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空想彼女~研究者の一生と儚い恋は全て夢~

作者: 魔茶鷹

「おい、経は結婚しないのか?」

隣にいる親友の陽翔がそう聞いてきた。

表情を崩さず経は、

「心に決めた彼女がいるので特に他の人と結婚はする予定はないな。」

と答えた。

 そのあとに続いて会場にいる人たちに呼び掛けた

「まあ、今日は私のためにパーティーに来ていただき、ありがとうございます。食事もたくさんありますので楽しんでください。」

と、言葉を紡いだ。

 そう、今ここで彼のパーティーをしている。なぜ行われたのかというと、彼が世界的学位でもある「最良科学アイデア賞」(通称、S.G.I.)に選ばれたからである。彼の国では、受賞者が少なくかなり大々的に放送される。

 それでも参加者がそれほどいないのは、授賞式もお偉方のパーティーも終わっていて親しい友人などしか招かないパーティーであるからだ。


 そして彼が陽翔からそう尋ねられるも無理はない。何故なら彼は甘いマスクで奇抜な発想で科学の進歩に貢献しているだけでなく大半の貯金は研究と自分の運営している障害者基金に充てている。しっかりと毎年査定を自ら行っているため基金に不正が行われたことは一度もない。また、性格に難があるのかというとそうでいうわけでもない。珠に、独り言が激しいときがあると噂されているが、友好関係では生まれてこのかた嫌われたことは一桁程度しかないといわれている。


 そんな彼ー経ーにも実は秘密があった。


 彼の幼少期のことである。いつも通り友人と遊んでいたがその日は何故か誰一人彼を相手してくれなかった。その時に彼は無意識的に現実逃避するために頭のなかで彼女を創った。彼女とおままごとをすることによって気を紛らわし凌いだ。時々、そんなことをしていたらあるとき彼女の台詞を考えなくても彼女が話し始めたのである。もちろん、彼の空想の世界であるため誰にも見えてはいないし、証明もできないが。。。

 また、彼は自分が空想によって彼女を創りだしていることを理解していたため、人前では絶対に空想の世界に旅立つことはなかった。空想の弊害でかなり親密に付き合う友達はかなり少なく影か薄い存在であったのはあまり知られていない。


 少年期に入ると、友達もでき空想をしていたこと自体も忘れていたが、青年期に入る頃に大恋愛の末失恋を体験する。生きる気力もなくなり自堕落な生活を続けていたのだが、また例の「彼女」が現れた。いや、正確に言うと彼の前に現れただけで他の人には全く見えていないが。


 最初はただただ黙って近くで一緒にいたが、彼が落ち着いてくると彼女はやさしいトーンで色々な話をしてくれた。たわいもない話から当時行われていた科学実験の話などなどたくさんの話を彼はたたただ聞いた聞き続けた。


 科学の話を聞いていく内に元気が出てきて自堕落な生活にも遂に終止符を打った。失恋前の生活に戻りはじめたある時、彼女が姿をくらませた。そう、なんの書き置きも残さずに。


 もちろん、ここで空想なのだからおかしいだろうと突っ込みが来るだろう。しかし、この表現間違いない。何故なら彼女をいくら空想によって存在させようと経が、頑張っても彼女をその場にいるように振る舞えなかったし見ることが出来なかった。

 ただ、経もそんなのでへこんではいられなかったなぜなら過去に彼女が一回だけ口を滑りかけて言いそうになっていたことを覚えていたからだ。


それは、

「世界一をとって私にあい。。。」


 この先は誤魔化されたけど会いに来てということだろうと簡単に推測はつく。全く意味がわからないし、まずどうすればいいか分からなかった。ただただ悩んでいた彼だがある日コンビニに買い物に行ったときあるポスターを見つける。

そう、『S.G.I.』である標語にはしっかりと世界を取りに行こうとも。理解できなかったが、なぜかやらねばならない気がした。。


まだ何も知らない無いのに。。。


 それからの彼はただただひたすらに勉学と研究に勤しんだ。絶対に彼女に会うという思いを強く……しかし、奥深くに仕舞いこんで。。



そして遂に7年後の32歳の時に賞に選ばれたのである。



 それからも研究に人生を捧げ人類の進歩に役立った。より世界が平和になるように悪用できないように対策をしながら。



 そして、65年後に彼は独身のままたくさんの研究者に見守られ老衰した。


 母国でもメディアは連日取り上げるほどの惜しまれる人材であった。



葬儀は、国葬であった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「待たせたな。」


彼はようやく会えた。そう、ようやくである。


長い間、いとおしく狂うほどに想った「彼女」に。



 今までの努力が報われ正当に評価され、無事に第2の世界へと航海に出るのである。


 彼女と共にまだ見ぬ地平線を夢見ながら。

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