01
――お腹がすいた
お腹の空いてもう歩けなくてしゃがみこんでいる私に冷たい雨がもう無くなりきっている私の体力をさらに奪おうとしていく。
「誰か……助けて」
小さい私の声なんか誰の耳にも聞こえなかった……聞こえるはずなんてなかったんだ。
大きな町でもない小さな子の村で野ざらしになってる私を皆見ようとしていないんだから。
「……このまま死ぬんだ」
ボソッと堪えていた弱音が口から溢れてしまう。
雨足は強くなり、空はさらに暗くなっていく。村人は全員家に帰ったのだろうか?外から見える家の景色が消えていく。
やっとの思いで此処に流れ着いてこの明かりが消えていくのを見るのは三回目だ…もう駄目だ。
『涙が自然と溢れてくる』
必死で生きたくて頑張ってきたのに神様は私を捨てるんだ。死ぬ前に母さんは『生きたいって想えばマリーを神様は助けてくれる』って言ってたけど……そんなの嘘だよ、死にたくないよ、生きたいよ……お母さん。
涙でにじむ地面がふと暗くなったのに顔を上げて見る。
そこには大きな縦長な黒い影ができていた。
必死で涙を拭う瞳で見た姿が人の形をしているのを見て私は思わずつぶやいた。
「…タs…けて」
「……分かった」
必死で出した声はかすれて小さかったから聞こえなかったかもしれないし、雨音が強すぎてこの人の声も聞こえなかった。
けれどその人はフードを外すような仕草を見せてからその場にしゃがみこんで私の顔の高さに顔を持ってくるとそっと私を抱き寄せた。
―――あったかい
抱き寄せられた私に優しい森の香りが体を包み込んで強く抱いている腕からじんわりとこの人の体の温かさが伝わってくる……体中がお母さんの優しさみたいなものをこの人から感じる。
そして、私の視界には彼の美しい真っ白な髪の毛が一面に広がっている。
「綺麗な…白色」
「…そんなことを言われたのは初めてだ」
私の一言に彼の驚いたような声と見開いた真っ白な瞳がこっちを見つめていた。
彼の視線にはとなった私は咄嗟に自分の顔を隠すように長い髪の毛をグっと引っ張っる。
……―――
長い沈黙に雨音だけが大きくなる。
その時間に彼はムスッとした顔をすると手をすっと空に挙げて何か考えるように眉をひそめる。
『雨音が弱まる』
小さくなっていく雨足に私は目を丸くした。
「……魔法」
私の言葉にその人はニッコリと微笑む。
「へぇ、知ってるのか?……やっと喋ったな。それに、顔もやっと見れた。」
ハッとしてしまう。
目の前の人は私の“瞳”を見たのだろう。
咄嗟に拳に力が入る。恐怖で足が竦んで動けない私はこの一瞬を我慢すれば大丈夫と何度も何度も自分につぶやき覚悟する。
スッと伸びてきてた手にビクッと肩が揺れるがその手はそっと頭を撫でてきた。
フワッと手が私の心を温める……けど、心のどこかが暗い考えを起こす。
「じゃあ、一緒に宿屋行くか」
「え?」
「? だから宿屋に行くんだよ」
ちょっと気だるそうにこの人は私の質問に答える。
その姿に私は怯えるように思っていることを聞いてみる。
「……なんで?」
「何が?」
「こんな私の目を見て何も言わないの?」
「別に」
「別にって…」
この人は本当に興味なさそうにさっさと帰りたいと行動と口調に出している。
でも、私にとってこれは重要なことだった。