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ある王国の日常  作者: 晴耕雨読。
王女と彼と、ゆかいな仲間
9/18

ある黒猫の日向ぼっこ

※この物語は9月12日に投稿したものです。内容は変わっていません。


 ある大きな大陸の


 ある小さな国の話。




 我輩は猫である。

 名前は、まだ ない。

 …………と、言いたいところではあるが、実は ある。


 我輩は、なんでもこの国の王子に拾われたらしい。

 王子否、主の名はフロックス・シュテンベルクという。

 まだ十にも満たない、金髪の愛らしい子だ。

 我輩に対しても優しく接してくれる。

 この奇妙な赤と黄のオッドアイも気味悪がらずに、むしろ気に入ってくれている。主が王子だからなのか、日々の待遇も悪くない。むしろ、良すぎるくらいだ。

 日課とする、庭園にあるイスの上での日向ぼっこも最高である。


 さて、今日も行ってくるとするか。


 我輩は、ほかの猫、というか動物と比べると、少々珍しい。

 この、赤と黄のオッドアイ。

 そして、人の言葉を理解するのだ。この能力はべつに、いつから、というわけでもなく自然に身についていた。

 だが、けして頭が良い、というわけでもない。 

 ----が、こうして今まで生きてこられ、なおかつ金持ちの家に拾われるほどの運はある。


自分で言うのもなんだが、おかしな猫である。



「あら。可愛い黒猫ちゃん」


 ん? 今日はどうやら先客がいたようだ。


「あの侍女が言っていた、王子が拾った黒猫ですね」

「ああ! この子ね! あら、目がオッドアイだわ。綺麗ねえ」

「そういえば。王子が東洋にはまっていたとかで」

「………………ああ。大丈夫よ、黒猫ちゃん! そこ以外、フロックスは完璧よ!!」


…………この二人が何のことを言っているのかを、分かりたくなくとも、分かってしまったのが悲しいものである。

 それと、もうひとつ。 

 分かったというか、感じ取ったことがある。


 -----この女性は、主と血が近しいものではないだろうか。


 主は金髪・緑眼に対し、この女性は黒髪・黒眼。

 髪の色も、瞳の色も、肌以外の色素はまったく違う。

 髪質も、主は少しくせっ毛だが、この女性はまっすぐ腰までとどいた、ストレート。

 瞳の形も、緑の瞳はくりっとした二重(まだ子供だからかもしれないが)。

 黒の瞳は同じ二重でありながらも少々切れ長だ。

 第一印象も、主は人懐っこそうだが、この女性は相手をどこか気後れさせるものがある。


 はっきりいって、外見は似ていない。

 唯一、共通点をあげるとすれば、どちらも超絶な美貌、ぐらいだろう。

 だが、我輩はこの女性は主と近しいものだと感じる。


 そう。いま、我輩を撫でる、この手が。


 おもわず、ゴロゴロと喉が鳴ってしまう、絶妙な愛撫が。

 我輩の瞳を見て、「きれい」と言ってくれたことが。

 なにより、いちど知ってしまったらもう離れることはできない、妙な引力が。


 ああ、すべてが、心地よい……


 ………………ん?

 なにか、さきほどからおもわず毛を逆立ててしまうような、突き刺すような視線が、我輩に……


「かわいいですね。----王女の膝上で撫でられてゴロゴロと」


 ……いや、気のせいではない…!

 我輩が路地裏暮らしで鍛えられた、野生の勘がいっている。


「----それにしても、きれいな毛並みですねえ」


 “はやく、にげろ!!” と…!!


「王女。近頃、寒くなってきたので、毛皮のものもいいのでは?」

「あら。そうね」

「どんなものがよろしいですか? 

王女の髪と瞳の色とそろえて、黒色にしましょう」

「----!? まさかの自己完結……!!」


 やばいぞ…!! これは、やばい……!!

 この男の言っている言葉の含みが、分かってしまった…!

 決定的証拠は、この女性に勝るとも劣らないこれまた麗しい男の微笑。

 微笑んでいるのに、我輩を見る目はいっさい笑っていない。それどころか殺意が……!!



「あっ! いた、いた! ゴン三郎!!」


 …………。


「あら、フロックスだわ」

「おや、残念」


 ……………………。




 我輩は猫である。


 名前は、………………………「ゴン三郎」という。


 我輩は、主がとても好きだ。

 日にあたるといっそう輝く金髪も、

 好奇心にきらめかせる緑の瞳も、

 我輩のお気に入りである。

 まるで、神の愛し子のような主。 


 ------だが、ネーミングセンスは恵まれなかったらしい……。





「おーい、ゴン三郎!」


……………………………。




第一王子のちょこっとした紹介でした。


次話も、よろしくおねがいします。


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