計画、実行
魔法使いへと一瞬で近付いた俺は、その勢いのまま魔法使いの首辺りを切り裂く。
分かってはいたんだが、面白い程手応えがないな。
「っお前は!」
魔法使いのその声に反応し、大盾と弓使いがこちらを見た。
「さっきの雑魚じゃないあれ!」
「テール、ヘイト頼む!あいつは俺がやる」
「わかったわ!」
弓使いに一度狩っているモンスターのヘイトを預けて、大盾が俺に突っ込んで来る。
うん、一瞬にしては良い判断だ。
……ここからは完全に避けに徹する。
当然だが、敏捷極振りの俺に、大盾との一対一の攻撃なんて届くわけがない。
「雑魚野郎が!邪魔すんじゃねーよ!」
叫びながら突進してくる大盾。
大盾を構えながら突っ込んでくる様子は、中々迫力がある。……当たらないけど。
んー、闘牛的な?
俺は持ち前の速さを生かし、わざと大袈裟に動いて、大盾を煽るように逃げ回る。
――こんな敵には、範囲魔法だよな?
そう、後ろの魔法使いへ伝えるように。
「クロ!」
「任せろ!ふふ、初PKだ……!ファイアーウェーブ!」
魔法使いは、魔法名を唱える。
おそらく、魔法陣が完成するのはあの速度だと10秒程だろう。
10秒なら、あそこ辺りか。
横目で俺の『味方』が現れる、『地点』を予測しておく。
魔法陣完成まで、あと5秒。
弓使いは、mobのヘイトで何も出来ない。
大盾も俺の動きについてこられない。
――ほら魔法使い、お前が頼りだぞ?
魔法陣完成まで。
3秒。目線を『地点』へ。
2秒、『地点』まで駆け込む。
1秒。
0。
魔法使いの杖から、俺がいる『地点』一帯を燃やし尽くそうと炎の波が襲いかかってくる。
それを確認した俺は、出せる力全てを使う勢いで、その『地点』から『味方』のいるであろう場所へと跳びこむ。
俺の後ろから、とてつもなく広範囲の炎が襲ってくるのを見て、思わずニヤける。
――その攻撃は、俺には届かない。
なぜなら。
『青い壁』が、炎を受け止めたからだ。
「ふひ、ざまあみ……え?」
魔法使いは混乱する。
……その訳は。
炎で燃やし尽くした所から、大量のブルースライムが現れたからだろう。
「おいおい、洒落になんねーぞ……」
同じ光景を見た、大盾が嘆く。
そうだな……MMO、いや全てのゲームにおいて、ヘイトというものは、ダメージが大きい方へ向く。
当然、ブルースライムの攻撃対象は。
――ドでかい魔法をぶっ放した、あいつへと変化する。
はは、面白いなあ!
「うわあああ!やばいって!」
「くそ!クロ!俺が出来る限りヘイトを……」
喚く魔法使い、ヘイト集めに必死な大盾。
そうしてる間に、ブルースライムが水鉄砲?の前動作に入っている。
……計画通り。
さて、ここは『味方』に任せて弓使いの方へ行くか。
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