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那奈子さん  作者: Sin権現坂昇神
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第26話 救出作戦 ~孤独戦~

荒れる葉奈子の世界。それに対応できずにいる杏と静歌。葉奈子に浸食されようとする那奈子。那奈子の異常事態に動揺する一十三と飯子。緊迫する第27話、開始!

最近投稿が遅れてすみません。連続のバトルシーンに危機迫る状況の連続でこちらも見直すのに一苦労しています。次も遅れたらその時謝ります。

―何で私、ここにいるんだろう・・・・・


ここは葉奈子の体内。(たか)(がみ)高鬼(こうき)に出会うまでは、ほんの小さな心の(わだかま)りであった。だが今は・・・心どころか肉体までもが、葉奈子という一つの個体なって那奈子を乗っ取っていた。そして那奈子の全てを奪った(あかつき)には、那奈子は消え那奈子だった心は、肉体は『葉奈子』という新たなる存在として生まれ変わるのだ。那奈子は肉体を全て乗っ取られながらも、精神のほんの一部、ほんの小さな心の蟠りだった頃のように(かす)かな心となって、葉奈子の体内に(ただよ)っていた。葉奈子の心がほとんどを支配する中、那奈子はその心に押さえつけられながらも、那奈子の本能が必死に葉奈子の支配に抵抗していた。


―この感じ・・・葉菜子も最初はこんな気持ちだったのだろうか・・・


 那奈子は今鎖(くさり)(しば)られている。とても苦しくとても痛い。今まで私は、もっと多くの人と遊びたいと想いながらも、飯子さんともっと一緒に遊びたいという想いを強くすることで、大きくなろうとする蟠りをずっと抑え込んでいた。だがそれを高鬼に目を付けられたことで、抑えられ続けた蟠りが爆発し、今に至る。


―これは・・・自業自得・・・自縄自縛(じじょうじばく)・・・しかも飯子さんを・・関係ない人を巻き込んで・・・・私、最低だ。


自分を縛るこの鎖は、今まで抑え込んでいたことへの報復なのだろうか。那奈子はとても苦しいと思いながらも、苦しんで当然なのだと受け入れようともしていた。抵抗する力も消え少しずつ衰弱(すいじゃく)していく中、那奈子は何を思う・・・




―私はただ飯子ちゃんとのかくれんぼに少し物足りなくなっただけ。何十回もやれば飯子さんの行動パターンは大体読める。でも飯子さん以外の他の人と友達になる方法は知らない。もし知っていたとしても勇気がない。もっといろんな人とかくれんぼがしたい。けれどもし飯子さんに話せば、もしかしたら飯子ちゃんを悲しませてしまうかもしれない。「私じゃ満足できないの?」「私のこと嫌いになった?」「私じゃ那奈子ちゃんと釣り合わない?」きっと飯子さんはそんなこと絶対に言わない。分かってる。分かってるけど・・・初めての友達とどう相談したらいいのか分からない。怖い。嫌われるのが、


〝怖い〟


 やっとできた友達を手放したくない。もし手放せば、また私は一人になる。そして(さび)しさのあまり、私はまた分身を作り出し、また一人の世界に(ひた)るのだ。でも分身は数分経てば煙の様に消える。そして分身は一日五体までしか出せない。それ以上出せば生命力を使い過ぎて死んでしまうから。最後の分身が消えれば私は体力を回復させるように自然に眠りに落ち・・・そしてまた起きれば同じように分身を出して独り言をぶつぶつと(つぶや)くのだ。そんな生活はもう(いや)!私は最低だ・・・ずっと同じ遊びをするといつか()きてしまう。でも私が覚えた遊びはそれしかない。本にはかくれんぼが一番楽しかった。でも・・・二人ではすぐに飽きてしまうことが分かってしまってからは・・・小さな蟠りとなって、しこりとなって私の心を侵食し始めた。体が弱かった私の体は、かくれんぼを遊び続けることによって少しずつ体が強くなっていった。そして友達と出会い、幸せを手に入れた。でもそれと同時に、私は『()(しょう)』という自分の新たな一面を知り、そんな自分を見せないように、飯子さんの前で(つくろ)う日々が続いた。


―ごめんね、飯子さん・・・


 自分の心はいつか自分に牙を向く。その事態の大きさは、那奈子自身にも想定できない方へ行ってしまった。もう自分だけでどうにかできる問題ではない。

 けど何でだろう・・・


〝な・・・ちゃ・・!〟


 私の心に必死に呼びかけるような・・・

 声のような何かが、私を・・・



挿絵(By みてみん)

 そして幽夢(ゆうむ)一体(いったい)を発動させた葉奈子は、学校と融合(ゆうごう)したことで空が荒れに荒れ、地上に(かみなり)と突風を落とし、地上からは激しい地震により立つこともままならない状況であった。

「「「「!」」」」

 葉奈子に操られていた子供七人は、葉奈子が学校と合体した後、すぐに意識を取り戻した。そして真っ先に吹き飛ばされるほどの突風と、耳を突き刺すような落雷に、下から割れんばかりの地震をダイレクトで感じた子供達は恐怖ゲージが一気に支配のち全員絶叫した。怒涛(どとう)の涙を流し「怖いよ」「お母さん・・」「わあああん!」と各々(おのおの)の感想を()きながら周りを必死に詮索(せんさく)する。これは誰かに助けを求める防衛行為である。唯一(ゆいいつ)葉奈子に操られなかった阿木斗(あぎと)に至っては、静歌に会うだけの力しか残っていなかったため、今は恵美(えみ)の中で力を(たくわ)えていた。そして阿木斗の存在を(いま)だ知る(よし)もない恵美と梃弧子(てここ)は、間近(まぢか)で見る雷と一風変わった学校を目にして、理解が追い付かずただ無言で地面にしがみ付くしたかなかった。というよりびっくりしすぎて腰が抜けていた。七人は本能で体をくっつけるように固まって、早くこの状況を変わって!と思いながらじっとしていた。

「おい!お前ら早く木の方に逃げろ!」

 杏は必死に葉奈子の放つ無数の大蛇(だいじゃ)落雷(らくらい)・突風・地割れを避けながら、泣き声を頼りに、子供達に向かって大きな声で警告(けいこく)した。

だが・・・

「足が・・・力が入らない」

 あまりの世界の変わりようで、筋肉が硬直(こうちょく)し腰も抜け全く動けなくなっていた。至近(しきん)距離(きょり)の雷の轟音(ごうおん)や、ピカッと光る(まぶ)しい閃光(せんこう)だけで、行動する気力など簡単に失うことができる。だが杏も葉奈子の攻撃を受けきるのに必死で、もし子供たちを助けに向かえば、葉奈子の攻撃が子供達にまで巻き込むことになる。杏はそれを恐れ、子供達に安易に近づけないでいた。葉奈子の大蛇の数は着実に増えていく。その数の多さに比例するように、落雷の数、突風の強さ、地震の大きさまでもが大きくなっていくようだ。中々倒れない杏にイラついているからであろう。

(早く子供達を安全な所へ避難(ひなん)させなくては・・・)

静歌はどんどん追い詰められていく状況に焦り、冷静な判断が出来なくなっていった。この世界そのものが葉奈子の作り出した世界。安全な場所なんてあるかどうか・・・


「どこを見ている!」


「!」

《危ない!》

 チラチラと子供たちの安否を確認していた杏に、怒りを覚えた葉奈子は大蛇の数をさらに数百本増やし、その髪の(やり)の方向は子供達に向けていた。杏は危機として叫ぶ。

「おい!待て!敵は俺だけだろ!」

「ふん!私の遊びに集中できないお前など興味はない。その邪魔な虫けらを排除してからだ!」

 杏の必死の抵抗を無視し、よそ見する杏の目の先にある子供達めがけて、大蛇の群れが躊躇(ちゅうちょ)なく突進した。

 その時。

「やめろー!」

 

槍が子供達に突き刺さろうとする一瞬、どこからか天高く叫ぶほど大きな声が、葉奈子の世界に(ひび)き渡った。




「何?急に那奈子ちゃんが!」

 一十三&飯子サイド。今もなお那奈子を(おさ)えるのに必死な二人だったが、葉奈子が学校と融合してからというもの、突如(とつじょ)として那奈子の手足は学校の床下、壁、天井(てんじょう)隆起(りゅうき)して、ブラックホールの様に吸い込まれ融合したのである。さらに那奈子の体は学校と融合してから、学校の床下、壁、天井から現れた糸のような(なぞ)繊維物(せんいぶつ)によって、自身をぐるぐる巻きにし、今那奈子は(かいこ)(まゆ)の中に閉じこめられている(さなぎ)の状態であった。

繭に閉じ込められてからしばらく経ってから微動(びどう)だにしない那奈子に、飯子は(ひど)動揺(どうよう)して(ひざ)から(くず)れ落ちると、自分の髪をぐしゃぐしゃにながら()き捨てた。

「どうしたの一体?何で糸で巻きつけられてるの?何で学校から糸が出るの?意味わかんないよ、もう!」

「まさか杏、静歌!」

 一十三の脳裏(のうり)に最悪のシナリオが浮かんだ。子供達を救えず、静歌と杏があの世界に閉じ込められ、那奈子ちゃんを失う。そんなシナリオが・・・

那奈子の分身は那奈子が住む国の女王の血筋なら誰でも持つことができる能力であり、子供なら五人前後が限界であり、無理して使おうとすると命を縮めてしまうほど危険な行為である。皆も気を付けて分身を使うように!那奈子は蛹のように学校から現れた糸でぐるぐる巻きにされ、そして着実に糸から那奈子の命が吸われていく・・・時間がない中、一十三の前にある人物が現れた・・・

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