幕間
幕間
しんしんと降り積もる雪。
雪は降る側から血に染まっていく。
前に立って拳を振り回してくる男の手を捻って手首を砕く――後ろにバットを振りかざした男が表れたので、手にした角材でその顎を突き、砕く。
周囲には累々と重なり倒れた人間。屍山血河とはまさにこの事だろう。
全ては若い男性で、不良グループの抗争と見紛うかもしれないがそれは違う。
僕が一人で今、こいつらを叩きのめしているところだ。
昨日一日でやられた不良があまりに多かったので、彼らは集会を開いていた。どうやら僕を総出で倒すつもりだったらしい。
一人で現れた時には散々笑われた。だが、ボクの耳には届かなかった。
リーダーを倒したのは何人目のことだったろうか。
そこからは乱闘騒ぎだ、目の前にいる奴から砕き、折り、絞め、叩き潰していく。
バイクで轢き殺そうとした奴もいた。鉄パイプで思い切りカウンターを喰らわせたので、ヘルメット越しとはいえ、ひどい目にあってるだろう。
逃げ出そうとする奴もいた。そういう奴は逃げ出そうとする端から絞めて落として行った。
誰一人僕からは逃がさない、その自信があった。
ナイフで突き殺そうとしてきた男がいた。そのナイフをその手から奪い、膝を使ってへし折ってやる。折れたナイフは、投げ捨てた。
当然だが、百人だか二百人だかを相手にしている中、僕もタダでは済んでいない。
全身は打撲と打ち身だらけだし、擦り傷も随分とあった、刃物で斬られたと見られる切り傷もある。全身の返り血と合わせてどれがどれだか分からなくなっていた。
「――――――ッ!!」
誰かが、なにかが叫んでいるが、その声は耳に届かない。
「――――ンッ!!」
なぜか気になって拳を振り上げながらその方向を見た。
そんな場所にやってきた一人の女の子、頬には大きな絆創膏が貼ってあり、あちこちにガーゼが当ててある。
そうだ、僕は彼女が怪我をして登校してきたので、たまらず飛び出してきたのだ。
犯人がわからないから、全滅させた。ただそれだけの話だった。
ああ、だからこいつらが悪い、僕が今こんなにも怒っているのは――
「もう良いよ!! やめてあげてよ!! そんなにする必要ないじゃない!!」
目についたまだ倒れてない男を殴り始めた僕を、彼女は止める。
彼女は、倒れている人を踏まないようにこっちに向けて駆け寄ってくる。
残った数人は僕が止まったのを見て逃げ出した、何だ、もうほんの少しだったのか。
彼女は、血で汚れることも顧みず、僕を抱きしめて泣きじゃくった。
「もう良い、もう良いんだよ……!」
それを見ながら、僕は、二人の関係はもう終わったなと感じていた。
――これが音瀬市で起きた千人規模の不良グループ壊滅の顛末だった。
僕はそれでも良いと考えていたのだ。
彼女の為だったら。
間違えたので再アカウントです。
申し訳ない。