第7話 引き寄せて、引き寄せて
那奈子の企みは着実に、そして確実に進んでいくのだった・・・
「あ~あ、暇だなあ。・・・智は気分が悪いって家で寝込んでるし・・・愛ちゃんは茶碗蒸し研究しに、さっさと帰っちゃうし・・・・」
神螺儀小学校五年二組、【牧野恵美】。恵美は村田智博(愛称・智)と藤堂愛戯(通称・愛ちゃん)の二人は大切な友達である。だが最近の智博は学校に来るのを嫌がるようになり、愛戯は六年の東祐介に美味しいと言わせるために、茶碗蒸し研究に夢中となっている。結果、恵美は一人になることが多くなっていた。だが今までそんなことはなく、『那奈子さん』の噂が広まった頃であった。
そして今夜八時を回った頃、恵美は夜になるまで近くの公園で屯しようとしていたが、こんな日に限って【藪坂吾郎】が公園を独り占めしているという噂から、公園で遊ぶことを諦めて家でゴロゴロしていた。まさか家に帰ってすぐに勉強をするとは思わなかった恵美は、勉強をやり終わった今、本当に暇になった。暇過ぎて明日の授業の(生まれて初めての)予習までしてしまった。何を遊ぶにも、智博や愛戯がいた恵美にとって一人で遊ぶことは、一体どうしたらいいのか全く以て解らなかった。仰向けでボーっと天井を眺める時間が途轍もなく嫌だった。
「・・・暇・・暇、暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇ひまー!」
怠惰が頂点を達した恵美は、握りしめた拳を天に向かってパンチを二、三度繰り出した。そして恵美は勢いよく起き上がった瞬間、心の中から何かが聞こえた。
―私とあそぼ?
「え」
その時。恵美の時間が止まった。
恵美の体は恵美の支配を余所に、何者かの力に操られるように、直ちに神螺儀小学校に向かうのであった。恵美の親は現在町を出ていて、朝六時から深夜十一時まで宗教法人『幻造社』の仕事に大忙しであった。一人娘である恵美の事は、ほとんど智博の母に押し付けていた。智博の母・ミツバはその親子関係を危惧していたが、他人の関係を安易に壊していいのだろうかと思い悩んでいた。
「ん~、眠たい・・・」
五年二組【靉寿梃弧子】。彼女は今研究のスランプに入っている。まあ彼女にしては一か月周期に必ずスランプに陥るのだが、その日はまたいつものスランプと違った。
「・・・頭痛が治らないよぉ」
そう、『那奈子さん』の噂を耳にするようになってからだ。だが梃弧子はある研究に没頭していて、周りの噂話なんて右から左へ通り抜けていった。頭痛は今までのスランプにはなかった。今まで梃弧子にとっては眉を大きく動かしながら、ラジオ体操をやり続ければよかったのだが、頭痛までくれば体操どころではない。ベッドでゴロゴロと呻きながらの一日はとても困った事態である。
そして夜七時が回る頃。頭痛が頂点に達した時、彼女の意識が飛んだ。梃弧子の体はそのまま家を出て、神螺儀小学校に向かって行った。
―ふふふ・・これでまた楽しいかくれんぼの始まり・・・
そして神螺儀小学校に向かう三人の女子小学生は、真夜中の学校をたった一人の那奈子という生徒によって、意のままに操られるように集められて行く中、学校から少女の笑い声がいつまでも聞こえるのだった。
恵美と梃弧子のことが知りたくなったら、すぐカミラギ・ゼロを見よう!ということで、那奈子が何故この二人を連れ去ったのか。それは・・・・次回にお楽しみ。