第13話 那奈子 ~遊びは彼女の希望~
那奈子の生い立ちがついに明かされる。彼女は日本を裏で動かしたといわれている『ダイラクナ帝国』の女王であった・・・
「私、『遊ぶ』という言葉をまだよく分からないの。誰か知らない?」
「お嬢様・・・」
五百年前までこの島国『日本』を裏で動かしていたと言われる、『ダイラグナ帝国』の女王【ダイラグナ・リッサー・ドクモット】。だが二十歳のドクモットは趣味の登山という名目で、突風により標高1500Mから落ちて亡くなった。だが彼女の十才から十年に及ぶ影響は小さくない。月に初めて足を付いたのはドクモットであり、ロケットらしきものを発明したのも、実は彼女ではないかとも言われているがその詳細はない。だが山から落ちた際、彼女の遺体にあったネックレスは、肌身離さず巻きつけていた『月の欠片』が真実なのだと証明させた。その後ダイラグナ帝国は彼女の死を受け、彼女の配下は散り散りになり、ついに千年に誇る帝国は日の目を見ることなく、歴史に残らぬまま消滅した。彼女の遺体は月の欠片と共にその場で火葬されたのだった。
だが、彼女の意思は消えてはいなかった。
彼女のたった一つの未練。それは・・・
「遊びたい!本には『遊ぶ』とは、子供の頃からやらなくてはいけないものだと書いてあった。けれど私は五才の時から、女王学を学ばされ血の滲むような訓練をさせられ、遊んだことなど一切なかった。夢の中まで勉強づくし、私たちの家系は夢を現実と同じく意識がはっきりできて、更に夢の記憶は忘れない。つまり五才から十歳まで永遠に勉強させられた。寝るという行為は、体は休めても心までは休ませなかった。これも全部勉強の所為!だけど頑張った。早く十才になって女王になりたかった。女王になれば我儘できると思った。でも違った。女王になっても、勉強を頑張っても物事が上手くいくことはなかった。だから上手くいくためにまた更なる勉強を強いられた。なんで配下の者たちの分まで自分が勉強しなくちゃいけないの?私に全部押し付けないで!私の心はもう限界だった。早くこの牢獄から出たかった。
そしてやっと・・・やっと暇が出来た。暇が出来るのに十年もかかった。でももう終わる。牢獄から抜ければそこは山、山、山。私は勉強をしながらも、体力づくりを怠らなかった。そして頑張って鍛えていると、私の分身が三、四人出来ていた。だから登山という名目の元、私の身体能力でこの山を難なく乗り越え自由になる!もう決めた事、私の見方は一人もいなかった。だからもうこの牢獄とはお去らばよ!何が『才能がある』って?あなたなら女王を全うできるって?お母様が出来たからって私が出来るなんて思わないで!私は・・・二歳の頃、お母様に眠れないから本を読ませてもらった・・・あの『いろんな遊び』を読んでから【かくれんぼ】という遊びが頭から離れなかった。お母様に初めて読ませてもらった『いろんな遊び』を読んだ後に言ったあの言葉は忘れない。
〝あなたは自由にやんなさい。私みたいに完璧何て疲れるだけよ〟
私はお母様が大好き。でも結局お母様も三十二歳で亡くなった。原因は過労。仕事をやり過ぎ・・・いや無能な部下のために人一倍頑張った結果よ。私達の家計はいつもそうやって死んだ。嫌よ!絶対に嫌!私は遊びたいの!
「かくれんぼを・・・遊びたいの!」
【那奈子】。それは日本に生きていくために、違和感のないように変えた自分の名。あの山で落ちた死体は私の作った分身であり、時間が経つと消えてなくなるようになっている。私は帝国から離れ、辺境の地【神螺儀町】に逃げた。そして自分の背格好から見て、小学校が似合うと思った私は早速、小学校の校長に駆け寄った。そして必死の説得の上、快く神螺儀小学校に入学させてもらった。でも誰かと遊ぶためには友達が必要だった私は、夜中の自分の家兼学校でずっと友達の作り方と、かくれんぼの遊び方を『いろんな遊び方』の本を見て無我夢中で練習した。
そしてある時、彼女に出会った。最初の友達【伊達飯子】に・・・
一応言っておきますがこれはフィクションです。人物も土地も歴史もすべて架空ですので、歴史の本とかで調べないでくださいね。私は社会は中の中くらいの成績でした。公民は歴史のようにワクワクできず、あまりいい点数が取れませんでした。ダイラグナ・リッサー・ドクモットの由来は・・・何れわかるさ・・・何れな・・・(後で考えよう)




