7話 魔王の力
「お、おい・・・大丈夫かおっさん!」
片腕と片目の無くなった神を見て俺はようやく、ことの重大さを理解した。
「大丈夫です。この程度では死にませんから」
息も絶え絶えになりながら俺に言う。
明らかに大丈夫ではない。
俺がどうしたらいいか混乱していると、神は言う。
「炎真さん、逃げますよ」
「え?」
「あれは魔王です」
――!?
あ、あれが魔王・・・
納得だぜ、どうりで勝てる気がしないわけだ。
「彼女はまだ復活したばかりで本調子じゃない――にも関わらず、神である私もこのざまです。今戦っても死ぬだけです。一度天界に行き、そこで体制を整えます、いいですね?」
・・・今戦っても死ぬだけか。
否定はできない。
神にこれほどの重症を追わせるほどだ、俺が行っても無駄だろうな。
「わかった」
俺が了承し、神が転移の魔法を唱えようとした時
「逃がさん」
魔王は手から先程の炎とは違う、黒い炎を手に纏わせる。
「極炎地獄!!」
魔王が黒い炎をこちらに放つ!
明らかにさっきとは威力が違う。
まずい、このままだと転移が終わる前にやられる!
神も同じことを思ったのか、転移を止め手を炎に向ける。
「天の水渦!!」
神の手から極大の水の塊を打ち出す!
炎と水がぶつかり合い、凄まじい衝撃波が広がり辺り一帯が更地に変わる。
・・・何なんだよこれ。
本当にあんな化け物封印できるのか!?
その時、俺の脳裏に神との会話がよぎる。
『普通魔王といえば討伐だろ。何で封印なのかなって思ってさ』
『そうですね、封印の理由ですか・・・』
『何なんだよ・・・』
『――いいえ。何でもないです!理由はそのうちわかりますから、気にせず修行を続けましょう』
何故討伐ではなく封印なのか・・
単純な理由だ。
あいつは――強すぎるんだ!
神ですら勝てないほどの圧倒的なまでの強さ。
なるほど、ありゃ勝てんわ。
もはや笑えてくる。
「クッ、相殺するだけでやっとですか・・・!」
「相変わらず弱いなソプラノよ。神なら私を簡単に止めてみよ・・・と言いたいところだが、そろそろ時間だな」
そう言うと魔王が転移しようとする
「どこへ行く!」
神が問うと、魔王は平然と答えた。
「復活したてで体が現世に馴染んでいなくてな、少々眠る」
「逃がさない――と言いたいところですが、ここはラッキーだとでも思っておきましょう」
「賢明な判断だ――おい、転生者よ!名はなんという?」
魔王は視線を俺に向けて問う。
「工藤炎真・・・」
「工藤炎真、か。覚えておこう」
そういうと魔王はこの場から去って行った。
俺はその場で力なく倒れた。
これが俺と魔王のファーストコンタクトだった。
今回で終わると思ったら終わりませんでした。
多分次でこの第0章が終わります。
それにしても自分の技名のセンスの無さに泣けてくる。