「だ、大丈夫?ね、ねえねえ!」
赤い鳥がくちばしで優しく突くと青い鳥が苦しそうに言います。
「僕はもう上には行けない。でももうすぐだよ。だから行って。そして君の願いを叶えて。」
赤い鳥は青い鳥を背負います。
「ダメだよ。置いて行って。」
「絶対にいや。連れていく何がなんでも。」
赤い鳥は青い鳥に声をかけ続けましたが、初めは返ってきていた言葉も次第に返ってこなくなりました。
「着いた。ハア…ハア。あれが願いを叶える花。」
花はすぐに見つかりました。1本しか咲いていないからです。青い鳥を花の傍に連れて行き願いを言います。
「お願いです。青い鳥を助けてください!」
その願い叶えてしんぜよう
どこからか優しい声がして花と青い鳥が光り始めます。光に包まれた青い鳥はすぐに目を覚ましました。
「良かった!目が覚めたんだね!本当に良かった!」
赤い鳥が青い鳥にスリスリと体を擦りつけます。青い鳥は照れながら言います。
「ど、どうしたの?僕寝てた?」
そこで青い鳥は全てを思い出し自分のいる場所が崖の上だと気付きます。花はどこにもありません。
「も、もしかしてお願いを僕に使ったの?」
「もちろん!良かった!さあ帰ろう!」
「ねえどうして飛べるようにって願わなかったの!」
「だってあなたと飛びたいんだもん!あなたが寝たままだったら意味無いよ!ねっ!」
青い鳥はまた心が暖かくなるのでした。
「あーお父さんお母さん!」
元の切り株までの戻ると赤い鳥が2羽心配そうにウロウロしていて元気よく赤い鳥がその2羽の方へ走ります。
「ごめんなさい帰るのが遅くなって。でもとっても心配したわよ!」
「ごめんなさい。願いが叶う花を探しに行ってたの。」
「そうかい、すまなかったね。途中でものすごい嵐に巻き込まれてね。おやあの子は?」
「あ!おーい!あのね花を一緒に探してくれたの!」
赤い鳥はそれだけ言い、お母さんにスリスリと体を擦りつけます。お母さんも嬉しそうに擦り付けます。
「そうかい、ありがとう。君はどうして独りなのかな?」
「兄弟達の中で1番飛べるようになるのが遅くて置いて行かれました。」
「えっ!そうなのかい!なら一緒においで独りは寂しいよ。」
「はい……ありがとうございます。」
「やった!じゃあ飛べるようになるまでずっと一緒にいてね!」
「うん、いいよ!」
「だからあなたは怪我をしてるだけですぐに飛べるようになるからって言ってるでしょ!」
お母さんが笑いながら言います。
「えー!」
赤い鳥と青い鳥は笑い合いました。たくさんたくさん笑いました。
そうして皆仲良く暮らしましたとさ、おしまいおしまい。
この話を宮と蒼真に捧ぐ。
田上翔
田上加奈
特別の呪いの派生作品です。




