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「中ボス部屋!? 上位ダンジョンかよくそっ」

 

 悪態をつきながら降りてくる蜘蛛に向かって剣を構える。

 とにかく、こいつをどうにかしなくてはこの部屋から出ることができない。

 

「フィジカル……ぐっ!」

 

 スキルを使おうとした俺の行動を察したのか、蜘蛛が粘着性の糸を吐いて邪魔をしてくる。

 天井から放射状に放たれたそれを避けることができず、体が糸にとらわれ動きを封じられてしまった。

 

「これまずいぞ……」

 

 逃げようともがくほど体に糸が絡まって動けなくなっていく。

 糸は強固で、身体強化スキルを使っても引きちぎることができない。

  

「考えろ、これはゲームだ。打開策は必ずあるはず……!」

 

 そうしている間にも、捕らえた獲物を捕食しようと蜘蛛は地面へ近づいてきている。

 死んでも街に送り返されるだけとはいえ、こんな不気味な蜘蛛に食われるのは勘弁してもらいたい。

 

 「村内君、防御スキルもってる!?」

 

 必死に思考を巡らせる俺に、雨森が声をかけてくる。

 近接戦闘特化の俺は回避スキルは取っていても防御スキルは一つも取ってい内ため首を横に振った。

 

「そっか、じゃあなるべく手加減するから、死なないでね?」

 

 雨森が何か物騒な事を言い始める。

 と、ついに蜘蛛が地面に降りてきて俺の目の前に立ちはだかった。

 

「なんでもいい、何か策があるならやってみてくれ!」

  

 始めたばかりの雨森にこの状況で何かできるとは思えないが、今の俺は打開策が思い浮かばない。

 覚悟を決めてそう言うと、雨森はいつのまにか取り出した杖を俺に向けて構えた。

 

「ヒートストーム」

「ぐえっ!?」

 

 雨森から放たれた魔法スキルは、蜘蛛の糸にぐるぐる巻きにされた俺を吹き飛ばし壁に叩きつけた。

 熱を伴った暴風に晒され、粘着性を失った糸は解けて俺の体から離れていく。

 

「よ、容赦ねぇ……」

 

 雨森の魔法スキルが直撃した俺は自分の体力表示をみて思わずひきつる。

 あと少しで雨森に殺されるところだった。

 

「よし、無事だね!? 動けるようになったのなら戦ってくれると嬉しいな!」

 

 邪魔された事で標的を雨森にうつした蜘蛛に追いかけられながら、雨森はそんな悲痛な声をあげる。

 

「瀕死だけどね俺! ちょっと待ってて」

 

 強化スキルを重ねがけし、雨森を追いかけ回す蜘蛛を後ろから切りつける。

中ボスなだけあって、そんなに耐久力があるわけではなさそうだ。

 

「あの糸さえ気をつければ、倒せない敵じゃないか」

 

 だが蜘蛛も馬鹿ではないようで、もう一度近づこうとするとその巨体を思いっきり回転させ俺の事を弾き飛ばす。

 

「ぐっ……」

 

 剣で直撃は防ぐが、ただでさえ削られた俺の体力ではそうなんどもあの攻撃を受けられない。

 

「村内君、無茶はしないであれの注意を引きつけておいて」

 

 蜘蛛の攻撃が緩み詠唱を始める隙ができた雨森が、杖を構えてそう口にした。

 

「わかった、攻撃は任せる」

 

 さすがに俺もどうしてこういう状況になっているかは、さっきの雨森の行動で理解した。

 雨森は、俺と同じくらいの戦闘力をもっているくせに、あえてろくに鍛えていないスキルで初心者プレイをしていやがったのだ。

 魔法が使えないといったのも、メインスキルが魔法系統で使えばばれるからだろう。

 それなら俺とほぼ同じ戦闘力のモンスターばかりでてきた理由も説明がつく。

 

 文句の一つも言ってやりたいところだったが、今はあのボスを倒すのが先決。

 さっきのスキルを見る限り雨森はかなり強力な魔法スキルを使えるようだから攻撃役としては信頼出来る。

 

「こっちだ虫野郎!」

 

 雨森に注意が向かないよう蜘蛛に攻撃を繰り出し続ける。

 また弾き飛ばされないよう、執拗に足だけ狙い、体をひねったらすぐに距離を置くという行動を繰り返した。

 時折吐き出す糸も当たらず業を煮やしたのか、ついに蜘蛛は直接俺に突進をしてくる。

 多少デフォルメされているとはいえこれだけでかい蜘蛛が自分の方に猛突撃してくるというのは非常に怖い。

 

「雨森さん、まだですか!」

 

 全力で部屋を駆け回りつつ、蜘蛛の追撃をかわしながら悲痛な声をあげる俺に彼女はもうちょっと! と焦った声で返す。 


「用意完了! 村内君、そいつから離れて! フレイムテンペスト」

 

 雨森が魔法を放った瞬間、強化された足で思いっきり地面を蹴って前方へ跳んだ。

 そのすぐ後ろで突如熱風が吹き荒れ、荒れ狂う炎が竜巻のように蜘蛛を包み込んでいく。

 

「え、えげつねえ」

 

 魔法スキルの強大さに、ついつい呟きが漏れる。

 これは完全に攻略組連中と同じレベルの魔法だ。

 

「どうどう? すごいでしょ私の魔法」

 

 胸を張ってドヤ顔をしている雨森と、黒焦げにされて地面に転がっている蜘蛛を交互に見て、俺は大きくため息をついた。



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