第21・5話 救出作戦 ~出発~
すみません。この話を書き忘れてました。二手に分かれて那奈子を救うことになった一十三達。彼女達の決意の出発は吉と出るか、それとも・・・
静歌は閉じた目を開けた。そこには心配そうに静歌の顔を見つめる一十三であった。和室にいた自分の意識は、自然に元の静歌の体に戻ったのだった。静歌は安堵すると、右肩に突然声が鳴った。
《よぉ!》
「!・・・お前はあの時の・・」
静歌の肩に気前よく座っている者、それは和室にいた小さな妖精の声と全く同じだった。だが那奈子を見た静歌にとってはそこまで驚くことでもなかった。杏は言った。
《これは緊急時だ。半日も経てばまた見えなくなっちまうけど、よろしくな》
杏は静歌に袖を見せた。そこには【静歌】と書かれており、これを書けば杏を見ることができる。だが半日と言う制限があり、杏にとっては初めての行為だった。何故なら一十三は自分のお気に入りであり、名前を書かなくても意思疎通を計ることが可能である。静歌はフンッと杏から嫌々目を背けて答える。
「今だけだ」
《ああ》
自分がここまで嫌われるとは思わなかった杏だったが、まあ協力してくれるなら別に構わないらしい。そして。
「誰と話してるの?静歌」
この場でただ一人杏を見ることが出来ない飯子は首を傾げていた。一十三は付け加えて言う。
「私達の力になってくれる妖精・・・みたいな感じかな」
「へえ・・・まあ那奈子のあんな姿を見た後じゃあ、不思議とびっくりはしないかな」
飯子はそれが例え人でなくても、自分達に協力してくれるのなら嬉しい限りであった。でも一十三も知っているということは、自分だけ見えないのか・・・と少し悔しさも残っていたが、無駄に時間をかける訳にもいかないと一先ず我慢した。そして飯子は静歌に向かってこう言った。
「もう大丈夫?」
「!・・ああ、問題ない」
《こっちもオーケーだぜ!》
二人の返答に一十三も頷いた。
「じゃあ私と飯子ちゃんはここで那奈子ちゃんを抑えてるから」
「私と杏は那奈子の心の中に入って、攫われた子供達を助け出す!」
(杏って言うんだ・・覚えておこう)
飯子は今度二人に杏の事を聞いてみようと思った。一十三と静歌・杏と飯子はお互いにアイコンタクトを取って心の中で誓った。それは同じか、それともそれぞれ違う言葉か。四人は同じ言葉を交わして、お互いの持ち場に向かうのだった。
「「「《また会おう!》」」」
静歌は那奈子に向かって手を伸ばした。杏は眉間に力を集中させて、『ダイブ』の力が発動した。眩い光が杏の体から解き放たれ、一瞬にして静歌と共に那奈子に吸収されるように消え去った。飯子は、静歌が消える一部始終を見て「本当に・・消えたの?」と呆気にとられて見ていた。
「大丈夫。きっと戻ってくるよ」
一十三は那奈子に触れる手を、さらに強く握って答えた。消そうとしても消えない一抹の不安の中、一十三は静歌達の帰りを待つことに決めるのだった。
この話で書いた文が、後の話で重複する部分があるので注意。出発した静歌達、静歌達をまず一十三達の互いの心情は如何ほどだろう。那奈子の暴走はいまだ激しく・・・次回




