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田楽狭間

「・・・・はぁ~」


政宗は今暗い森の中を一人歩きながらため息をついていた。なぜ政宗が一人こんな森の中を歩いているかというと、ことは数時間前、北川基地で政宗は航空機の上空だけの情報だけでは足りないと判断し、副官の幸江以下、小隊規模の偵察隊を編成し、基地を出て森の中へと歩いていたのだが、空が薄暗いうえになぜか霧が出てしまい。気が付けば政宗は小隊から逸れ、こうして森の中を当てもなく歩き続けていたのだ


「はぁ・・・・・この正宗一生の不覚だな・・・まさか部隊とはぐれるなんて・・・・・・いや、ガダルカナルのあの惨劇に比べれままだましなのかな?」


そう呟きながら政宗は今もっている自分の荷物を確認する


「えっっと・・・・今持っているのは、四式半自動小銃とその弾薬に銃剣。アメリカの友人からもらったガバメント。それに・・・・この刀か・・・・」


と、政宗は自分の腰に下げている軍刀を見る。


「確かこの刀。実家から代々伝わる刀だあったけな・・・・・」


自分の刀を見てそう言う。政宗の差してある刀は無銘ではあるが先祖代々から続く刀で出兵前に武士の家系であった祖母から渡されたものであった。


「まあ、今は刀じゃなくて・・・・・あ、そうだ。そう言えば無線持っていたっけな」


政宗は無線を持っていたことを思い出し鞄から四式小型無線機を取り出す。この無線機は大戦初期のフィリピン戦でアメリカから鹵獲したSCR-536小型無線機を研究し生産した最新式の無線機である。政宗はアンテナを伸ばして幸江たちに連絡しようとするが・・・・・


「・・・・・・だめだ。雑音しか出ない・・・・磁場が強いのかこの森は」


詰んだ・・・・・と政宗はがっくりと項垂れるが


「・・・・まあいい。とにかく山を下りよう。村とか見つけられればいいんだけどな・・・・」


ガダルカナルやマレーの激戦を潜り抜けてきた政宗にとってはなんてこともないらしい。そうして政宗は村を探すべく山を下り始めるのであった。そして政宗は空を見上げ


「これは・・・・・・ひと雨降りそうだな」


と、ポツリとつぶやくのであった・・・・・・・




一方、山下たちは


「どう?大佐と連絡が取れた?」


「だめです!無線で呼びかけても応答がありません!」


「周りを捜索した兵たちからは?」


「はっ!周囲の村に訊いてみましたが、それらしき人は見ていないとのことです・・・・」


「そうか・・・・」


山を下り近くにあった村に着いた幸江以下の小隊は行方不明に指揮官の政宗を捜索していて無線やら兵を出していたが、いまだに見つかっていなかった


「政宗・・・・・・大丈夫だよな?」


上官であり幼馴染である政宗の身を案じていると


「少佐殿」


と一人の歩兵がやってくる


「なんだ?大佐が見つかったのか?」


「いえ、残念ながら・・・・・ですが村の人に訊いたのですが・・・・」


「なんだ?何を聞いたのだ?」


「はぁ・・・・・それが今自分たちのいるのは昭和の時代じゃないとのことです」


「それは見てわかる。で、何が言いたい?はっきり言いなさい」


「はっ!村の村長が言うには、今我々のいる時代は・・・・その永禄3年だそうです」


「はっ!?永禄三年と言ったら戦国時代、400年前の時代じゃないの!?」


幸江は報告した兵の言葉に驚く。自分たちがタイムスリップしたことはわかっていたのだが、まさか400年ぐらい前の時代に飛ばされたなんて思ってもみなかったのだろう。すると報告した歩兵は


「はっ!自分でも信じられませんが、先ほど基地の偵察機が言っていた侍の集団ということも考えますと納得ができます。それに永禄3年と言えばあの桶狭間の戦いが起きた年です」


「あなた、歴史に詳しいのか?」


「はい。自分は学徒兵でして・・・・その戦争が無ければ歴史学者になるつもりでした」


「うむ・・・・・・・」


歩兵言葉に幸江は考え込むが


「学徒兵の言うことが本当なら、最初の任務である我々の現状はわかった・・・・・後は大佐だな・・・・」


「少佐殿。もう一度、捜索隊を出しますか?」


「・・・・あと一時間だ。一時間捜索して見つからなければいったん北川基地に戻る」


「え!?ですが!」


「もうすぐ日が暮れる。闇雲にしかも暗い中探せば、大佐同様、道に迷い最悪の場合、野盗に襲われる可能性がある。それにこの人数での捜索だと行動範囲が限られる。一時間以内に見つからなければ、いったん基地に戻り捜索隊を編成し、更に航空隊にも協力してもらって大佐を探そう」


「・・・・・わかりました。では一時間以内に全力で探し大佐殿を見つけます!」


学徒兵は敬礼し、その場を去る。すると空からぽつぽつと雨が降り始めるのであった


「降って来たわね・・・・・・正宗。無事でいなさいよ」


心配した表情で幸江はそう言うのであった






一方、政宗は


「くそっ。雨が降って来たな・・・・それにしても一向に森から抜けれない」


雨が降る中、政宗は森の中を歩いていた。一体どれほど歩いたのかはわからないが見渡す限り、木や林ばかりで一向に出口が見えない


「はぁ・・・・幸江たち心配しているのかな?無線が使えない今、こんな時に信号弾さえあれば位置を知らしせるのにな・・・」


そう呟くと腹の虫が鳴る


「はぁ・・・・腹も減ったな・・・・それに眠気も襲ってくる。そう言えば最近ろくな飯も食べていないうえになかなか寝る機会なんてなかったしな」


と、そうぼやくと


「・・・・・・ん?」


政宗は何かに気付き立ち止まり耳を澄ませると


「・・・・・どこからか声が聞こえるな・・・・数は…多数だな。もしかして…村があるのか、あるいは・・・さっき偵察機が言っていた侍同士が合戦でもしているのか?とにかく行ってみるか」


と、そう言い政宗は四式小銃の安全装置を外し警戒しながら声のする方へ向かうのだった。そして声のする場所へと着いた時、政宗の目に映ったものは


「これは・・・・・合戦だ‥…戦国時代の合戦だな」


自分の目に移ったのは銃や大砲でドンパチやる近代戦ではなく、芝居や映画で見た戦国時代の合戦そのものであった。


「偵察機が言っていたことは本当だったのか・・・・」


そう呟くと合戦している侍たちの旗が見える


「あれは・・・・木瓜紋と足利二つ引両の旗。たしかあの旗印は・・・・・」


そう呟いた瞬間。


「東海一の弓取り、今川殿、討ち取ったりーーーーーーーーー!!!!」


と、声が聞こえた。するとその声を聞いた足軽らしき兵たちは顔を青ざめて逃げ出すのが見えた。するとその場に黒い長髪の少女がやってきて、兵士に労いの言葉をかけているのが見えた


「女?この時代、女武者がいたのか?」


そう不思議に思っているとその少女の傍の茂みからあの逃げた兵士たちの仲間なのか三人の足軽が槍や刀をもって突如、その少女に襲い掛かるのが見えた


「いかん!」


政宗はとっさに四式小銃を構えてその三人組に発砲する。そして弾丸はその三人を撃ち抜き倒れる。少女が無事なのを確認した政宗だが


「(やばい・・・・・急に眠気が・・・・・)」


と、そう思うとだんだん視界は暗くなり意識が遠のいていくのであった。







政宗が付く数分前、政宗が向かっている声がする方向には・・・・・


「申し上げます」


「許す!」


「今川勢は現在、田楽狭間にて小休止!全軍を分散させて昼弁当を使っております!」


「デアルカ。・・・・・大義」


「はっ!」


偵察兵らしき足軽が去って行くと二人の女性がいた。一人は赤い服を着た赤髪の女性でもう一人は緑色の服を着ていて髪は薄茶色の女性が立ち。そしてその先頭には黒いロングの髪をした少女が二人の前にいた。


「勝者の余裕・・・・・という事ですかな」


「勝者か。あながち間違ってもおらんな」


「我が方は二千弱。対する義元公は一万五千程。軍神摩利支天といえど、この差を覆すのは至難の業でしょう」


「常識的に考えれば、あの大軍にこれだけの少数で奇襲を掛けるのは無謀を通り越して自殺行為ですからな」


「常識などと、つまらんものに縛られる者に大業など成しえんぞ」


「ですが殿・・・・・」


「おけぃ。今やる事は問答ではなく合戦である。説教は義元を討ち取った後に聞いてやる。持ち場につけ」


「「はっ!」」


「さて・・・・これより織田久遠信長。一世一代の大博打。勝ち切ってみせようじゃないか」


黒髪の少女がそう言った瞬間大きな雷鳴が鳴るのであった。そしてその少女がいるところから離れた場所、二人の少女が大勢いる軍勢の陣の近くに潜んでいた。


「・・・・いた」


「え?どこどこ?」


「ほら、あそこ。あの一際大きな木の根元…雨を避けてるんでしょうけど…胸白の鎧に金の八龍を打ちたる五枚兜…それに赤字の綿の陣羽織を枝に引っ掛けてある…当たりね…」


赤いリボンをした少女がそう言いその視線の先を見ると確かに大きな木の下で雨を凌いでいるのか、平安貴族みたいな女性が畳床机に座っていて扇子で煽っているのが見えた


「うへぇ…戦場なのに鎧脱いでんのかよ…まぁこうもムシムシ暑いんじゃあ、気持ちはわかるけどさぁ…」


白髪の少女が呆れた表情でそう言うと赤いリボンをした少女が


「私たちのことを尾張の弱兵だと思って侮ってるのでしょうね。まぁでも全軍緩みきってる今が好機かも」


「行くのか…?壬月様か、麦穂様に連絡したほうがよくねぇ?」


そう白髪の少女がそう言うが彼女は首を横に振り


「後続を待ってたら、打ち取る時期も逃してしまうわ。それに武功は独占するものよ。呼子を鳴らして一気に義元公を討つわよ」


「はっ新介も言うねぇ。だけど…そういうのも嫌いじゃないよ。よぅし、新介の案に乗った!」


「だから静かにしなさいっての…!二人ならどうとでもなるわ…行くわよ…小平太」


「応よ!」


「・・・・・・・・・・・・・・・今よ!」


そう言った瞬間二人は槍と刀を手に一斉に飛び出し


「織田上総介久遠信長、馬廻り組組長、毛利新介参候!今川治部大輔とお見受け致す!」


「今川殿が御首級、この服部小平太が頂戴仕るー!」


「お覚悟!」


そう言い二人は今川義元へ向かおうとしたが


「と、殿!?」


「殿を守れ!!」


そこにいた数人の足軽たちが槍をもって義元を守る


「ちょっ!小平太!足軽たちを何とかしなさいよ!!」


「わかっているってば!けどキリがないんだよ!」


そう言いながら二人は敵兵と倒していると背後から無数の兵がやって来た


「織田上総之助信長が家中、柴田権六勝家!参候!」


「壬月様!」


「周りの雑魚は柴田衆に任せよ!新介!小平太!抜かるでないぞ!」


「「はは!」」


柴田軍が敵兵を抑えている間二人のうち小平太と呼ばれた白髪の少女が槍を義元に向け


「今川殿、お覚悟!!」


そう言い彼女の槍は義元の喉を貫き、義元は血を吐いて倒れる。すると先ほどの黒髪の女性がやってきて


「新介、小平太、大義なり。名乗れぃ!」


「はいっ!、・・・・・織田上総介久遠信長馬廻り組組長、毛利新介参候!」


「同じく服部小平太!」


「東海一の弓取り、今川殿、討ち取ったりーーーーーーーーー!!!!」


毛利新介、服部小平太ら2人が今川義元の首を上げたことにより今川軍の兵士が更に混乱する。


「な、なんだと殿が討ち死に!?」


「ひっ!!も、もうい、今川はもうダメだ!!」


「命あっての物種だ!おれはにげるぞ!」


「殿が討ち死に・・・・・なればわしも死んで殿の後を追おう!!」


と、自軍の大将が敵に討ち取られたと聞いて逃げるもの、あるいは落胆し、膝をつく者やなかには自決する者など様々である。


「あぁー!こらー!逃げるなですよー!取って返して戦うですよ!」


「綾那!残念だけど今川殿が討ち取られた以上ここはもうもたない!逃げましょう!」


いつの間にか松平の武将である本多忠勝と榊原小平太が本隊に戻ってきたのだが、時すでに遅し、義元が討たれた今、この状況覆す術を最早誰も持っていなかった。


「やですよ!綾那はまだ戦えるです!」


「義元公が討たれた以上、最早戦う理由は失われたわ!だから戦いはもう終わりよ!それにこれで私達は今川から独立する未来が開けるの!今は葵様と合流しましょう!」


「むぅ…無念なのですよ…わかってです…」


そう言い二人も撤退するのであった。


「今こそ好機なり!織田の勇士達よ!これより敵を追討・・・・


黒髪の少女が追撃の命令を下そうとした瞬間、彼女の近くにあった茂みから・・・・・


「織田殿覚悟ぉー!!」


「今川様の仇じゃー!!」


「御首級頂戴する!!」


突如現れた今川の兵三人が槍や刀を手に黒髪の少女に襲い掛かる


「なっ!?・・・・ぐっ!?くそぅ…ここまでか…」


先ほど今川義元を討った知らせを聞いてで気が緩んだのであろう。完全に不意を突かれた少女は跪き、死を覚悟する。


「殿ぉーーー!」


勝家の叫びも虚しく、槍の先が少女の首に迫った時・・・・・・


ダアァーン!!ダアァーン!!ダダアァーン!!!


「っ!?」


突如どこからか銃声が鳴り響くと少女を襲った足軽三人は眉間やのどから血を流し目を見開いたまま倒れピクリとも動かなくなる。


「これは・・・・・」


「殿!ご無事でしたか!!」


「壬月か・・・・我なら大丈夫だ・・・・・しかし先ほどの音は・・・・」


「はい。鉄砲の音によく似た音でしたが・・・・」


とそう言った時二人の傍からガサッという音がする


「誰だ!」


と黒髪の少女がそう言い音のする方へ顔を向けると、そこには自分と同じ年だろうか若い少年が見たことのない枯草色の服と同じ色の丸い兜を着て、そしてその手には変わった鉄砲を構えて息を切らしながら立っていた。すると少年はばたりと倒れるのだった


「お、おい。大丈夫か!しっかりしろ」


少女は彼の体をゆすりそう言うが彼はピクリとも動かない


「この男は‥‥一体何者だ?歳は我に近いように言えるが・・・・それに奴の服装と言い持っている鉄砲も変わっている」


「久遠様!崩れたとは言え、彼我の戦力差は未だ変わらず!今すぐに後退すべきかと!」


「デアルカ・・・・おい猿!」


「は、はひっ!?」


黒髪の少女がサルと呼ばれたオレンジ色の髪をした少女に声をかけると少女が驚く


「そやつを持って帰れ、あとで検分する」


「あ、あの人をですか!?」


「そうだ。やっておけ」


「は、はい~!!」


そう言い少女は少年を背負っていく


「権六!五郎左!疾く退くぞ!」


「はっ!皆の者、追い頸は諦めい!今はすぐに清州に戻る!」


「全軍退却!速やかに清州に戻ります!急いで!」


そう言いその場にいた物たちは直ちに撤収作業へと移るのであった。そして残された少女は


「義元は討った。当面の危機は去ったが・・・・突如現れた奇妙な少年・・・・あやつは何かの兆しなのか、乱れ乱れたこの世の地獄で、何かが始まろうとしている。そんな予感がする」


そう言い彼女もまた撤収するのであった


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