プロローグ
第1回です
プロローグ的なアレです
「私……先生が好きです……っ!私を……ダメな私を見捨てずにここまで引き上げてくれた先生が好きです……で、ですからその、私とお付き合いしてもらえないでしょうか……?」
五年前、とある女子高の卒業式の日、その女子生徒は卒業するなり「お話したい事があるので学校の屋上に来て欲しい」と言うので行ったら俺は告白されていた。
その女子生徒は成績はあまり良い方ではなかったがとても真面目な生徒だった。努力家で志望校の国立大学に行くためにいつも放課後まで図書室勉強していた。俺も出来る限り協力した。質問があれば答え、相談にも乗った。そして彼女は見事志望校に合格した。だが俺のした事は教師として当たり前の事だ。それに僕は恋愛はあまりしたくはなかった。1人で生きていきたいという願望があったからだ。だが曖昧な言葉で濁すのはお互いにとってダメだ。ここはキッパリ断るべきだがあまりハッキリと言い過ぎては必要以上に傷つけてしまうかと思い俺は口を開いた。
「若いなぁ……」
「え?」
脈絡のない俺の言葉に女子生徒は今どきの女子高生にしては飾り気はないが可愛らしい顔に困惑の色を浮かべる。
「こう見えて俺も学生の頃恋をしたんだな。俺が恋するなんて最早それだけでギャグなんだが……まあ、これが偶然にも俺の担任だったんだわ」
「……」
おどけた口調で語る俺に対し女子生徒は黙って真剣な表情俺の話を聞いていた。
「で、まあ、これまた偶然にも俺が卒業する時先生を屋上に呼び出してさ、告白した訳だよ。好きだーって」
「……っ」
真顔で俺の話を聞いていた女子生徒の顔がほんの少し切なげに歪んだ……まあ、そりゃそうだ。仮にも告白した相手の好きだった人間の話なんて聞きたくはないだろう。
申しわけないとは思ったが俺は続ける
「で、……その担任はなんて言ったと思う?」
「えっと……?」
何が言いたいのか分からない困惑顔を浮かべた女子生徒に俺は告げる。
「貴方は世界を知らなさすぎる。大学に行って、色々な事を経験して、世界というものを見てきなさい。私より良い女なんていくらでも居る。それでも私の事が好きだと言うのなら戻っておいで……ってな」
「……っ」
俺が何を言いたいのか察した女子生徒は俯く
「まあ、そういうこった。俺もあの担任と同じ言葉をお前に言うよ。お前は世界を知らなさすぎる。大学に行って、色々な事を経験して、色々な男を見てこい。俺よりもイイ男なんていくらでも居る。それでも……まあ、ねぇとは思うがそれでも俺の事が好きなら戻ってこいよ。」
「……一つ聞いても良いですか?」
自分がフラれたという事を理解し、涙声に問うてくる女子生徒に俺は「なんだ?」と聞き返す。
「今でもその……担任だった先生が好きなんですか?」
「あー?ちげーよ。実際彼女の言う通り彼女よりイイもん見つけたからな。教師の仕事という素敵な恋人をな。」
「ふふっ……先生らしいですね」
「そうか?」
「ええ……分かりました。私見てきます。この目で見てきます。世界を、先生の言う世界というものを」
「ああ」
「今までお世話になりました……いくら感謝してもしたりません……ありがとうございました……!」
「ああ、卒業おめでとさん。」
「はいっ!」
良い笑顔だった。今まで見てきたどんな女よりも素敵な笑顔だった。
……その女子生徒は今頃どこで何をしているのだろうな
俺、小岩井千尋は夢の中で五年前の出来事に思いを馳せる
いかがでしたでしょうか
少しでも楽しんで頂けたら幸いです
2話もできるだけ早く更新していくつもりなのでよろしくお願いします