タイムスリップ
謎の爆風に巻き込まれた入れたちは今、無線の繋がった飛行基地である北川基地に向かっていた。北川基地は爆撃機を中心とする基地であり、俺の部隊と同様、陸軍、海軍が共同として使用する珍しい基地であり、これはあまり知られていないのだが、北川基地は静岡の相良油田、同様、国内で油田が取れる場所であり、また産出量も相良油田より多くまた、相良油田同様、精製せずに自動車が動くほどの油田がその基地にあった。
「大佐。まもなく飛行場近くの街に到着するのですがこの先は・・・・・」
幸江がそう言う、そう、いま彼女たちの目の前にあるのは町ではなく森であった。
「飛行場近くの街が消えている・・・・・本当にどうなってるんだ?」
政宗がそう言うと幸江が
「そう言えば聞いたことがあります。昔、北川飛行場近辺の街は400年くらい前は大きな森で当時は「迷いの森」または「物の怪の森」って呼ばれてたみたいなんです」
「物の怪の森?」
「はい。なんでもそこに入った子供や人が急に行方不明になったり、森の中から不気味な声が響き渡ったりとそう言う言い伝えがあると昔知り合いのおじいさんが話してくれたのを聞きました」
「物の怪の森ね・・・・・それにしてもそんな昔の森がなぜこんなところに・・・」
そう言いながら部隊は進む。しかし、目の前には森に大木たちが立ちはだかる。地図を見ても飛行場がある場所はこの森の中だ。はてさてどうすればいいか?
「戦車で道を作りますか?おい、戦車兵。これ道とかできるか?」
「おう、戦車に通れないものはないぜ。どうします大尉。突っ込んで道作りましょうか?」
「大佐の指示があるまで待て」
兵たちがそう話をしている。すると幸江が無線で何やら話をしていた。
「ああ・・・・わかったわ。大佐。また先ほど基地に報告したところ、この森の左奥に戦車が通れるぐらいの隠し道があるみたいです」
「わかった。とりあえずそこに行ってみるか」
そう言い部隊は連絡の入ったところに向かう。すると確かにそこの場所だけ茂みになっている。
「ここだな・・・」
「ここですね」
俺と幸江が話していると茂みから兵士たちが出てきた。おそらく見張りの兵だろう。俺は車から降りてその見張りの兵に敬礼する
「大日本帝国陸軍大佐の橘政宗だ」
と、そ言うと見張りの兵は返礼をし
「海軍陸戦隊の金原少尉です。」
「第三憲兵隊の織斑少尉です。上から話は聞いています。基地からはここから直進3キロです。私は引き続きここを見張りますので」
「ご苦労、引き続き頼む」
そう言い俺は再びトラックに乗り、基地に向かう。そして森を抜けるとそこには飛行場基地があり滑走路には爆撃機やら戦闘機が置いてあり、その周辺には高射砲が設置されていた。すると、基地の向こうから複数の軍人がやってくる。先頭にいる女性は階級を見るに中佐だな・・・・そう思う中、俺の前に立った女性は敬礼をし
「海軍中佐、源田静。この飛行場基地の指令をしています橘大佐。そしてこちらが私の副官の」
「はっ!陸軍航空隊の今村友恵少尉です!」
「橘支隊及び第34連隊連隊長の橘政宗大佐だ」
「同じく副官の山下幸江少佐です」
と、互いに敬礼をし挨拶すると政宗はふっと笑い
「それにしても陸海軍共同の基地とは珍しいですな・・・・・」
「今の現状、陸軍だ海軍だとつまらぬ言い争いをしている場合じゃないですから、それにそれを言うのであればあなたの部隊も同じでしょう大佐殿?」
「はは、確かにな」
と、二人は笑いながらそう言うと政宗は
「それで、源田中佐もやはり?」
「ああ、我が本土防空隊は敵爆撃機に備えていたのだがな、突如周辺が真っ白に光だし、気が付けばこの基地周辺が森に囲まれ、挙句の果てには基地周辺にあったはずの街が消えていた。そこで今、陸軍の百式司偵で偵察の出させている。空の上なら何かわかるだろう」
「そうですか・・・・ところで中佐。今この基地にいる航空兵力はどのくらいだ?」
「陸軍の四式戦と一式戦。海軍の零戦に紫電などの戦闘機26機。爆撃機は軽爆撃機なら海軍の九九艦爆や彗星合わせて八機。そして大型爆撃機は海軍一式陸攻、陸軍四式重爆合わせて13機。そしてジャワで鹵獲したB17爆撃機1機とつい先日試験として贈られた海軍の連山一機。そして海軍の彩雲。陸軍の百式司偵などの偵察機などの偵察機4機と、空挺部隊を運ぶための輸送機10機であります」
「空挺部隊?」
「はっ!内地で待機させている部隊です」
「そうか・・・で、その空挺部隊はどこにいる?」
源田中佐がそう言うと、
「中佐。先ほど偵察に向かった百式司偵から連絡が・・・・・て、橘?」
「おー!奥村!久しぶりだな!!」
中佐のもとにやって来た陸軍の軍服を着た彼女に政宗が嬉しそうに言うと山下が
「大佐。お知り合いで?」
「ああ、同じ士官学校で一緒だった奥村雅子だよ・・・・・ん?奥村。その襟章・・・・・お前落下傘部隊か!?」
「ええ、そうよ。陸軍空挺隊の隊長を務めているわ。ま、今の戦況、空挺部隊の出番はないけどね」
「コホン!中尉!昔の同僚に会って喜ぶのはいいが、で、偵察機はなんと?」
「ああ、すみません中佐!?」
奥村は慌てて体勢を立て直し敬礼すると
「先ほどの偵察機の話によりますと『基地周辺に街の姿はなく変わりに戦国時代にありそうな城や村、そして野原の方では侍の集団が合戦していた』とのことです!」
「「はぁ?」」
俺と源田中佐は首をかしげる。町が無いというのも驚いたが何より驚いたのは侍の集団?
「侍の集団?時代劇の撮影か?」
「いや、こんな時期に撮影なんてできる余裕がないだろう敵の艦載機の的になる・・・・・・」
「奥村中尉。その報告間違いはないのか?」
「はい。偵察機の無線連絡では撮影車もなく。ガチもんの戦をしていたとのことです」
その言葉を聞いてみんあは考え込んでしまう。あの閃光から妙な事が起き続けている。すると一人の士官が
「もしかしてタイムスリップなんでは?」
「タイムスリップ?」
「はい。前に読んだ本で時空を飛び越える現象のことをタイムスリップというんです大佐殿。先ほどの偵察機が見た侍の集団というともしかして我々は戦国時代に迷い込んだのでは・・・・」
「おい、おいそんな馬鹿な話があるわけないだろ?」
「でも、基地周辺の町や俺たちが集合していた港が消えたんだぞ!?」
「きっとアメ公が爆撃して消えたんだろ?」
「そんなわけあるか!!それだったら俺たちや基地の連中だって木っ端みじんになっているぞ!?」
「静まれっ!!」
士官たちが騒ぐ中、山下がそう怒鳴ると兵たちが静まると、さっきまで黙っていた正宗が政宗が
「・・・・・・考えこんで議論しても仕方がない。ここは偵察を出そう。今の状況、空の偵察だけではわからないことも多い」
「なるほど・・・・で、誰を行かす?」
「小隊規模の人数でいく。俺も行こう」
「え!?大佐自らですか!?指揮官自ら行くのは危ないんじゃ・・・・・」
「指揮官だからこそだよ。今の現状わからない今自分の目で見なくてはいけないんだよ」
「なるほどな・・・・だが大佐・・・・・」
「大丈夫だよ源田中佐。別に戦場のど真ん中を歩くわけじゃないしな。それに俺たちも丸腰で行くわけじゃない。万が一の場合は小銃で何とか凌ぐ」
「・・・・・・わかった。だが無理はしないでほしい。何かあったら無線ですぐに航空隊を呼んでくれいつでも駆けつける」
「了解した」
と、こうして俺たち第34連隊は偵察調査をすることになり、連隊の中から俺や山下も含め、小隊規模の人数を編成し偵察に出るのであったのだが・・・・・・・・
偵察に出て数時間後
「あれ?大佐殿はどこに行った!?」
「そう言えば山に入ってから姿を見ていませんね!?」
「おい、もしかして・・・・・・・」
『大佐殿まさかはぐれたんじゃ!!!???』
山の中
「・・・・・・・小隊と逸れちゃったーーーー!!!?」
誰もいない山の中、政宗は一人で叫んでいた。この日、5月19日のことであった・・・・・・・