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悪徳領主ルドルフの華麗なる日常  作者: 増田匠見(旧master1415)


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とある落ちこぼれの華麗なる活躍 ~修行編その二~

楽しくなり過ぎて、またもや分割w

仕方ないね……

 あれからココナッツをたっぷりと絞った後、パン料理長は俺達を見渡して声を張り上げた。


「良い機会だから良く覚えておけ!今この場にいるお前らは、大きく二つに分ける事が出来る。一つは、自分から志願して兵隊なんぞになりたがるフルーツ(甘ったれ)共で、もう一つは自分の居場所を見つけられずにここに放り込まれた屑野菜(はみ出し者)だ。どいつもこいつも店先に並べられないようなロクデナシばかりだが、俺がみんな纏めて食卓に上げてやる!安心しろ、例外はない。好き嫌いに関係なくフルーツ(甘ったれ)屑野菜(はみ出し者)も等しく皿の上だ!!そんなお前らに、まず最初の下拵えをしてやる。これから、俺の言葉に答える時は簡潔に『はい(イエス)』か『いいえ(ノー)』で答え、話し掛けられた時以外は口を開くな、分かったか!?』


「「「はい、料理長(イエス・シェフ)!」」」


 パン料理長は「うむ」と満足そうに頷き、再び俺達の間を歩き始める。


「さあ、自己紹介を続けよう。次はお前だ、前へ出ろ!」


 そう言われ、まな板の上に乗せられるかのような表情で、一歩前に出る男。

 ……うん、お前の気持ちは良く分かるぞ。


「名前は何だ、言ってみろ!」


 男は、もうどうにでもなれといった感じで、やけくそ気味に答えていく。


「はい、ベンジャミンです!」


「その口から汚い(よだれ)を垂らす時には、最後に『料理長(シェフ)』を付けろと言ったのを、もう忘れたのか!?やり直せ!!」


「はい、ベンジャミンです料理長(シェフ)!」


「そんな馬鹿な名前があるか!!ついさっき俺が言った言葉も覚えていないような奴が、自分の名前を覚えている訳がないだろう。中身の無いお前にはおばけカボチャ(カラッポ頭)がお似合いだ。もう一度、名乗り直せ!!」


「はい、私はおばけカボチャ(カラッポ頭)です料理長(シェフ)!!」


「よろしい!では、列に戻ってその空っぽの頭に、他の仲間の顔と名前を刻み込んでおけ!!」


はい、料理長(イエス・シェフ)!」


 ベンジャミン――もといお化けカボチャ(カラッポ頭)は必死に声を張り上げた後、ようやく列へと戻っていった。


 パン料理長の理不尽とも言うべき罵倒の連続。

 これから始まる()()()()のハードルの高さを理解し、暑苦しい野郎共の顔に冷たい汗が流れる。


 ……ってか、絵ヅラがヤベエ。


 雁首そろえて、緊張に顔を強張らせる野郎共。

 それに対し、腕を後ろで組んで精一杯胸を張るパン料理長。

 キリリと引き締まったその端麗な顔は幼く、どう見ても子供が無理して頑張っているようにしか見えないし、頭の上でひょこひょこと動く可愛らしい兎の耳が、それに余計な拍車を掛けている。

 おまけに、誂えたかのような半袖短パン。

 子供サイズの教官服はどう考えても赤兎族専用で、その美麗な顔立ちに合わせたとしか考えられないデザインをしている。


 一体誰だ、赤兎族(ショタ)にこんなもんを着せようと考えたクソッたれは!

 頭が()()()虫でも湧いてんじゃねえのか!?


「次はお前だ、前へ出ろ」


 俺の思考を余所に、パン料理長は次の犠牲者を指名する。

 険しい表情をしつつも、堂々と胸を張って一歩前に出る男。


「何故お前は、この新兵訓練(ブートキャンプ)に志願した!?」


「この地にいる妻と子供を、この手で守りたいと思ったからであります、料理長(シェフ)!」


 ……けっ、気取りやがって。

 あの野郎、嫁さんがいて、その上ファーゼストの兵という肩書まで手に入れて、完全に勝ち組じゃねえか。

 クソッ喰らえ!てめえなんか、クソッ喰らいやがれ!!


「なんだ、お前はそんな不揃いな(ツラ)をしている癖に、妻と子供がいるのか!?」


はい、料理長(イエス・シェフ)!」


「生意気なヤツめ!だが、今頃お前の妻と子供はその汚い面を見ずに済んで、泣いて喜んでいるだろうさ!それじゃああまりにも可哀想だから、お前にはスライスオニオン(涙が出るほどブサイク)と名乗る事を許可する!嬉しいか!?」


「……は、はい、料理長(イ、イエス・シェフ)!」


「じゃあ、皆に自己紹介をしろ。お前の名前は何だ!?」


スライスオニオン(涙が出るほどブサイク)です、料理長(シェフ)!」


「声が小さい!お前がどんな奴なのか、ここにいる全員がはっきり聞こえるように!!」


スライスオニオン(涙が出るほどブサイク)です、料理長(シェフ)!」


「何だ、そのネギ坊主みたいな声は!()剥かれて刻まれたいのか!?」


「私はスライスオニオン(涙が出るほどブサイク)です、料理長(シェフ)!!」


「もう一回!!」


「私はスライスオニオン(涙が出るほどブサイク)です、料理長(シェフ)!!」


「よろしい、では下がれ!」


はい、料理長(イエス・シェフ)!」


 散々叫ばされた後、スライスオニオン(涙が出るほどブサイク)はようやく列に戻る事を許された。 

 ……うん、さっきはちょっと言い過ぎた、許してくれ。


「次はお前だ、前へ出ろ!!」


 そうして次に呼ばれたのは、頭に立派な角を生やした巨漢。

 デクほどではないが、その大きな体躯はこの集団の中でも異彩を放っており、全身に分厚い筋肉を纏った姿は圧巻の一言。

 見る物を圧倒するほどの質量が、ズシンと音を立てて前に進み出る。


「頭から偉そうなもん()やして、お前は何様のつもりだ!?」


「はい、()の獣人です、料理長(シェフ)!」


「馬鹿みたいにでかい図体しやがって、そんなになるまで一体何を食って育った?ステーキ(牛肉)か!?」


いいえ、料理長(ノ―・シェフ)!私は菜食主義者(ベジタリアン)です!!」


()()()の前で、堂々と好き嫌いを口にするとはいい度胸だ。そんなに草が食いたいなら食わせてやる。腕立て伏せ用意!!」


はい、料理長(イエス・シェフ)!」


 きびきびとした動作で地に伏せ、腕立て伏せの構えを取る牛の獣人。

 そして、その背中の上にパン料理長が無言で飛び乗った。

 ……子供が父親とお馬さんごっこしているようにしか見えないのは、きっと気のせいではないはず。


「では始め!いーち……!!」


 掛け声と共に、パン料理長の身体がゆっくりと沈む。

 屈強な牛の獣人にとっては、子供一人分の体重など誤差でしかないはずだが、丸太のような腕は曲がった状態のまま、ピクリとも動かなくなってしまった。


「どうした?そんな(なり)して、腕立て伏せも碌に出来ないのか!?たったの一回くらい、そこらのマンゴー(お嬢)ちゃんにだってできるぞ!それでもお前は男か!?ナッツ見せろ、ナッツを!!」


 牛の獣人は息を荒げて力を込めるが、どれだけやっても一向に身体が持ち上がらない。


「その太っとい両腕は飾りか、このカイワレ大根(ヒョロヒョロ野郎)が!もう良い、さっさと名前を言って列に戻れ!!」


「ぜぇ、ぜぇ……ミ、ミノスです料理長(シェフ)


「バカ野郎!お前のような軟弱者はカイワレ大根(ヒョロヒョロ野郎)で十分だ!!今すぐ訂正しろ!!」


「は、はい!私はカイワレ大根(ヒョロヒョロ野郎)です、料理長(シェフ)


「はあ、何だって!?」


カイワレ大根(ヒョロヒョロ野郎)です、料理長(シェフ)!!」


「よろしい!列に戻って、光合成でもしていろ!!」


はい、料理長(イエス・シェフ)!」


 そう返事をして列に戻るカイワレ大根(ヒョロヒョロ野郎)だったが、列に戻った後も、首を傾げてどこか釈然としないものを抱えていた。


 ……ありゃ、電気系の魔術だな。

 たぶん、筋肉か神経に微弱な電気を流して、カイワレ大根(ヒョロヒョロ野郎)の力をコントロールしていたんだろう。

 成る程な、あんな使い方もあるのか。

 あの使い方なら俺にも真似出来そうだし、今度練習してみるか。


 先程のやり取りを目を凝らして見ていたら、パン料理長が微弱ながら魔術を行使している気配が感じられたので、俺はそこっそりとそのアイディアをパクる事にした。


「では、次はお前だ、前へ出ろ!!」


 パン料理長が次の犠牲者を呼ぶ。

 すると、一人の男が生唾を飲み下し、悲壮な覚悟をにじませつつ一歩前に出た。

 今度は、育ちの良さそうな感じの、ちょっと線が細い涼しげな優男だ。


「お前の出身地はどこだ!?」


「モ、モロー伯爵領です料理長(シェフ)


「モロー伯爵領の名物は、善良な農夫に育てられた上質な小麦と、暴利を貪る貪欲な役人(ブタ)だそうだな!?白くて生っちょろい体は、どう見ても麦わら小僧には見えないから、お前は薄汚いブタだな!!」


い、いいえ、料理長(ノ、ノ―・シェフ)!わ、私の家は違います!!」


「親ブタが子ブタに都合の悪い所を見せる訳ないだろう!お前も散々甘い汁を吸ってきたに違いない!!」


いいえ、料理長(ノ―・シェフ)!私の両親は尊敬できる人間です!!」


「それなら、何故お前はこんな所にいる!その尊敬する両親に放り込まれたからだろう!?」


いいえ、料理長(ノ―・シェフ)!兄が四人もいたので、私は自ら家を出たのであります!!」


「それでも、こんな辺境くんだりまで来る必要はなかったはずだ!地元でお前が就ける仕事がなかったから、両親の伝手を辿ってここに来たんだろう!?」


いいえ、料理長(ノ―・シェフ)!」


「嘘を吐くな!こっちはお前の両親から直々に頼まれているんだ。その女々しい根性を叩き直してやるから覚悟しておけ!!」


は、はい、料理長(イ、イエス・シェフ)!」


「だったら答えろ、お前の名前は何だ!?」


「ジェラルド=ブラウンです、料理長シェフ!」


「それはお前の両親が付けてくれた名前だろう!お前にそれを名乗る資格があると思うな!!」


はい、料理長(イエス・シェフ)!」


「根性も能力も無いお前に、俺がピッタリの名前をくれてやる。今日からお前は完熟バナナ(ふにゃふにゃで種無し)だ!勝手に黒くなったら、刻んで潰してケーキにしてやるから、そのつもりでいるように!!」


はい、料理長(イエス・シェフ)!」


「では改めて聞く、お前の名前は何だ!?」


完熟バナナ(ふにゃふにゃで種無し)です料理長シェフ!」


「もっと声を出せ!()()()()()()()のか!!」


完熟バナナ(ふにゃふにゃで種無し)です、料理長(シェフ)!」


()でもくっ付いているのか!?食って欲しければ、()()()()!!」


「はい!私は完熟バナナ(ふにゃふにゃで種無し)です料理長シェフ!!」


「よろしい、列に戻れ!」


はい、料理長(イエス・シェフ)!」


 大声で返事をして列に戻る完熟バナナ(ふにゃふにゃで種無し)


 ……名字持ちって事は、あの完熟バナナ(ふにゃふにゃで種無し)貴族だろ?

 いくら五男だからって、貴族の一員をバナナ扱いするってどうなんだ?

 まあ、さっきのやり取りで、貴族としての名前が無意味である事は分かったが……まっ、偉そうにしなけりゃ何でもいいか。


 そう考えをまとめていると、パン料理長が段々とこちらに近付いてくる。


「では次はお前だ、前へ出ろ!」


 ――そして、とうとうデクの番がやってきてしまった。


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え〜、このアホ作者、本編の更新もきちんとできないのに、またもやアホみたいな新作を始めました。


『もえろ、毒者たん!』

というタイトルなのですが、何をトチ狂ったのか、読者から寄せられたネタに応じて続きを書いていくという、無謀なスタイルを取った作品となっています。


完全な見切り発車の作品ではありますが、こちらも覗いて頂ければ幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n0997fb/

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