ある晴れの日の会話
本編より、何年か前の話。
……であり、その後も何度も繰り返されている話。
ある大きな大陸の
ある小さな国の話。
その国にはそれはそれは美しい王女がいる。
周りの人々は彼女をこう呼ぶ。
その美しさを褒め称えて。
彼女がもつ色と、その心の色をかけて。
“黒薔薇の姫”と。
ある者は言う。
「彼女はまさに“美しいモノには棘がある”という言葉そのものだ」 と。
また、ある者は言った。
「こんなにおもしろく、そばにいてあきない人は他にはいない」 と。
青い瞳を細めて。
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「王女、知っていますか?」
「? なにを」
「その手紙……
「いたっ!」
刃がしこまれていることを」
「~っ!!」
「おやおや。言ったそばから」
「……あなた、分かってて手紙を渡して、しかも、ちょうど私が開ける時言ったわね…!」
「ほら、王女。お手を」
「! 完全無視! ……って、きゃぁ!!」
「どうしたのです?」
「あ、あなた、なに……」
「舐めたほうが治りは早いかと」
「~っ!!」
「おや?お顔が真っ赤」
「誰のせいで…!」
「? なに言っているんですか。私のせいですよ? いやいいですね。私のことで王女が表情を変えてくれるなんて…」
「----っ」
「何度やっても初心なところがまた。裸までみている仲ですのに……」
「! ちょっと、誤解を招くような言い方はやめてちょうだい! あなたがわたしの着替えの時はもちろん、入浴中も堂々といるだけでしょう!!」
「私は王女の護衛でもありますから」
「風呂場までくるやつは、もはやただの変態よ!」
「そんなに気になっていたなんて。しょうがないですね。一緒に入りますか? それなら安心でしょう?」
「むしろ危険だわ!!」
教育係兼護衛に向かって怒っている王女と、それを聞いて困った方だというように珍しく顔を困惑させている彼。
はたからみれば、王女に手を焼いている様にしか見えない。
そして、それを見た周りのものは“またアーネスト様にわがまま言っているよ、あの黒薔薇の姫は”と、なぜか王女の悪名と彼の評判は上がるばかり。
「もう疲れたわ……
なんであなた疲れていないのよ。むしろ輝いている気が…!」
「はてさて。この送り主、どうしましょうか。この手紙のせいで王女の白魚のような手に傷が……」
「……ちょっと待って。この傷はけして手紙のせいではなく、あなたが気づいて対処できた時点で、すでにあなたのせいよ!」
「ですよね、私もそう思います」
「----え?」
「では、今から王女のために……」
「!? ちょっ、まっ… !!! (はめられた!?)」
いつも笑みを湛えている(王女をいじめてすっきり顔)教育係兼護衛と、どこか威圧感がある(いじられてただ疲れているだけの)王女の姿を王宮で知らぬものは、だれもいない。
あれ?アーネストが変態に…
手紙(いたずら付き)が送られてくる限り、このやりとりは終わることはないでしょう…
ちなみに、アーネストはその送り主たちをちゃっかりチェックしています(笑)
次話は新しい登場人物が!……出れるといいな
これからもよろしくお願いします。