第14話 那奈子 ~初めての友達~
那奈子の過去篇。那奈子は一人で黙々と遊びを練習していると、夜遅くに自分と同じように遊んでいる伊達飯子と出会った・・・
「わ」
たくしとともだちになりましょう。口に出せたのは「わ」という頭文字だけだった。これが、私が伊達飯子に話しかけた最初の言葉だった。伊達飯子は私が学校で暮らすようになってから二週間経った頃にやってきた。そして彼女は、私がいつも持ち歩いている『いろんな遊び』の本の中の一つ、【一人かくれんぼ】をやっていた。かくれんぼの一つで幽霊と呼ばれるものと一緒に遊ぶという奇妙奇天烈な遊びをしていた。幽霊とは今まで生きてきて一度も見たことがないので信じがたい。けれど伊達飯子はとても楽しそうに遊んでいた。何もないところから話しかけて笑っていた。私はそれがとても羨ましかった。前の私ならきっと一人かくれんぼを楽しむことなどなかっただろう。これまで独りで、複数で遊ぶかくれんぼの遊び方を覚えようとしているが、全く楽しめなかった。本当に一人かくれんぼが楽しいのだろうかと覚える度に疑問が生まれていった。だからこそ。一人かくれんぼを楽しめている彼女と一緒にかくれんぼをすれば、『遊ぶ』ということが楽しいことだと感じられるだろうか。
でも怖い。自分から誰かに話しかけたこと今までなかったこの私が、今楽しんでいる彼女の邪魔をしてしまうんじゃないかと・・・そうやって私は、四年一組の教室の扉の前でうじうじしていると、ガラガラ・・と扉が開く音がした。
「!」
私は吃驚して大声を上げ、前を見た。
「!」
そこには私を見て驚く伊達飯子の顔があった。
それから何故か彼女と遊ぶことになった。緊張していた私はあまり覚えていなかったが、伊達飯子・・・いや伊達さんが半ば一方的に話を進めていき、いつの間にか私と彼女は一緒に夜中のかくれんぼを遊ぶこととなったのだ。
それからが楽しかった。今までやった練習の成果はあまりなかったけど、「『遊び』なんだから、少しルールに背いたって楽しければいいんだよ」。私の間違いを、伊達さんは笑って言ってくれた。それがとても嬉しくて、彼女のことが大好きになっていった。
友達はある日突然できてしまう時がある。自分が予期せぬ方法で、あっという間に出来てしまう。まるで魔法のような出来事であり、何時しかその存在がとても大切な思い出になるだろう。友達に恵まれることはとても幸せなことであり、だからと言って孤独がただ悲しいことというわけでもない。一人一人の考え方や感じたはまるで違う。だからこそ嫌いも好きも生まれるんだ。争いも同じだ。那奈子と飯子の出会いは二人にとって初めての繋がりを生んだ。友達。だがそのつながりを利用する何者かがじっとこちらを見ていた・・・




