生産職っていいものですよ? ③
―――――――――――――――――
あれからどれ程の時間が経っただろう。
《『MPポーション(小)』の作製に成功しました!》
《調合スキルを習得しました!》
《『MPポーション(小)』が作製リストに追加されました!》
新しくMPポーションを作製した瞬間、新しいインフォが流れる。
□□□□□□□□□□□□□
≪スキル説明:調合≫
薬師専用スキル。
レベルが上がると、調合が上手くなる。
□□□□□□□□□□□□□
なんだこのざっくりし過ぎた説明は。分かるけどさ。
調合が上手くなる、か……そういえば、作製過程を変える事によって品質はかなり変化した。
混ぜる時間を長くしてみたり、付属のすり鉢でハーブをすりつぶしたり、色の悪い所を取り除いてやったりすれば良くなったな。
しかし時間がかなりかかる。HPポーションの場合だと個人的に質より量だからな。ある程度は短縮してやろう。
試しに3つぐらい一気に作製してみたが、かなり劣化してしまった。やっぱ横着はいけない。
なら、今度は3つ分の材料を丁寧に処理してから鍋にぶち込む。すると劣化はまあまあ抑えられた。
うーん、でもこれだと結局一つ一つ作った方が……
そんなこんな、色々試行錯誤してポーションを作り続けているが、本当に楽しいのだ。
やばい、盗賊から足洗ってポーションの海に飛び込んでしまいそう。
「っと、だめだだめだ。目的を忘れるな」
十分練習は出来ただろう。そろそろ本番だ。
俺はアイテムバッグからパープルハーブ、調合水に空き瓶を取り出す。
調合水も空き瓶ももうちょい。HPポーション作り過ぎたね。
……まあ、追い込んでこそ人は力を発揮できるって言うし?
計画通りである。
あ、スタミナエキス飲んどこ。
「……」
黙って最初は下ごしらえ?だ。ハーブの色の悪い所をナイフで切り落とし、そしてすり鉢でひたすらすりつぶす。
「よし」
クソ丁寧な下ごしらえも済んだ所で、いよいよ煮詰めていく。
慎重に慎重に。溶け出した色を見てみれば、綺麗な紫色だ。毒薬って感じでいいぞ。
……凄く今更だが、毒薬の見本なんて今まで見たことないんだよな。
やばい分からん。まあでも毒だし、濃い方がいいよな……?
ま、まあさっきのポーション位でいいか。
……いいよね?
《毒薬を取得しました!》
《薬師レベルが上がりました!》
《調合レベルが上がりました!》
《毒薬が作製リストに追加されました!》
□□□□□□□□□□
【毒薬】
パープルハーブから調薬した、毒性が低めの毒薬。
この毒薬を摂取した時、その対象は一定時間[状態異常:毒]が付加される。
この毒薬による継続ダメージは、摂取する方法、摂取した量によって変化する。
品質:2
レア度:1
□□□□□□□□□□□□□□
グダグダだったが完成した。
毒々しい紫色が、怪しく光る液体。
ついでに薬師レベルとやらも上がった。
素晴らしい。
「意外と早く出来たな」
俺としては、ここまでで結構躓くと思っていたんだが……思いの他単純に進んで何よりだ。
……しかし。ここからが本番。この毒をどうやってナイフに付加するか。
「どうしたもんかね」
頭を捻ること三秒。
モノは試し、俺はナイフを毒薬の中に突っ込み取り出してみる。
□□□□□□□□□□□□□
【アイアンナイフ】
ATK+20 敏捷値+20 耐久値100 必要敏捷値20
鉄から造られた小刀。
初心者にも扱いやすく、切断、突き、投擲等様々な攻撃に用いる事が出来る。
品質:1
レアリティ:2
□□□□□□□□□□□□
……はいはい何も変わらない。
やはりこのままでは駄目か。
次!
「……」
鍋に毒薬を戻し、沸かす。
その中にナイフを投入。
ナイフの中に毒が浸透する(気がする)まで煮込めば出来上がり。
□□□□□□□□□□□□□
【アイアンナイフ】
ATK+20 敏捷値+20 耐久値80 必要敏捷値20
鉄から造られた小刀。
初心者にも扱いやすく、切断、突き、投擲等様々な攻撃に用いる事が出来る。
品質:1
レアリティ:2
□□□□□□□□□□□□
耐久値下がっただけじゃねーか!ドンガラガッシャーン!
「まあ……そりゃそうだよな」
毒薬を空き瓶に戻しながら呟く。
もう、勿体ないとか言っていられん。
〈『スタミナエキス』『グリーンハーブ』『スライムゼリー(大)』〉
今俺の持っている素材アイテムである。
種類が少ないって?まあ確かに。今思えば始まりの草原のモンスターは金とスタミナエキスぐらいしか落とさなかった。
これからのマップから、本格的に素材アイテムが落ちるようになるのだろう。
……うん、この中で選ぶのは当然『スライムゼリー』だ。
なんか毒がペースト状になりそう。
それをナイフに塗る感じで。イメージ状では完璧だな。イメージでは。
「よし」
売らないで取っておいてよかった、出番だぞスライムゼリーよ。
見た目は完全にスライムのあのぷよぷよした身体を構成しているモノだ。
それを鍋にざっぱーん!豪快に行こうぜ。
「……」
煮沸していくと、ゼリーが形を崩しながら液状になっていく。
よしよし、この中に毒薬をドボンだ。
「おお」
鍋の中で紫色が溶ける。
まるで毒がゼリーに吸収されていくようだ。
思ったより上手く行きそう。
□□□□□□□□□□
【毒薬】
パープルハーブから調薬した、毒性が低めのゼリー状の毒薬。
この薬を摂取した時、その対象は一定時間[状態異常:毒]が付加される。
この毒薬による継続ダメージは、摂取する方法、摂取した量によって変化する。
品質:2
レア度:1
□□□□□□□□□□□□□□
結構な量のスライムゼリーだったが、煮込むことで量は減り……丁度空き瓶に入るぐらいの量になった。
「……完璧だ」
ゼリー状の毒薬は、見た目はかなりヤバい。中身もだけどな!
そして、俺はその液体の中にナイフを突っ込み取り出してみる。
□□□□□□□□□□□□□
【アイアンナイフ】
ATK+20 敏捷値+20 耐久値100 必要敏捷値20
鉄から造られた小刀。
初心者にも扱いやすく、切断、突き、投擲等様々な攻撃に用いる事が出来る。
品質:2
レアリティ:1
□□□□□□□□□□□□
「……マジか」
見た感じでは、ナイフに紫の毒が付着しているのだが。
何だ、何が足りない?
「はあ」
正直イケると思っておりました。
時間はもう0時。スライムゼリーも使ってしまった。
――諦めるか?
……いいや、まだだ。
一つだけ、試したい事がある。
「行くか」
まずは、失った材料の再確保から。
―――――――――――――
「……はあ、はあ……」
エリアボスを倒し、宝箱を開ける。
《スライムゼリー(大)を取得しました!》
……良かった、まあ確定なのかな?
使ってしまったスライムゼリー、取得。
―――――――――――
《パープルハーブ×10を購入しました!》
次に、十個のパープルハーブ。
価格は10000azl。ぼったくり……いやなんでもない。
いいんだ、時間を金で買ったと考えれば。
……今、スライムゼリーも買えよって思っただろう。
スライムゼリーの相場は3万。買うか!
――――――――――――――
《調合水×10を購入しました!》
《空き瓶×10を購入しました!》
最後の材料を購入。
……俺がやりたい事は、物凄く単純な事だ。
スライムゼリーに毒を溶かす、それは全く同じ。
その溶かす量をひたすらに増やす、それだけ。
新しい材料、加工方法を探すのは手がかかり過ぎる、なら量を弄るしかないね。
スライムゼリーに毒を溶かしたあの時、もっと毒が入っていくような気がしたんだ。
まあもしそこで毒薬一個だけしか溶けないなら即終了。
頑張りましょう。
――――――――――――――
「……終わった」
まずは下準備だ。
使うかは分からないが纏めてやった方が早い……俺はパープルハーブ十個を調製した。
丁寧に丁寧に。時間が過ぎて行くのが怖いから時計は見ていない。
「誰もいねえ……」
今何時かも分からない。だがかなり遅い時間なんだろう。
……誰もいないし、いいよね。時間短縮だ。
―――――――――
「最後の着火!と……まあなんか問題あったらNPCが言ってくるだろ」
俺が歩いている周りの作業台十個。
それらは今、紫色の液体が調製されていっている。
加熱のタイミングを合わせ、全てが同じ品質になるよう採取出来る用にしておく。
一々一つの鍋で毒薬を作るのは効率的ではない。だから空いている作業台を大量に使わせて貰った。
ちょっと忙しいが、まあ出来ない事はないさ。
……よし、何も言ってこないならいいんだろ。
「っ、そろそろだな」
手際良く、出来た毒薬を採取していく。
《毒薬(小)を取得しました!》
《毒薬(小)を取得しました!》
《毒薬(小)を取得しました!》
《毒薬(小)を取得しました!》
《毒薬(小)を取得しました!》
《毒薬(小)を取得しました!》
《毒薬(小)を取得しました!》
《毒薬(小)を取得しました!》
《毒薬(小)を取得しました!》
《毒薬(小)を取得しました!》
《調薬スキルのレベルが上がりました!》
「よーし」
品質を確認したがどれも同じだ、いい感じ。
ここからが本番だ。
まずスライムゼリーを溶かして……一つ目の毒薬を投入。
焦らない焦らない、しっかり溶けた事を確認し俺は二つ目の毒薬を投入した。
「おっ」
少しひやひやしたが、しっかり溶けている。
希望が見えてきたな。
――――――――――――――――――――
「……まだ溶けるのか」
もう、毒薬は九つ目となっている。
流石スライムの素材と言った所。滅茶苦茶溶かすな。……毒性消えてないよね。
ただ流石に溶けにくくなってきた。次で最後だろう。
「ふー」
調薬作業も疲れるもんだ、しかしこれで今日は最後。
俺は最後の毒薬十本目を投入した。
―――――――――――――――――――――――
《塗布毒を取得しました!》
《薬師スキルのレベルが上がりました!》
《調毒スキルを取得しました!》
□□□□□□□□□□
【塗布毒】
パープルハーブから調薬した、毒性の低い毒薬。
粘度、濃度共にかなり高く、矢や武器に塗布し利用する事で、対象に属性[毒]を付与出来る。
残量:100%
品質:2
レア度:2
□□□□□□□□□□□□□□
オドロオドロしい、黒紫の液体。
……俺はそれに、ナイフを突っ込む。
□□□□□□□□□□□□□
【毒のアイアンナイフ】
ATK+20 敏捷値+20 属性[毒] 耐久値100 必要敏捷値20
属性[毒]付与品。
鉄から造られた小刀。
初心者にも扱いやすく、切断、突き、投擲等様々な攻撃に用いる事が出来る。
攻撃成功時、一定確率で攻撃した対象に[状態異常:毒]を付与する。
品質:2
レアリティ:2
□□□□□□□□□□□□
……やったあ。
まあ毒薬の説明文から失敗する事はないと思ってたがね。
そして、毒薬を見れば残量が7割となっていた。もう三回付与できるドン!
「やべ」
時計を見ると、もう朝の三時だった。
こんな時間までゲームしたのいつぶりだっての。
「……寝るか」
この毒の試し狩りは明日。
久々にゲームにのめり込んでしまった、さっさと落ちよう。
あー楽しかった。
―――――――――――――
何かを作るのに、これだけ集中するのは凄く充実した時間だった。
時間泥棒なのは仕方が無いとして、さ。
……生産職って、良いものですね?




