婚約破棄の現場に登場した幼女の話
「はぁ!はぁ!はぁ!なの~」
「ニャア!」
義妹が・・・・熱病にうなされて治ってから何かおかしくなった。
「虎拳なの~!」
「ウニャー!」
「ハニャ、ニケちゃん。飛びつかないの~!」
庭で変な体操をしているわ。
私はケイティ、お父様が両親の亡くなった親戚のメアリーを引き取った。5歳だ。
「あ、ケイティお義姉様~」
「何かしら・・・」
「教科書見せて欲しいの~」
おねだりも変わったわ。いつもはブローチやネックレス、ドレスなのに。
「・・・私の学園入学前の教科書なら・・」
「有難うなの~」
毎日、午前中は勉強して。
「復習なの~」
「ニャー!」
午後はお庭で猫と遊ぶ。
「象形拳!虎爪拳なの~!」
「ウニャー!」
何かしら・・・・腕立て伏せかしら。猫を背中に乗せて指で腕立て伏せをしているわね・・・・
「1.2.・・・ウグ、ダメなの~」
「ニャア!」
2回で終わったわ。
でも、回数が少ないから大丈夫かしらね。
あら、お母様だわ。
「お母様、メアリー、おかしな事をしています」
「まあ、多分、女騎士とか真似ているのでしょう。あの年頃はお姫様になりたいとか思うものですよ。ごっこ遊びです。メイドに任せて貴方はなすべき事をしなさい」
「はい・・・」
そう言えば、私も白馬に乗った王子様に迎えに来てもらいたいとか思ったわ。
「そう、そう、今度のパーティー、アントン様も来られるわよね」
「はい、欠席しないそうです」
「家門の皆様に婚約者のお披露目よ。侯爵家と縁組なんて誇らしいわ」
「はい」
子爵家の私は努力して侯爵家のアントン様と婚約出来た。
顔合わせの時に見たけど、少し怖い顔をされていたわ。終始黙っていた。
それからもお茶会を欠席されているけど、お忙しいのでしょうね。
子爵家と親戚のマダム、令嬢、メイド達が集まってパーティーの準備をした。
ガーデンパーティーだわ。
「はっ!はっ!はっ!」
「ニャ!」
相変わらずメアリーは庭で奇妙な踊りをする。猫の真似もする。
「シャアアーーーなの~」
「ミャア!」
「あのメアリー様、邪魔ですのでお部屋で遊んで下さい」
「分かったの~、その代わり木人欲し~の」
「木人・・・奥様に聞いてみますね」
部屋で丸太を立てたもので何かをしているらしい。
「ケイティ、私が大事に育てた蘭ですわ。飾って良いかしら」
「伯母様、有難うございます」
「ケイティ、特別に分けてもらった高級紅茶だ。おさめておくよ」
「叔父様、何から何まで・・・グスン」
「司会は私に任せてくれ」
万全の準備を整えてアントン様をお迎えしたら・・・
「アントン様・・・」
「・・・・・・」
無言で手を振り払われた。
隣には、派手な女性がいる。
「アントン様・・・」
「どけ!」
叔父様を乱暴に押しのけて壇上に上がったわ。
「何だ。貧相なパーティーだな。俺を誰だとおもってやがる。父上が言うから仕方なく良い子ちゃんのお前と婚約を結んだのだぜ!」
「まあ、子爵家のお屋敷狭いわね」
「ケイティだっけ?学校の成績だけは良くて、まるで無表情、つまらない女だ!このヴェローナを見習え!」
「アントン様、私も常々貴族令嬢は夜も無表情かと心配していますのよ」
「おう、そうだな。ギシギシだけ響きそうだぜ」
アントン様が我が家門と私を侮辱するわ・・・
皆、拳を握って黙っているわ。
侯爵家と事を構えることなんて出来ない・・・
「でだ。貧相なパーティーで俺を侮辱した。そちら有責で婚約破棄だ。異議のある者は手を挙げろ。決闘で決着をつける!」
家門の男子達は黙っているわ。アントン様に怪我をさせたら大変な事になるわ。
「ほら、どうした?何だ貧弱な家門だな」
「キャハハハハハ、玉ついているのかしらね」
皆、歯ぎしりをしている。
その時、間延びした幼女の声が響いたわ。
「異議ありなの~!」
「ニャア!」
肩に猫を乗せたメアリーが登場したわ。
「ニケ先生、降りるの」
「ニャア!」
ニケ先生・・・ツッコんでいる場合じゃないわ。
「メアリー、これは遊びじゃ・・・え」
「お義姉様、今までお世話になりましたの。おねだりして申訳なかったの」
紙を押しつけられた。絶縁状と書かれている。
アントン様の前に立ったわ。
「決闘を申し込むの~」
「ほお、幼女か。ならハンデだ。一発先に入れさせてやるよ」
「まあ、生意気な幼女ね」
「いいの~、このババアよりもお義姉様の方が100倍いいの~」
「何ですって!」
「おい、そこのおっさん。証人だ!」
「はい・・」
アントン様は上着も脱がない。
メアリーはアントン様に近づいて変な構えを取ったわ。片足になって両手を扇状にあげているわ。
「鶴拳からの~!」
「はあ、はやくパンチを打てよ。その後、蹴ってや・・・ウギャアアアアーーーーーー!」
「ヒィ」
「な、何をした」
メアリーは・・・・。
「虎爪拳!金的潰しなの~」
「シャアアアーーーー」
アントン様の股間に手を入れていたわ・・・
☆☆☆
あたし、メアリーは転生者だ。
中学の時に中国拳法に出会った。
日曜日、公民館の体育館で1人寂しく卓球の素振りをしていたのだ。
すると、1人のお爺ちゃんが話しかけてきた。
「ほお、お嬢さん。これは、見事な圏捶じゃ」
「懸垂?していないけど・・・」
「是非、中国拳法教室に入会を。更に健康に美しくなるよ!」
「更に・・美しく。困ります」
「あそこで皆やっているよ。参加しないか?」
圏捶とはフックのような打撃だ。
そこで危険な技を習った。
そう、今やっているのは金玉潰しだ!
・・・・・・・・・・
「ウワワワワワワワーーーーー!」
アントンは内股になって手で私の金玉を掴んだ手を押しのけようとする。
だから、思いっきりギュウと掴んで
体を真半身にして横回転を利用して押し込んだ。
そしたら、
ポコと音がした。
体の中に金の玉が入ったらしい。
「ヒィ・・・俺の、俺の玉が!」
思いっきり頭がさがったので、回転して。
「旋風脚!」
顔を蹴った。しかし、この体では顎にヒットするのがやっとだった。
バキと音がして、アントンは白目を剥いて倒れた。
隣のババアをチラ見する。
「わ、私は女ですよ。決闘は出来ません!」
「あたしも女なの~」
「ヒィ!」
それだけで失禁をした。
さあ、外に出るか。映画なら終劇とテロップがでる場面だ。
「みなしゃま、お世話になりましたの~」
「ニャア!」
ニケ先生も肩に乗ってくれた。養うぜ。中学校ぐらいまでなら教えられるぜ。
だが、ガシと背中から抱きかかえられた。お義姉様だ。
「メアリ-、グスン、どこにも行かないで・・・」
「「「メアリー様!」」」
「我が家門は全力で抗議する!」
「「「オウ!」」」
「幼女に教えられたぜ」
何とか、事は穏便すんだ。
幼女に玉を潰された。
大スキャンダルだ。
侯爵家側は全面謝罪。
「申訳なかった。君のような優等生と付き合えば更生すると思ったんだ」
と多額の慰謝料をもらい。婚約者を新たに探す事になった。
アントンは内股で歩いている。幼女に決闘で負けたと噂が広まり縁談もこないので。
20歳年上の未亡人に婿入りとか。もう、子供を作らなくても良いそうだ。
あのババアは令嬢失格で北の修道院に移送されたそうだ。
私は・・・
「鶴のように優雅で美しく!猫のように俊敏で可愛くなの~!」
「「「はい、メアリー様」」」
メアリー拳の創始者になった。
女性限定だ。
何故なら、不当な暴力にあらがう術でもあるのだ。
最後までお読み頂き有難うございました。




