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那奈子さん  作者: Sin権現坂昇神
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第16話 VS那奈子(仮)

ついに始まるかくれんぼ。メンバー三人に対し、那奈子は一体どんな手を使うのか・・・!

―後言い忘れたけど、一人一部屋だから。一纏(まと)めで隠れられて、すぐに終わっちゃうのは大嫌い!・・だから・・・ね?。


 少女は次々とルールを作り始めた。静歌は足をあげると、地面にドンッと踏みつけた。だが静歌の苛立(いらだ)ちは収まることはなかった。

「桜様、声の主は途轍(とてつ)もない殺気があります。更にこの学校の温度が徐々に冷え始めています。早く声の主を倒さなければ・・・」

 服越しでも解る寒気に、一十三と静歌は両腕を擦りながら少しでも気温を暖かくする。だが長い廊下や教室の奥から流れ込んでくる冷たい風が、二人の体を着実に冷やしていく。

「・・うん。でも今はこの声に従おうよ。今抵抗してもあっちの思う(つぼ)だよ?」

「ですが!」

 静歌は抵抗する。だが一十三はまだ戦う時ではないと静歌を(いさ)める。そんな二人を飯子は不敵に笑ってこう言った。

「早く隠れようよ!じゃないと何されるか分からないよ?」


―それじゃあ百からか数えるよ~百、九十九、九十八、九十七~


 那奈子は数字を数え始めた。一十三と静歌は那奈子に急かされるように(あせ)りが生じた。隠れなければ・・・どうなってしまうのだろうか・・・恐怖心が一十三の心を支配する。

「・・・分かった・・・でも危なくなったら」

 不安に駆られる静歌に一十三は(まゆ)(ひそ)めて言う。

「私に任せて」

「え?桜様・・?」

「いいから」

「・・・はい。分かりました」

「もう話終わった?じゃあ始めよう!」

 一十三の自信。もし危なくなったら杏に代わって、いち早く敵を見つけて倒せばいい。短絡的だが今の一十三にはその方法が最善な策だった。いやそれ以外の方法がまだ見つけられないのだ。静歌も何故一十三が「私に任せて」と言ったのか。一十三は何かを隠しているのだと直感で思った。だが今それを聞く暇などない。飯子に急かされながら、三人は別々の教室に隠れることになった。




「ここかな?」

 今一十三のいる場所は四年二組の教室。その中の掃除用具が入っているロッカーの中に隠れている。かくれんぼはまだやったことがない。犬太と杏はかくれんぼより、もっと好き放題暴れられる遊びが好きで、一十三はこういう落ち着いて遊ぶかくれんぼが、新鮮でいてとても好きだ。なぜそこかと言うと、自分が隠れられる大きさの箱を探していると自然と自分の教室のロッカーを思い出し、ここも同じ教室なのでそこに隠れた。




(何で私がこんなこと・・・)

 静歌は一十三のいる教室ではなく、一番右奥にある家庭科室の入り口すぐの教壇(きょうだん)の中に隠れている。遊びなど一度もやったことがない。いや(むし)ろ何度殺されるか分からない状況に生きてきた彼女にとって、今の状況はまさにその状況に適していたので、昔のころを思い出して冷静に対処できていた。だが自分が戦ってきた相手は人間や機械だけだったが、今戦おうとしている相手はそのどちらでもないように思えた。

(人の声をしていなかった。何か()りつかれているような・・・)

 



「ここにしよっと」

 伊達飯子は家庭科室の反対側の一番端、音楽室内の大太鼓(おおだいこ)の中に入っていた。大きな太鼓は、丸まった飯子一人をまるまる隠すことができ、飯子は真っ先に目の前の大太鼓を見つけ、迷いなく隠れた。今の飯子の心は、天井から聞こえる声を聴いて以来、ずっと興奮していた。ゾクゾクッと()き上がる高揚(こうよう)感は快感となって、今の飯子を動かしていた。

 そして少女が「ゼロ!」と叫んだ後、三階の教室の扉が一斉(いっせい)に閉められた。一十三達が隠れた場所は三階にいる、と断定した少女の自信であった。


―さーて、かくれんぼを始めるよー!どこに隠れたのかな?


 少女はさっき一十三たちが上った階段の方に現れた。服はもちろんハイカラファッション。那奈子はスキップしながら廊下を歩いていく。地面を蹴る音が、静かな学校を独り占めするかのように支配する。少女はまさに今、この学校を支配する女王である。


―ガラッ


 そして少女は、一つ一つの教室の扉を勢いよく開けると、ヌッと室内に入って確認して回る。現在那奈子に一番近い場所は、家庭科室に隠れる静歌であった。だが少女は家庭科室を調べようともせず、まず三年生の教室から調べ始めた。次々と開けられていく扉の音を確認しながら静歌は考えた。

(これ以上こいつの(すき)にはさせない。桜様に指一本も触れさせはしない!)

 静歌の意思は一十三の命最優先。静歌はかくれんぼという遊びを(いま)だに理解できていなかった。素早く敵を(ほふ)ればそれでよかった。静歌は瞬時に家庭科室を出ると、無音で少女の背後に潜り込み、しゃがんだ状態で少女の姿を確認してから、ズボンの(すそ)に隠し持っていた小型ナイフを少女の首元に向かって突き刺した。

(やったか?)

 だが傷つけたナイフの先から赤い鮮血(せんけつ)はなかった。首一つ落とせるくらいの勢いで突き刺したはずの首は、何のダメージも受けることなく綺麗な肌色を保っていた。少女は素知らぬ顔で自分のポニーテールを()き上げた。

「切られてない・・・!いや、ちょっと切られてる!あんたねえ!」

 少女は自分の(てのひら)にポニーテールの髪が、三センチくらいの長さに切られていたことに酷く怒った。殺気の(こも)った眼光で後ろを振り向き、少女の無傷に衝撃を受けている静歌を(にら)み付けた。

「あんたのせいで・・・私の大事な髪を!」

 静歌は咄嗟(とっさ)に両腕を顔に向けて交差させた。その時、交差させた腕に強い衝撃波が()ち込まれ、そのまま頭から地面後方に突っ込んだ。

「ぐあ!」

 静歌の(うめ)き声もすぐに終わった。少女は静歌の首を両手で握り()めると、()り上げるようにして静歌の頭を天井近く持ち上げて言った。

「私の体を傷つけたお前を許さない!」

「!おま・・えは・・!?」

 そうだポニーテールをしている女子は・・・

「伊達飯子!」

「だったら何?」

 冷たく言い放つ飯子の力は、静歌の首を確実に苦しめていく。苦しい。首が締め付けられ、意識が(うす)れていくのが分かった。だが必死に生きようとする防衛本能が、静歌の足を万遍(まんべん)なく刺激した。

「いた!」

 飯子の手を、無理やり(ひね)った足蹴りで(ほど)くことに成功。地面と自分の距離から、瞬時に受け身を取って着地できたが、今の飯子の何もかもが可笑(おか)しい。これほどまでに恐ろしい殺気を、初めて会った時に持っていたのだろうか?

「お前は・・・誰だ?」

 あの時一十三と一緒にいた時の飯子はいない。こいつは飯子の皮を被った何かだ。静歌は結論づけて言い放った。その問いに飯子はニヤリと笑った。

「お前の感は当たってる。私は・・・」

「那奈子はここだよ」

「!」

 後ろの気配を感じた静歌は瞬時に後ろを振り返った。そこには飯子の着ている服と同じハイカラファッション。もし違うところがあるかと言えば、飯子は水色、こいつは紫色だ。

「お前が学校の殺気の元凶・・・」

 静歌の言葉に、口が()けるほどの笑顔を見せた那奈子は首を(かし)げてこう言った。

「あったりぃ~。まあお前なんて呼んでないんだけどね。・・・感が良いって本当にうざいよねえ!」

「何!?」

 那奈子と飯子の間に入っている静歌の地面から、次々と色違いのハイカラファッションの那奈子と同じ少女が現れたかと思えば、静歌を(しば)るように幾重(いくえ)にも(から)みついてきた。

「動けないでしょ?それ」

 数秒もすると静歌は身動き一つ取れなくなっていた。那奈子の六人もの分身が首、手首、足首、胴体を見事に締め付けていた。その一連の流れをにやにや見ていた那奈子。そして飯子が言った。

「飯子はもう私が食べちゃった(ハート)」

「!・・どういう・・」

「私は【(たか)(がみ)・那奈子】。この学校を()べる神様でした~。残念結局分からなかったねえ」

 那奈子本人の口から意味不明な言葉が、静歌の耳を通り抜けた。理解が追い付かない静歌は必死の抵抗を見せる。

「神様・・?そんなものが本当にいるわけふぐっ!」

「いるんだよ。あんたの目の前にね」

 いつの間にか静歌の真正面に立った那奈子は、静歌の(あご)をクイッとあげ睨み付けた。那奈子の瞳は赤と黒が入り混じったまさに憎悪(ぞうお)そのものであった。

「待て―!!」

「「!?」」

 その時。四年二組の教室から飛び出してきた少女は、裂けんばかりの声を上げてこちら側へ突っ込んできた。

挿絵(By みてみん)

静歌と那奈子(飯子)の戦いは、まさに危機迫る攻防戦。だが那奈子の分身の力によって一気に形勢が逆転してしまう。最初のほうで説明したとおり、飯子と那奈子はグルになっていたということは明白となった。そしてその危機をずっと隠れていた少女が動き出す。次回、更なる戦闘激化!

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