7 新人狩り
依頼を受けたレイアは、早速森に来ていた。日はまだ高いが、若干西へ傾きかけている。急いで狩った方がいいなと、足早に歩く。その背後を、三体のアークナイトがついてくる。コツをつかみ始めたおかげで、増えたのだ。少しだけ、十体同時召喚までの道のりが、見えてきた気がする。
戦力が増えるということは、非常にいいことだ。危険に晒される確率がその分減るし、敵を倒す速度も上がる。召喚できる数が増えたので、消費する魔力量も少し増えたが、そこは気にしないでおく。
「確か、この辺がコボルトが頻出する場所だって聞いたけど……」
森に入って一時間近く歩いたレイアは、ルミアからの情報で知った場所に来て、足を止める。一見特に変わりはないが、ルミア曰く、今レイアがいる場所はコボルトが良く出る場所らしい。何しろ、コボルトの住処が近くにあるからだそうだ。
本当なのかどうかを確認するために、索敵魔術を発動させる。すると、確かに反応があった、数は五つだ。反応にあったのは大した数ではないが、遠吠えをされると仲間を呼ばれる。そうすると、一気に少なくとも十体以上のコボルトがやってくる。そうなると、多重召喚を二、三回繰り返してこちらも戦力を増やすしかない。
はっきり言って手間がかかってしまうが、そうなる前に動きを封じるなりして、そこを叩けばいい。そう考えると、アークナイトたちの出番はなさそうだ。精霊に頼り切る戦いはよくないので、今日は自分自身で依頼をこなすことにする。
反応がある場所に慎重に進んでいくと、そこにいたのは五体のコボルトだった。何かを食べているようで、そこに血のにおいが充満していた。思わず顔をしかめ、何を食べているのだろうとみてみると、野生の熊を食べていた。アークナイトほど大きくはないが、それでも見上げなければいけないくらい大きい。それを、レイアよりも小さいコボルトが狩ったのか、血の付いた武器を地面に置いて貪っている。
よくあれだけ大きな相手に立ち向かえるなと思いながら、気付いていないならこちらから先に仕掛けようと、杖を構える。すると、耳がピクリと動いたかと思うと、一体が振り返る。そして、ばっちり目と目が合う。
顔は犬で、非常に円らな瞳をしている。もしあれが、体も犬で口の周りに血を付けていなければ、可愛いと思っただろう。顔は可愛いが、人に近い体にこびりついている血で台無しだ。
数秒間お互いに見つめあうが、やがて目が合っていたコボルトが無言で、地面に放置している武器を手に取った。そこで他の四体も気付いたようで、食事を止めて立ち上がり、武器を取る。
『凍てつく大地。氷の姫は、あなたを決して放しはしない』
【魔術:氷結姫の抱擁】
動き出す前に詠唱を唱え、動きを封じる。
『輝く雷光。地を叩く槌。圧壊し、轟け』
【魔術:雷槌】
コボルトの頭上に魔術法陣が現れ、雷が落ちる。氷を粉砕されながらも、雷がしっかりと通り、五体同時に絶命する。念のため、倒し切れていないということを想定して警戒するが、五体の体が灰となって消えていったので警戒を解く。
討伐系の依頼は、倒した魔物の魔石を回収して、それを証拠として提示するのだ。鑑定すれば、魔力の質でどんな魔物かが分かるからこそだ。実に便利だ。
「依頼で指示された討伐数は十二体だから、あと七体。この調子でいけば、すぐに終わるかな」
魔石を回収して、鞄の中から取り出した袋の中に放り込みながら言う。そうそう今みたいに、群れているところを見つけることはない。いくら群れて行動する種族とはいえ、それは狩りを行ったり哨戒している時に限ってだ。だけど、丁度狩りを行っているかもしれないので、その可能性を信じてコボルトを探す。
奴らは、決まって同じ時間帯に狩りを行う。それは、太陽が西に傾き始めた頃から、空が赤く夕日に染まるまでだ。それまでに獲物を狩ることが出来なかったら、その日は断食だ。丁度その時間帯に森に来ているので、狩りを始めているかもしれない。
ここで指定された数より多く遭遇出来れば、依頼達成の報酬と、魔石換金の報酬でたくさんお金が手に入る。たくさんお金が手に入れば、魔術書や可愛い服と、欲しいものが買えるようになる。そう思うと俄然やる気が出てくる。レイアはたくさん狩るぞと意気込んで、ずんずん進んでいく。
森の奥の方に進んでいくにつれて、索敵範囲内に魔物の反応が出始めてきた。それは二体だったり六体だったりと、数はバラバラだ。そしてそれは、何かを探すように動き回っている。コボルトたちが、狩りを始めていると考えてもいいだろう。
今日は少し運がいいと上機嫌になり、近くにある四つの反応の所に向かう。案の定それはコボルトで、【魔術:雷槍】で一体の頭を打ち抜き、残りの三体は【魔術:灰燼の剣】で首を斬り離した。
思っている以上にたくさんのコボルトが狩りを始めており、少し歩けばすぐに遭遇した。そしてそれらは、レイアの魔術によって瞬殺されていく。中には魔術を躱して攻撃を仕掛けてきたのもいたが、それはアークナイトのシールドバッシュで吹っ飛ばされた。王であるレイアに牙をむく存在には、一切容赦しない。味方だと心強いが、これがもし敵だったらと思うと、割と怖い。
次々と索敵にかかるコボルトを、レイアは次々と討伐して行く。少なくとも魔術を二回行使しているので、魔力が半分ほどまで減ってしまう。もっと頑張って、魔力の限界値を伸ばさなければと、改めて目標を定める。
それからまた少し歩き回り、最後に二体のコボルトを討伐する。
「今日はこれくらいでいいかな。結構たくさんいたなぁ」
本日討伐したコボルトの数は、約二十体ほど。そこに、ゴブリンやオークも追加される。大分日が傾いてきており、そろそろ戻らないと危ない。そう判断し、一度ぐっと伸びをしてから踵を返す。直後、一体のアークナイトが急に動き出し、左側に移動して盾をどっしりと構える。
すると、何かが炸裂したような音が響いた。結構大きな音で、思わず耳を塞いでしまう。何だと思って振り返ると、恐らく魔術が炸裂したのであろう。塔楯の向こう側から、煙が上がっている。害意や殺意のある存在は、全て打ち払えと指示を出しておかなかったら、どうなっていただろうか。
「いやー、まさか僕の魔術、【炎獅子の咆哮】を防ぐとはね。随分硬い精霊じゃないか」
追加の攻撃が無いので、何が起きたのかを確認するため、アークナイトを下がらせる。奥の方から、一人の緋色の派手なローブを着た男性の魔術師が歩いてきた。
【魔術:炎獅子の咆哮】。それは炎中級魔術に部類され、凄まじい威力を誇る魔術だ。特に何の防御も施していない人間が喰らえば、一瞬で焼け死ぬだろう。それも、体の一部が炭化するほどの高熱で。現に、魔術師が歩いてきている場所は、木の一部が消滅し、地面も焦げている。それを見たレイアは、格が違いすぎると体を震わせる。
ちらりとアークナイトの塔楯を見ると、魔術が当たったところが真っ黒に焦げて少し溶けている。一回防いだだけで、そこまでのダメージをアークナイトの防御に与えた。それに戦慄を覚える。
「おいおい、いきなり攻撃する必要ねぇだろ。それで死んだら、どうするんだよ」
今度は、背後から声が聞こえた。振り返ると、大柄の剣士が右の木の陰から出てきた。話し方からして、恐らく仲間だろう。
「大丈夫だよ。焼け死んでも、回復魔法で肉体自体は元に戻せるんだし。それで我慢しなよ」
「お前はそれで大丈夫だろうけどよぉ、俺は泣き喚く声を聞きたいんだよ。あと、犯している時の喘ぎ声もな」
どうやら、レイアの体目的のようだ。それも、異常な性癖がその場で暴露されている。
「相変わらず、趣味が悪いな。まあ、リーダーよりマシか」
「そうだな。あいつは、一方的にいたぶり続けて、死にそうになったら回復して、それでまたいたぶって逆らえないように恐怖を叩きこんでから、啼かせるからな。で、最終的には殺しちまうしよ」
どうやら、仲間はもう一人いるようだ。それも、この二人と引けを取らない程、酷い趣味をしているようだ。まだどこかに隠れているそのリーダーとやらを警戒し、索敵魔術を発動しようとする。
「随分な言い草だな。お前らだって、オレと同じようなもんだろ」
その前に、もう一人が背後から出てくる。そしてその声には、物凄く聞き覚えがあった。心臓がうるさいくらいに鳴る。恐る恐る振り返ると、そこには爽やかといった雰囲気の金髪の美青年、カイル・エバーガーデンが立っていた。
「やあ、レイアちゃん。さっきぶり」
「か、カイルさん……? どうしてここに……」
震える声で、質問をする。いや、既にどうしてここにいるかは分かっている。分かっているけれど、組合で見た時に感じたあの優しさが第一印象となっている為、信じたくないのだ。
「どうして、ね。薄々気付いているんでしょ? まあ、答えてあげるよ。……君の思っている通り、君を殺すためだよ。オレはね、俗にいう新人狩りなんだ」
新人狩り。その単語は、レイアはよく知っている。まだ冒険者になったばかりの頃、ルミアに新人狩りには気を付けろ、と口酸っぱく言われていたのだ。
新人狩りは、その名前の通り登録したばかりの、一部例外を除いて戦う力を持たない新人や駆け出しを殺し、持ち物を奪って行く卑劣な輩だ。男だったら速攻で殺し、若い女性だったら戦闘不能にした後、最初に強姦、もしくは輪姦してから殺す。
駆け出しなんて対していいものを持っているわけではないのに、そういうことが起こる。何故なら、それを行う冒険者は、新人たちが同じ人間に殺されると知り、その顔に失望と絶望と恐怖を張り付けて殺されていくのが、溜まらない快楽となるからだ。
レイアが目を付けられたのは、数少ない召喚術師であること。持っている杖が、そこそこ性能のいいものであること。そして、容姿だ。容姿のいい女性は、新人狩りに遭いやすい。年間で、六十人ほどの新人冒険者が、新人狩りで命を落としている。その七割が、女性だ。
カイルは、新人狩りを行う一人の冒険者だ。今まで結構な数を殺してきたが、証拠を一切残していないので、まだバレていない。何しろ、狙われた冒険者は、一人として生きて帰れないのだから。
彼は、主に女性を狙う。高身長に、整った容姿。そこに優しい口調で接して、自然な手つきで頭を撫でるか、少し祭上げれば、それだけで女性は嬉しくなるか、惚れる。そして、その相手に殺されると知った時、顔に絶望と恐怖を張り付ける。一度その味を知ってしまったカイルは、新人狩りという外道の道に嵌ってしまった。
「にしても、こんな女の子が召喚術師とはね。最初聞かされた時は嘘かと思ったけど、まさか本当とはね」
「俺には関係ねぇがな。ただ押し倒して、犯すことが出来ればそれでいい」
「お前はそればかりだな。確かに嫌がる女の子を犯すのは最高だ。けど、いたぶって逆らえないようにした後の方が、奴隷みたいで中々いいぞ」
レイアを捕まえた後のことを想像したのか、美顔を歪ませて舌なめずりをする。つい目を合わせてしまい、背筋がぞっと震える。
「俺がやると、加減間違えそうで嫌なんだよ。そこは、カイルに任せる。……おい、ハワード! くれぐれも、殺すんじゃねぇぞ!」
「分かってるよ、デイビッド。なら、雷魔術で動けなくして、捕まえてやるよ。お前は、騎士精霊を頼む」
「応とも!」
デイビッドと呼ばれた剣士は嬉しそうに笑みを浮かべると、腰の剣を鞘から抜く。カイルも同じように、長剣を引き抜く。ハワードと呼ばれた魔術師は、すでに詠唱に入っている。恐らく、中級だ。
【召喚術:シャドウナイト】
【召喚術:アークナイト】
三体だけでは不利だと判断し、シャドウナイトとアークナイトを三体ずつ召喚する。それに追加で、身の危険を感じていたため、更に一体ずつ召喚され、アークナイトが守るように正面に立つ。直後、ハワードの魔術が発動し、放たれる。しかしそれは、アークナイトの塔楯で防がれる。
それが合図となったのか、デイビッドとカイルが襲い掛かってくる。この二人を、シャドウナイトとアークナイトが対応する。しかし、流石はBランク冒険者。シャドウナイトと真っ向から打ち合っている。レイア自身はまだ出ていないが、騎士精霊やそのほかの精霊は中級ほどの魔物なら、相手に出来る。それに、騎士精霊同士で戦わせたりしていたので、実力だけで言えば結構高い。しかし、それでも上級までには届かない。今は、こちらの方が数が多いから、まだ有利な立ち位置にいるだけだ。
『業火に身を包む獅子。轟く砲声。憤怒のままに、吠えろ』
【魔術:炎獅子の咆哮】
また炎中級魔術が発動し、最初にそれを防いだアークナイトが倒されて送還される。
「くっ……」
【召喚術:アークナイト】
少し立ち直ったレイアは、すぐに新しいアークナイトを召喚する。ハワードが隙間を縫うように【魔術:雷槍】を放ってくるが、俺は守るように立つアークナイトの塔楯で防がれる。
「いやー、早いねぇ。一度に召喚出来る数は三体だけだけど、それを補う召喚速度だ」
ハワードは『穿て、雷精の槍』と切り詰めた詠唱文で放ったのだが、それをも上回る召喚速度に舌を巻く。カイルから聞いた情報で、まだ十四歳の少女と聞かされていたのだが、彼には才能の塊のように見えた。
「だからこそ、嫉妬というやつを感じるんだよねぇ。僕より弱い分際で、どうしてそこまで才能を持っているんだか」
ハワードがカイルと一緒に新人を狩る理由は、新人の癖に伸びが早く、自分をも上回る才能を持っていることに対し、嫉妬を抱いているからだ。彼が生まれ育った村では、ハワードが一番の天才と呼ばれていた。それこそ、今までに見ない程の。
常に特別扱いをされてきた。「神童」とも呼ばれた。魔術戦で、負けは一回もなかった。だからこそ、自分の才能を生かして、冒険者になって弱い人を守ろうとした。しかし、村から出てすぐに、現実を突きつけられてしまった。それは、自分が特別だったのは、あの小さな村の中だけだということ。
村の外には、自分より才能のある魔術師がたくさんいた。自分の方が早く冒険者になったのに、後からなった魔術師があっさり自分を追い抜き、上に行ってしまった。自分が特別だと信じてやまなかったハワードは、嫉妬の炎を燃やし続けた。
そんな時に、カイルと出会ってしまった。彼は新人狩りをしていた。彼について行けば、誰にもバレずに才能のある新人を殺せる。殺し続ければ、自分を追い抜く新人は出てこなくなる。
結果的にハワードは、外道の道に堕ちてしまった。今では、殺すことで快楽すら感じる、快楽殺人者にまでなっている。殺すたびに見せる、あの顔を見るだけで、自分は特別だと。自分こそ天才なのだと確認出来るのだ。
「雑魚の分際で、僕より上に行くんじゃない」
表情が抜け落ちたような表情でそう言い、再び詠唱を唱えて、【魔術:炎獅子の咆哮】を放つ。魔力を多めに消費したため、威力が上がっている。
「うあっ!」
アークナイトが塔楯を構えて防ぐが、続いて起きた爆発で倒される。その時の衝撃で、レイアの小さな体が後ろに吹っ飛ぶ。地面を転がりうつぶせに倒れる。目立った傷はないが、捻ったらしく右足首がズキズキと痛む。
痛みで顔をしかめながら顔を上げると、ハワードが杖をレイアに向けて詠唱を唱えていた。
『雷精の雷よ。我が敵を撃て』
【魔術:雷撃】
初級の威力の低い雷魔術を発動。魔術法陣から、雷が放たれる。威力が低いので死にはしないが、あれは電撃で意識を刈り取る魔術としても使える。喰らったらひとたまりもない。
『魔を退ける光よ。悪を妨げる障壁よ。我が身を守れ』
【魔術:光絶】
光初級防御魔術を素早く詠唱し、光の障壁を張る。放たれた雷は、障壁にぶつかって霧散する。しかし、今の一回で障壁も消えてしまった。
「切り詰めていない詠唱文で、よく間に合ったねぇ。じゃあ、これはどうかな?」
【魔術:炎帝の激昂】
詠唱を一切唱えず、魔術を発動させる。
「無詠唱!?」
詠唱を唱えずに魔術を発動させるのは、かなりの高等技術だ。まだ詠唱文を切り詰めることも出来ないレイアにとって、遥かな高みだ。発動したのは、炎中級魔術。喰らえば、死ぬ確率の方が高い。
【召喚術:サラマンダー】
今のアークナイトでは、一撃で消滅してしまう。咄嗟にそう判断し、炎精霊を召喚する。四大元素の精霊は、自分と同じ属性の自然現象や魔術なら、取り込むことが可能だ。自分の魔術では防げない。アークナイトの防御でも売り。そう判断したからこそ、サラマンダーを召喚した。
召喚陣から現れたのは、レイアと同じくらいの大きさの、炎を所々に纏った赤いトカゲだ。これが、炎精霊サラマンダーだ。
「あの炎を取り込んでっ!」
召喚してすぐ、間を置かずに指示を出す。それに従い、サラマンダーは口を大きく開ける。すると、【炎帝の激昂】が口の中に吸い込まれていく。ハワードは、まさか自分の魔術が吸い込まれるとは思っておらず、驚いたように目を見開く。
【サラマンダーの息吹】
【召喚術:アークナイト】
お返しだと言わんばかりに、サラマンダーが炎を吐き出す。レイアと同じ大きさだというのに、凄まじい熱量を持った炎が吐き出される。初級の精霊とはいえ、自然を司る存在だ。その威力は、低く見積もっても中級並みはある。
咄嗟に防御魔術で結界を展開し、炎を防ぐ。【サラマンダーの息吹】は呼吸のような物で、息を吐き出しながら炎も一緒に出てくる。ずっと吐き出し続けられる訳ではない。
吐き出す息がなくなったのか、サラマンダーは攻撃を止める。僅か十数秒の攻撃だが、その熱量の高さゆえに、周囲の木や草花が炭化している。防御魔術で結界を張って何とかやり過ごしたハワードは、ただの息吹だけでここまでとは思っておらず、驚愕の表情をしている。
そこに、新しく召喚し直した三体のアークナイトが攻撃を仕掛ける。右手の長剣を振り下ろし、結界に叩きつける。一体ならともかく、三体同時に叩きつけられたので、結界が音を立てて破壊される。同時に、一体のアークナイトが即座にシールドバッシュを叩きこむ。
「ぐっ……!」
ギリギリ防御魔術を体に施したため、吹き飛ばされるということは無かった。しかし、明確な隙となったのは確かだ。新たに召喚したアークナイトが、躊躇いなく長剣を袈裟懸けに振り下ろす。その攻撃は、防御を突破して、ハワードに傷を与えた。
「ぐぁ!?」
防御が突破され、激痛に顔を歪ませてたたらを踏む。そして、追い打ちのシールドバッシュを喰らい、殴り飛ばされて気に激突して、意識を手放してしまった。それに対し、レイアは初めて人を傷つけたので、例え悪人でも罪悪感を少なからず感じていた。