表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17

1-12


「ちゃんと約束通り来てくれたね」

 

 いつも通り、家に帰ってリンクコネクトを起動した俺は、あまり気は乗らなかったけれど約束通り昨日と同じ噴水前にきていた。


「無視する度胸は俺にはないよ……。それで、なんのようかな」

「何って、ただ一緒に遊ぼうと思って誘っただけだよ?」

「そうか、じゃあ俺はこれで」

 

 来るだけ無駄だったと踵を返す俺の肩を、雨森ががしりと掴む。

 

「信じてないでしょ村内君!? まぁ、こんな可愛い子に急に誘われたわけだし、素直に信じられないその気持ちはわかるよ」

 

 自分でそれを言うのかよと突っ込みたくなる衝動をぐっと抑える。

 

「信じられるわけないでしょ。なんでろくに話した事もない俺を急に誘ったりするんだよ」


 まぁそんな事言ったら今日誘ってくれた杉浦も昨日初めて話したばっかりなのだが、そこはこの際置いておこう。

 

「なんでかは今日付き合ってくれたらわかると思うよ。別にずっととは言わないから、今日だけ一緒に遊んで欲しいんだけど、だめかな?」

 

 そう言って雨森に上目遣いで迫られてしまい、うっと言葉が詰まる。

 

「誘われて浮かれた俺をクラスで晒したりしないよな?」

「……村内君、私が思ってるよりはるかにぼっちこじらせてるみたいだね」

 

 雨森が可哀想なものを見るような目で俺を眺めてくるが、これは死活問題だ。

 彼女の意向ひとつで学校生活を送れなくなるくらいおれはちっぽけな存在なんだ、自慢じゃないけれど。

 

「そんなひどい事はしないよ。むしろ私のおかげで君は少しクラスに溶け込めたんじゃないかな?」

「ま、まぁ確かにそう言われるとそうなんだけど」

 

 実際、雨森が誘ってくれたおかげで俺の立場は少し変わってきた気はする。

 それがいい事なのか悪い事なのかはまだわからないけれど。

 

「でしょ? そんな私を疑うなんて村内君も人が悪いなぁ」

 

 意地悪な笑みを浮かべる雨森に、俺はどう返していいかわからず目線を泳がせる。

 ただでさえ人と会話する経験が少ない上、女子とまともに話した事なんて両手で数えられるかくらいしかない俺にとってこの状況は中々危機的だ。

 

「っと、村内君は人と話すの苦手なんだよね。あんまりいじめちゃ可哀想か。それで、私のお願いは聞いてくれる?」

「……わかった、今日1日だけなら」

 

 しぶしぶ俺が頷くと、雨森は満面の笑顔でありがとうと口にした。

 

 

 

「それで、行く場所はきまってるの?」

 

 俺の質問に雨森はもちろん! と元気よく答える。

 

「村内君、テスターだったでしょ? だから昨日みたいに雑魚狩りしてるだけじゃつまらないよね」

「だいたい一撃で倒しちゃうしな」

 

 でもそういう場所以外だと今度は雨森が厳しいだろう。

 俺についてきたところで、即街に送り返されるのがオチだろうし。

 

「というわけで、街近くのアベレージダンジョンに行こうと思うんだ」

「あーあそこか。でも多分あそこでも雨森さんきついと思うよ?」

「それは行ってみてからのお楽しみという事で。いざというときは村内君が守ってよ」

 

 悪びれもせずそんなことを言ってくる彼女に、俺は小さくため息をつく。

 

「わかった、あそこ行こうか」

 

 雨森にはあまり逆らわず、素直にいうことを聞いた方が楽だということを学習した俺は、彼女の提案通り街外れにあるダンジョンへと向かった。



 アベレージダンジョンは、その名の通りパーティの戦闘能力の平均値にあわせたモンスターが出てくる。

 リンクコネクトにはレベルはないが、ステータスはちゃんと存在している。

 そして、正式な数値はしらされていないが、取っているスキルと、ステータスを元に戦闘力というのが計算されているらしいというのがもっぱらの噂だ。

 その戦闘力を元に、このダンジョンの内部は生成される。

 

 ここでは、戦闘力が離れたプレイヤー同士が一緒に遊ぶのによく使われている場所だ。

 初心者は少し強いモンスターを、熟練者は少し弱いモンスターを、ちょうどいい感じになるように出現する。

 たしかにここでなら、雨森と俺もそれなりに楽しめそうだ。

 ただ、そうはいってもやはり雨森には格上相手になることは間違いない。

 俺もテスターをやっていた影響で結構戦闘力が高いので、決して楽なダンジョンではないはずだ。

 

「最後にもう一回きくけど、本当にここでいいんだな?」

「うん、大丈夫。というか、ここじゃないと私の目標が達成できないし」

 

 そんな意味深なことをつぶやいて、彼女はさきにダンジョンへと足を踏み入れてしまう。

 正直もう帰りたい気持ちでいっぱいだったが、置いていくわけにもいかないのでしぶしぶと俺も雨森の後を追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ