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那奈子さん  作者: Sin権現坂昇神
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第12話 ペンデュラム・マインド

那奈子の言動の一つ一つに途轍もない執念と絶対的な支配力が表れていた。那奈子はなぜかくれんぼを一十三達と始めようとするのか・・・そして那奈子を変えた犯人とは・・・

―十数える間に隠れてね?数え終わったら始めるよぉ!


 少女の声はとても楽しそうにハキハキとしていた。一十三たちにとってその声は、不気味な学校と見事にミスマッチして、更なる恐怖を(かも)し出していた。

「桜様!気をしっかり!」

《俺に代われ!一十三!》

 同時に一十三に問いかける二つの声。静歌(しずか)(あんず)。一十三は気を失いかけるも、二人の声に背中を押されるように、気を持ち直して二人に笑いかけた。

「だい・・じょうぶだから・・・・」

 一十三の顔は苦虫を()みつぶしたように苦しい中、それでも頑張って持ちこたえていた。何故一十三がこんなに頑張ろうとするのか。それは杏にも、静歌にも分からない。

「ここは危険です!早く学校から脱出」


―させなーい!学校から出たらどうなるか試してみる?


 少女の声は怒っているよう見えた。遊びから逃げようとしたからだろうか。それほど遊びに執着(しゅうちゃく)する理由は何なのだろうか?一十三はふとそう思った。恐怖が心を征服(せいふく)しようとする中、必死に思考を止めないように脳をフル回転させる。すると一十三は、少女に対して少しずつ疑問が生まれ始めていった。

伊達(だて)飯子(めしこ)!お前も気を確かに!」

「うん。平気平気、速く隠れようよ♪」

「!・・・ああ」

 静歌もある疑問が生まれた。さっきまで怖がっていた飯子。だが今はどうだろうか。飯子はニコニコ笑って、かくれんぼを今すぐにでも始めたがっているように見える。何で怖がらないんだ?この状況がそんなに楽しいのだろうか?静歌の飯子に対する疑心が、最初会った時よりも群を抜いて大きくなっていた。

《何で前みたいに俺に任せねえんだよ。今の一十三おかしいぜ!》

 この時杏は苛立(いらだ)ち始めていた。いつもならこんな危険な時は、すぐに一十三の心が激しく揺れ動く。その後、一十三の心は徐々に弱まっていくのだ。そして心が極限まで弱まったその時、杏は隙を見て一十三の体の主導権を一時的に得ることが出来ていたのだ。だが一十三の心は杏が入ってから変わった。一つの部屋だった心が二つの部屋になっていた。一つの部屋が控え室なら、もう一つは舞台。杏は基本『杏の部屋』で待機していて、一十三が危険だと思ったら、『杏の部屋』から退出し、『一十三の部屋』に入る。そして一十三の許可、または一十三の心が回復するまで、杏は一十三の体を借りることが出来るのだ。だからここで一十三は危険だと理解し、すぐにでも心が徐々に弱っていくはずだ。だが今の一十三は懸命に心を保って、杏に「まだ変わっちゃダメ」と言い聞かせていた。

《俺が居ればあんなやつ・・・!》

 いまだ杏はこの学校を支配する少女の正体を知らない。だが人間の力ではないのは確か。他の何かの力を感じていた。






「これが君の素晴らしい世界への第一歩か」

 恐怖に(うごめ)く学校を見つめる視線。自宅から双眼鏡で(のぞ)く彼の名は【貴神高鬼(たかかみこうき)】。彼こそが少女を変貌(へんぼう)させた張本人である。一十三の父、(さくら)(とう)一郎(いちろう)(もら)ったあるカメラを使って。『人間を神に変え、範囲内の民衆を統率する力』を持った素晴らしい道具。いや宝具を使って、那奈子(ななこ)を化物に変え、高鬼は一体何を(たくら)んでいるのだろうか・・・

ペンデュラムとは『振り子』。振り子のようにゆっくり揺れる時もあれば、激しく揺れる時もある。心そのものであり、私もその一人である。だが心を完全に制御することができるだろうか?それができれば、もうそれは人間ではない。仙人や神様のような、最も遠い存在である。必死に心を制御しようとする一十三に戸惑う静歌。最初会った時の恐怖心を全く見せない飯子。揺るぎなく遊びを求める那奈子に一体どう立ち向かうのか。こうご期待!

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