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那奈子さん  作者: Sin権現坂昇神
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第18話 飯子と那奈子

一時的に意識を取り戻した飯子は、那奈子に語ったこととは・・・そして貴神・那奈子の力の前で、いまだ諦めることない少女が一人。杏の新技も・・・!?

「あんた元に戻ったの?・・まさか」

 那奈子は愕然(がくぜん)とした。それもそのはず自身の力では洗脳(せんのう)を解くことは到底できない、と那奈子は考えていたからだ。しかも(たか)(がみ)・那奈子の状態で洗脳すれば、死ぬまで那奈子の奴隷(どれい)になるほどの力。那奈子はまさかと思って思考を一気に解放した。だが答えは見つからなかった。

必死に考える那奈子を見て、杏は内心喜んだ。杏の作戦は成功したのだ。杏の力技戦法は、那奈子の分身を蹴散らすだけではなく、飯子に体当たりした時の『衝撃波(ショックウェーブ)』であった。杏の力は(のろ)いや術にかかった者に『衝撃波』をぶつければ解除できるというもの。だがそれは一時的で、術をかけた者、呪いをかけた者を倒さなければ完全に解除ことはできない。杏はその『衝撃波』を利用し、そして飯子の一時的な洗脳解除に成功したのである。意識を取り戻した飯子は、那奈子をじっと(にら)み付けて言った。

「なんでこんなことするの?」

「何でって・・・これが私自身の願いだからよ」

 那奈子は不敵に笑って答えた。今の飯子は何の力もないただの人間。また分身数人でこいつを埋め尽くせば、再度乗っ取ることが出来る。那奈子の余裕(よゆう)は明らかだった。でも・・

「違う・・・」

「違うって何が?」

「那奈子ちゃんはそんなことしない!こんなひどい事・・」

「今してるじゃない」

「違う!あなたは那奈子ちゃんじゃない」

 飯子はまっすぐ那奈子を見て答えた。飯子は目の前にいる那奈子は、あの時遊んでいた那奈子とは明らかに違うと確信していた。那奈子は確かに世間知らずで、高飛車(たかびしゃ)な所があるけれど、ちゃんと意見を言い合えるし、助け合いの精神もある。そして一番大事なこと。それは・・

「那奈子ちゃんは相手を傷つけたりなんかしない。那奈子ちゃんはずっと私と遊んできた。とても楽しかった。けど私も那奈子ちゃんももっといろんな人とかくれんぼがしたかった。沢山の人と遊びたい・・・でも声をかける勇気がない。このまま二人で遊んでいたらそのまま飽きて終わってしまうかもしれない・・・そう思ってた」

「へえ、解ってるじゃない・・・」

「でも・・だからって他人を傷つけることはしなかった!もし那奈子ちゃんが酷いことをしたら・・・」

「したら・・何だって?」

 高圧的な態度は那奈子らしい。でも違う。私の見てきた那奈子ちゃんじゃない。飯子は息を飲んだ。そして那奈子を見つめ、こう言った。

「私が絶対に止めてみせるよ。私の命を()けて」

 これからやることは痛いかもしれない。苦しいかもしれない。でも那奈子ちゃんを止めるためだったら、こんな命いつでも懸けてやる。私のたった一人の大切な友達は、私が絶対に取り戻して見せる!飯子の意志は、何よりも揺らぐことはない(はがね)(たましい)となった。

「ただの人間が神になんて無礼な!」

 余裕だった那奈子の態度が更なる怒りに満ち溢れた。そして十体、いや四十数人の分身が飯子の周りを取り囲んだ。でも飯子はもう(ひる)まない。怯んでいる(ひま)なんてないんだ。

「もう絶対取り込まれるわけにはいかない・・・もう操られたりしない・・・だから・・・」

 那奈子の分身達は、すぐさま飯子の体に(へび)の様に(から)みついてくる。とても冷たい感触が体中に感じてきた。那奈子の想いが伝わってくるような気持ちになった飯子。飯子は那奈子の苦しかった記憶が、分身から自分の頭にどくどくと流れ込んできた。自分以上の嫌なことを体験したんだろうか。飯子は自分の意識が、那奈子の記憶の濁流(だくりゅう)()みこまれようとしていた。


 その時だ。

「まだ・・・あきらめちゃ・・・だめ」

 いつの間にか、杏から一十三に戻っていた。そしていまだ取り込まれてなどいなかった。

杏の特殊技『衝撃波』。これで杏はもっと広い戦術が取れるようになった。というか元々持ってたけど、危機迫る状況の中思い出した、杏の土壇場根性が実を結んだ結果である。飯子の決意はとても固く、貴神・那奈子の心を一瞬でも揺るがすことはできたのだろうか・・・そしていまだ抗い続ける一十三の眼は一体何を見つめているのだろうか・・・次回に続く。

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