表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある王国の日常  作者: 晴耕雨読。
王女と彼と、ゆかいな仲間
8/18

ある一日の過ごし方

会話文が中心です。



 


  ある大きな大陸の


  ある小さな国の話。





「一日部屋でくつろぐのも久しぶりね」

「こうして、ルクレティア様と語り合えるなんて……!  一日中、独占!! うふふ……」

「…………ネリネ…?」


「ご臨終です」


「……アーネスト。勝手にネリネを殺さないでちょうだい」

「はっ! すみません、ルクレティア様。わたくし、興奮しすぎて軽く逝っていました……。恥ずかしいっ…!!」

「……………」

「せっかく、ルクレティア様とご一緒なのに、もったいないことを……。時間はまだたっぷりありますね! うふふ、何からお話いたしましょうか…。

色狂いクジェイット伯爵がとうとう不能になったとか」

「あ、あぁ、あの方ね。会うたび、ねちっこく見てくるからよく覚えているわ。……不能とはねぇ」

「それはそれは。とても良い知らせで」

「まあ! アーネスト様ったら今日も素敵な笑顔」

「…! アーネスト、あなた、まさか……!」

「どうかなさいました?」

「………………ナンデモナイワ」

「ああ、ほかにも、料理長が二股していたり。

なんでも、清純ぶっているしたたかな女性と、10代の綺麗で元気いっぱいな子が相手らしいです」

「10代!? たしか料理長あのひと、38歳ぐらいじゃなかったかしら。……まあ、相手が16歳ぐらいの女の子なら婚姻時だけどねえ……」

「まあ! ルクレティア様。違います!」

「? なにか間違ったかしら?」


「男の子です!」


「…………男の子?」

「ええ!」

「………………それって、その、……“10代の綺麗で元気いっぱいな子”が?」

「はい!」


「----なんです? 王女。

私をそんな熱いまなざしで見て。しかたないですねぇ、やります?」


「----いや。なんとなく…… って、なにをよ!!」

「そんなに心配しなくて大丈夫ですよ。

----そういう場合、相手を不能にしていますから」


「…………経験済みなのね…」


「何ですかその言い方は。後ろはしっかり守っていますよ。今後も使う予定もありませんしね。まったく、誤解を招くような言い方はよしてください」


「あなたには負けるわ!!」



* * * * * * * * *


 色狂いクジェイット伯爵の話。

 料理長の二股、恋のお相手の話。 から、はじまり、

 フロックス王子が黒猫を拾った話。

 希少な薬草、ツユノ草がみつかった話。

 今年の流行のドレスの話。

 ルークリア公爵に男児が生まれた話。


 ネリネが話題をふり、ルクレティアが相槌をうったり、質問をしたり。

 そこにアーネストが茶々をいれる。ほぼ一日おしゃべりだけだったが、会話は盛り上がっていた。

 ルクレティアが飽きるどころか、“もうこんな時間!”と驚くほど。



「時間が経つのって早いわぁ」

 ルクレティアは、それにしてもおしゃべりってこんなに楽しいものなのね、としみじみ思った。

 

(あれ? もしかしてこんなに楽しくしゃべったのってはじめて!?)


 さすがにそんなことはないだろうと思いながらも、ルクレティアは過去をふりかえってみた。


 (アーネストとはしゃべるけど……。いや、あれはいじめよ! アーネストとは論外! となると、女の子とねぇ。…………。)


 なぜか。話をする前から相手の少女が失神したり、話しかけても目を見開いたまま反応しなかったり。会話をした記憶が少ない。おしゃべりする以前の問題だった。


 (いや! お茶会とか! ……厭味満載のお茶会だったけど)

 

 それでも、ルクレティアが口を開くと先ほどまで厭味を言い合っていた少女たちはぴたりを口をつぐんだ。

 ……なぜか、震えながら。 

 

 (……もしかして、ネリネとしか女の子と楽しくおしゃべりしたことない!?)


 なんという驚愕の事実。

 ルクレティアは悲しさよりも、なぜか嬉しさのほうが勝った。

 本当に初めてだったのだ。女の子とこんなにもおしゃべりすることは。楽しいと思えるのは。疎外感のないものは。 


「まだまだ時間はあるわ!! まだまだおしゃべりしましょう!」


 周りから分かりにくいと思われる表情のなかに、アーネストには確かにわかる彼女の嬉しそうな様子に目を細めた。


「おやおや。……他にはどんながあるのです?」

ですか? 他にはくだらない話しか……。

……そうですね、実は王には隠し子がいて、その子を近々王宮に住ませるとかぐらいしかないです。

くだらないでしょう? 噂なら面白いのがたくさんあるのですけど……」


「!! 今さらりと、重大なことを言ったわよね!? というか、料理長の二股うんぬんより、それが一番、重要な気がするのだけど…!? 料理長どんだけ……!!」


ではなくとして‘この’侍女が言ったことなら事実でしょう。

情報を集め、なおかつ見極め、整理する能力がとても長けていますからね。

まあ、今回は他の者に聞かれたとしても大丈夫でしょう。王宮に住ませるぐらいなら、いずれ皆知ることになりますし、遅かれ早かれ、王女は巻き込まれますしね。大丈夫ですよ」


「人払いはしてあります! こんな魅力的なわたくしのルクレティア様の無防備な姿を誰にも見せたくありませんから! もう、ずっと外に出ないでここにいてほしいです…! 

盗聴の心配もございません。わたくしだってまだやっていないのに、他の者がやるなんて許せませんもの…! 

あ! もしかして、小腹がすきました? わたくしが丹精こめてつくった愛情たっぷり(秘薬もたっぷり)紅茶の葉・お菓子を用意してあります!! なので大丈夫ですよ!」


「あなたたちの“大丈夫”っていうほど不安なことはないわ…!」 


 大丈夫と言っておきながら、不安を駆りたてる発言をする者。

 危険人物はココですよ!と言いたくなる様な、身の危険を感じさせる発言をする者。

 どちらも、なにが大丈夫なの!と聞きたいくらいだ。

 ……まあ、言ったら最後、「あんなこと聞かなければよかった……」と、後悔すること間違いなしなので、絶対言わないが。


 この有能で俊敏な二人の変な行動も、思わす叫びたくなる(実際に叫んでしまうことが多い)ような発言も、すべては、ルクレティアへの愛。

 …………と、思いたい。いや、そう思わなくてはやっていけないということは、この、とても濃ゆい二人と長い付き合いになるルクレティアが、自然に学んだことである。


 でも、そう自身に言い聞かせても、やはり、不安になってしまう。


 いつも いつも 心配で 不安で 

 聞きたくない

 わかりたくない

 でも

 ずっと 聞きたかった

 その質問の答えは

 その唇からこぼれる 答えは

 もう 想像はついている

 それは

 一番 自信があり

 一番 はずれてほしい 答え

 けして 間違ってはいないだろう 

 だけど やっぱり 本人から言ってほしい


 ねえ、 嘘は つかないで

 言葉は 短くて いい

 だから 言って?



「あなたたち、 変態 ?」




 のちに、大騒動の根源となる“王の隠し子”ついて話がふれたのはもう少しあとの話。



まだ、“王の隠し子”はのんびり街で暮らしていたころの話。




次話も、よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ