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PK職っていいものですよ?  作者: aaa168(スリーエー)
『ラロック・アイス』編
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昇進・ミッション②

長くなるなんて事はなかった……


次でクエストは終わりになるはず。次こそ長いかも。

「どうすっかな」



とそんな感じで活き込んだのはいいんだよ、うん。

やる気だけじゃ通用しない……それこそそのまま壁をよじ登るなんて出来るわけない。


と、いうわけで。


まず服を脱ぎます。



「ふう」



身軽になった所で、改めて考える。


あの家の壁は断崖絶壁ではなく、掴めるところは所々にある。しかし壁をよじ登るには素手だけじゃ辛いだろう。


見た所屋敷は木造だ、ナイフを使えばいけるだろうか?いや、流石にそれだけじゃきついな。


足、足はどうする……流石にナイフだけじゃ辛い。


摩擦力を上げるのなら、何か粘着性のものがあれば良いんだが……流石にそんな都合よく――




……あったわ。



俺はアイテムボックスから塗布毒を取り出す。


スライムゼリーが凝縮されたベッタベタのそれは、靴に塗れば粘着効果が期待されそう。ちょっと勿体ないけど。


……これで、手筈は整った。



「行くか」


目的の場所まで行こう。


俺は匍匐前進で進んでいく。何があるか分らんからな。



「grrrrrr……」



こわっ。


家の前に、そいつは居た。


大型の厳つい顔をしたお手本のような番犬。



アレに気付かれたらやばいな……


幸い目的の品があるのはこちらから見て家の正面ではなく右。


それでもばれる可能性はある、慎重にいかないとな。



――――――――――



「……ここか」



受け取った地図を見ながら俺は何とかその部屋の下に移動する。


途中ほぼ全裸で動いたせいか匍匐前進でダメージを受けた。痛かったです。まあでもバレないためだ。



ここまでは何事もなく成功、ここからが問題だ。



「さて」



音を立てないように、鞄から必要なものを取り出す。


ナイフ、塗布毒、スタミナエキス。


「……っと」


景気付けに一発入れた後、靴に塗布毒を塗る。微妙にまた残ったな……まあいいや。


いい感じいい感じ。スライムまとめて踏んじゃったらこうなるだろうなって感じ。


そしてナイフ。準備万端。


「やるか」


先ずは、手の届く高さ当たりの壁にナイフを突き刺してみる。


……かってえ。しかし、刺せないことはない。これなら行ける。


ゴールの窓までには5m程度――気合で何とかするさ。



――――――



「っ」



本格的に壁を登り始める。


ナイフを突き立てながら、ゆっくりと確実に壁を這い登っていく。


DEXの恩恵があるのかは分からないが……流石に装備も脱いで、しかもゲームの身体だ、軽い軽い。


足裏の塗布毒も役に立っている。粘着テープが足裏にあるようなもんだ。


音を立てないように、慎重に慎重に……めっちゃ疲れるわこれ。



――――――


10分後ぐらい。


苦しみながら登って行った先に、少し嬉しいポイントを発見。


一階と二階の間ぐらいだろうか、そこには大きな出っ張りが壁から出ていた。


そこの上まで到達した俺は一旦そこで休憩を取る。


休憩と言っても立ったままだけどさ。



「高いな」



俺二人分ぐらいの身長の所まで登ってきた……ちょっと達成感あるね。


登山の楽しさが少し分かった気がするよ。


よーし、後もうちょっと頑張ろう。




――――――――――



「……やった……」



俺は、何とか目的地の窓まで到着。死にそう。


震える手でスタミナエキスを摂取――



「――っ!」


しようとした時。



聞こえる、近付いてくる音が。


間違いない――この窓に何者かが接近して来る。


どうする?逃げるか?どうやって?


――上だ!――




「……あら、気のせいかしら……」




……あっぶねー。


その声は、メイドの姿をした女性だった。確認出来たのは少しの時間だけだったが。


窓を開けて外を確認していた為、もしあの窓付近にいたら一発アウト。



で、どう逃れたといえば……俺は、何とか二階の窓付近から少し上の屋根まで登っていた。


あの動き、まるでゴキ〇リだっただろう、我ながら良い動きだった。



「……さて」



今いる場所が屋根なので、かなりゆっくり出来る。


俺は横になって暖かい日差しを浴びた。気持ちいいー。


……あ、落ちないようにね。


こういうのは焦ったら負けだ。


ゲーム的に言えばこの家は少しの警戒状態に入っているはずだから、時間が過ぎるのをゆっくり待ってよう。




――――――――――




「やっべ」



日光浴が気持ち良すぎて、ついウトウトしてしまった。


そろそろ行かなきゃな。



……窓までの壁登りを第一関門とするなら、その窓からの侵入が第二関門だ。


そもそも部屋に人が居たら駄目だしな。


まあ不安要素は上げたらキリが無い。早速行こう。




「よいしょっと」



ひそりひそりと壁を移動していく。苦も無く窓まで到達。

この移動も慣れたもんだ、本格的に不審者が似合ってきたかもしれない。


中に人が居てもバレないよう、片目だけで覗き込み全体を見渡していく。

どうやら人影は見当たらない。先ほどの女性は何処かへ行ったようだ。



さて。


……ここで、俺の運試しだ。


確率は恐らく低い。そう、『窓の鍵が存在しない、もしくは鍵がかかっていない、かけ忘れ』。


この条件をクリアするのに必要なのは、運のみ。窓ってのは扉のように外側に鍵など存在しない。



つまりピッキングが不可能。いくら頑張ってここまで登ってこようが、侵入できなければ意味がない。



頼むぜ、俺のLUK――!!






――――ガチャ。



「……」



……閉まってる。


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