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悪徳領主ルドルフの華麗なる日常 作者:増田 匠見(旧master1415)
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悪徳領主の商品

ブックマークの増加に舞い上がり、休みを一日潰して連続投稿(*´∀`)♪

相変わらずの、ルドルフの悪徳っぷりをお楽しみ下さい。
 夕暮れ時、私は家令のヨーゼフに案内され、蝋燭に照らされた薄暗い廊下を進み、一つの扉の前までやって来た。
 ここは私の屋敷の応接室。
 いくつかあるそれらの中でも、貴人に対応するために造られた最上級の部屋だ。
 そして今、この扉の先にはこの部屋で迎えるにふさわしい人物が待ち受けている。

 コンコンコン
 ヨーゼフがノックをして静かに扉を開ける。
 それを待ってから、私は部屋の中へと足を踏み入れた。
 魔道具の明かりによって照らされた部屋の中はまるで昼間のようで、中にいた二人の人物の顔もはっきりと見える。

 私は二人の前まで進むと優雅に一礼をする。

「お待たせ致しました。お久しぶりですジョシュア閣下、ご健勝でなによりです」

 そう言って顔を上げると、皺が深く刻まれた顔が目に入る。
 この人こそが王国の政治を一手に引き受ける宰相、ジョシュア=カンパク=トヨトミである。
 長く伸ばした髪と髭は白く、老人と言っていい程の年齢だというのに、その身から感じられる迫力はそこらの比ではない。
 老いて益々盛んとはこの事か。

「ルド坊も立派になって、見違えるようじゃ。いや、今は名実ともにファーゼスト領の領主、もうルド坊ではなくファーゼスト辺境伯と呼ばねばならぬな……」

「閣下にそのようにおっしゃって頂き、大変光栄です」

「くくく、堅苦しいのは昔から変わらんか。……はぁ、昔はあんなに可愛かったのにどうしてこんな風に育ってしまったことやら……」

「か、閣下その話は…………その、それよりそろそろ、そちらの方をご紹介頂けませんか?」

 ややあからさまにではあるが話題を変える。
 やはり幼少の頃を知られているからか、この人は苦手だ。


「おお、そうじゃった。今日はお主に紹介したい人物がいての。こちらはシュピーゲル家の次男でライアンと申す」

 そう言ってジョシュア閣下が、隣の男を紹介する。
 年の頃は私と同じぐらいか少し上ぐらいだろうか。
 短く刈りあげられた髪に鍛えられた身体をし、彫の深い顔と相まって非常に男らしい。

「ご紹介に預かりましたシュピーゲル家の次男、ライアンと申します。この度は、名高いファーゼスト辺境伯にお会いでき大変光栄に存じます」

「ほう、武勇の誉れ高いシュピーゲル家の者にそう言って貰えるとは、私も鼻が高い。ルドルフ=ファーゼストと申します、以後よしなに」

 ライアン殿の礼に対し、私も礼をもって返す。

 シュピーゲル家と言えば、ファーゼスト領同様に魔の領域に隣接した領地を治める家で、魔物たちとの闘争が日常であるため、武名が王国中に轟いている名家だ。
 そんな名家の次男が、わざわざジョシュア閣下の仲介を経てまで、ファーゼスト家に一体どのような用であろうか……

「さてルド坊……じゃなかったの……ごほん、ファーゼスト辺境伯。まだ内々の話ではあるが、今度新しい貴族の家が興るのを知っておるか?」

「いえ、存じ上げません」

「正確には、新興というわけではなく、一つの家からもう一つの家が独立し、新たな家名を賜ると言うだけの話なのじゃが」

「それでも、貴族の家が興るという事はそういうこと(・・・・・・)なのでしょう。大変喜ばしい。閣下、心よりお祝い申し上げます」

 王国に限らず、人類の生存圏はそこまで広大というわけではない。
 何千、何万年もの昔、神々や神秘の類がまだ身近に存在した神代の時代に、神と魔との争いが起こった。
 その結果、大地は人の住める地と魔の力が色濃く残った魔の領域とに分かれてしまったのだ。
 そして、貴族家が新興するということは、魔の領域を切り開き、新しくできた領地を治める家が出来たということに他ならない。

 なるほど、辺境のシュピーゲル家の次男がここに来ており、そこに、先程のジョシュア閣下の言葉を合わせて考えるならば、つまり……

「つまり、ライアン殿が……」

「はい、伯のご推察通りです。建国の英雄の一人から名を頂き、スズキの姓を名乗ることを許されました」

「ライアン殿、スズキ家の誕生を改めてお祝い申し上げます」

「ははは、ルドルフ殿からそう言われると、こそばゆいですな」

 同じ辺境に住む者として、魔の領域を切り開く事が如何に困難かは分かるつもりだ。
 それを成し遂げたシュピーゲル家は尊敬に値するし、それを引き継ぐこの男も相当な器量の持ち主なのだろう。
 ……なるほど、ジョシュア閣下がライアン殿を私に紹介をした理由が分かった。

「閣下。つまり閣下は新興のスズキ家の力添えを私にして欲しいと、そういうことですね」

「うむ、そういうことじゃ」

 魔の領域の開拓の支援なんぞ大して金になるものではないが、閣下とシュピーゲル家に貸しが出来るのは大きい。
 開拓そのものは、人類全体の悲願でもあるし、私自身が血と汗を流すのはごめんだが、他人がやってくれるというのならば、支援者として金を出すぐらいやぶさかではない。

「では閣下、ご入用は如何ほどで?」

「ほほほ、本日は金の無心に来たのではないよ」

「というと?」

「坊の所の商品・・に用があってのう」

「閣下、ここからは私が……」

 そう言ってライアンが説明を引き継ぐ。

 その内容を要約すると……
 シュピーゲル家からの支援もあるので、ある程度の下地はあるのだが食料品や資材を始め、様々な物が足りない。
 なので足りない物や、人脈の支援をしてもらいたいとの事だ。

 なるほど、確かにこれはウチで扱っている商品・・だ。

「ライアン殿、この度の話、快くお受け致しましょう」

「おお、引き受けて頂けるか。ルドルフ殿、感謝致しますぞ」

 そう言って、お互いの手を固く握り交わした。

「それでは、さっそくライアン殿には商品を見定めて頂きましょうか……ヨーゼフ」

 それだけで用件を察した我が家の家令は、一礼して静かに部屋を出ていく。

「……は?この場で確認?ルドルフ殿一体それはどういう…………」

 ん?ライアン殿がどこか困惑しているような気がするが気のせいか?
 疑問はとりあえず置いておき、多少の時間を潰していると、やがてノックの音が聞こえてくる。

「お待たせ致しました」

 そう言ってヨーゼフが商品・・を伴って部屋にやってきた。
 ……そして、それを見たライアン殿は絶句する。

「…………ルドルフ殿?これは一体?どういうおつもりで?」

「何をおっしゃっているのかいまいち分かりませんが、ご希望の商品ですよ?」

 部屋にはヨーゼフの他に、見目麗しい三人の若いメイド・・・・・・・・の姿があった。

「………………」

 しばしの沈黙が応接室を支配する。

 ふむ、やはりライアン殿とどこか行き違いがあったようだ。
 食料品や資材に関しては、荒地ばかりのファーゼスト領に望むべくもない。
 ならば、人以外に何を提供できるというのだろうか?
 そもそも開拓したとはいえ、魔の領域に隣接した土地なんぞ危険過ぎて、しばらくはまともに開墾なんぞできないだろう。
 魔物に対処する必要があるため、必然的に男所帯となるし、荒れくれ者も多くなる。
 男が多く、更に荒れくれ者ばかりとなれば、当然必要になってくるものがある。
 そんな彼らの世話・・をする人間だ。
 …………つまりはそういう事だ。

「占めて金貨九百枚……と言いたい所ですが、閣下のご紹介でもありますし、これから難事に立ち向かうライアン殿の顔を立て六百枚で如何でしょう?」

「な!?……ルドルフ殿、こう言っては何だが、本気で言っているのか!?」

「本気も何も初めから商品・・と申しているではありませんか?何ならどうです、ライアン殿の世話も任せてみては。」

 そう言うと、ライアン殿はメイドの一人に思わず視線を向けてしまう。

 二コリ

 視線の合ったメイドに微笑まれ、顔を真っ赤にしている。
 クックックッ。この男、意外とうぶのようだ。

「ほっほっほっ、ライアン殿も気に入られたようで何よりですな。どれ、支払いは私が持つとしよう。なに、これから困難に立ち向かう若者への祝儀じゃて、気にするでない」

 今まで静かに場を見守っていたジョシュア閣下がそう締めくくる。
 ライアン殿も、流石に王国の宰相の言葉は聞き入れざるをえないのか、素直にうなずいた。

 商談成立である。

 私は大金を得て、宰相はスズキ家へ恩を売り、ライアン殿は得難い人材を得る。
 誰もが得をするまさにWin-Winの契約だ。

 もっとも、いくらでも生えてくる領民が元手で、それで金貨六百枚もの儲けだ。
 クックックッ、こんなぼろい商売は他にない。
 全く、笑いが止まらない。


「フフフフフ、フハハハハハハ」

「ほっほっほっ」

「…………」


 三者三様の思惑を胸に、夜は更けていった。


















 なお、王国にて人身売買は基本的に禁止されている。

―王国法第9法―
神は人の上に人を造らず、人の下にも人を人を造らず。
人が人を売り買いする事は、神の御意志に反する事也。
よって、他者の人生を売買する事をここに固く禁ず。
―――以下略―――
〈王国奴隷制度のガイドラインより抜粋〉


 しかし貴族に非ずんば、人に非ず。
 平民は人ではないので売っても問題無いのだ。
 ……クックックッ、フハハハハ、アーハッハッハッハ!
※コメディです、安心して下さい。
+注意+
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