あるマル秘計画! 第一回 下
「まずはその対象と接触しなくては何もはじまりませんよ」
「……!!」
ある大きな大陸の
ある小さな国の話。
「わ、わかっているわ! ただ、いい案がないだけで……」
「つまり忘れていたと」
「ち、違うわよ! ネ、ネリネ、なにかいい案あるかしら?」
「う~ん。そうですね---……」
「大丈夫ですよ。王女」
なにを無駄なことをしているんだというように、アーネストがにこやかに助言する。
「王女ならどんな突拍子のないことでも相手に受け入れてもらえますから」
「悪い意味でね!」
まるで役に立たない助言であった。
「そんなに謙遜しなくても」
「してないわ!! ~~っ、悲しいけど、事実!
というか、その元凶はあなたよ!」
ルクレティアは自分で言って、自分が撃沈しながらも、アーネストへの攻撃はやめない。
「そんなに褒めなくても」
「だから、してないわ!!」
まるで歯が立たないが。
言い合うルクレティアとアーネスト(ルクレティアがアーネストに遊ばれているともいう)をよそに、さきほどから悩んでいたネリネ。
「う~ん。何かいい案……。 ああ! ルクレティア様、お茶会など開かれてみては?」
「まあ! いい考えね!
紅茶はこの国の特産なだけあって、とてもおいしいし。お菓子は何にしようかしら?」
「わたくしが作りますわ!」
「…………普通のを、ね」
「ええ! 秘薬たっぷりを!」
「----ちょっとまって。……普通のが、秘薬入り?」
少々どころか、かなり聞き捨てならないことが聞こえたルクレティア。
おもわず、もう一度たずねた。
「もちろんです!」
最高なものをつくります!
そう、自信たっぷりに断言するネリネ。
--------から、おもいっきり目をそらし、一言。
「………………普通じゃなくていいわ」
* * * * * * * * * *
「はじめてのリリーシェル様とのお茶会ですもの!
なにか記念にのこるようなことをしたらいかかです?」
「いい考えね! ----やっぱり無難にプレゼントをあげるとかかしら?」
「そうですね! モノならずっとのこりますし」
「でも、プレゼント、ねえ。刃物入り手紙に、虫の詰め合わせぐらいしか女の子に貰ったことがないんだけど……」
あまりにもルクレティアに嫉妬した(主にアーネスト関係の)女の子から“そういう”プレゼントが多かった。
そのためルクレティアは“刃物入り手紙はまだしも、意外に虫は女の子の間で人気なのかしら?”と、本気に思って、わざわざ好きでもない虫を集めて貴族の女の子達にプレゼントしまわったことがある。
今ではイタイ思い出でだが。
(----ん? 今思えば、その頃からわたしの悪い噂がたっていたような……)
ちなみに、その時アーネストは止めるどころか、ルクレティアの思い込みを利用して“王女の友達を増やすためにも”とかいい、刃物入りの手紙が送られてきた元にも虫たちを送っていた。
…………ルクレティアの名前で。
----つまり、加担していたのだ。もちろんルクレティアにではなく、ルクレティアの噂にである。
さて、現在のアーネストはというと……
「王女ったら、おいたわしい……」
わざとらしく、目じりをぬぐっていた。
「大半の元凶であるあなたに言われたくないわ!」
* * * * * * * * * *
「はぁ。プレゼント何にしようかしら……」
「ルクレティア様。わたくし、リリーシェル様の思入れの深い品など調べてきます」
「まあ! 助かるわ!」
「では、私はさっそく特産の紅茶を入手、お茶会のセッテイングを決めておきましょう」
「…………いや、たしかに助かるけど。あなたの仕事って……」
「王女の教育係兼護衛です」
「…………うん。そのはずよね」
(どちらの役割もお茶会のセッティングする必要とかないんじゃ……)
「王女。今さらですよ」
ルクレティアの心の中の疑問に対して“なに、当然なことを”とでもいうように、優しく諭されおもわず。
「そうよね」
納得してしまった。
「それに、2号だけに手柄を持っていかれたらいやですしね」
その落ち着いた美声と麗しい顔。
普通の者ならば、それだけに気を取られてアーネストの言葉など理解もせずにうなずくだろう。
しかし、今回の相手はもう約10年の付き合いになるルクレティアだ。そう簡単にはいかない。
「そうよ---- …………ん?」
……うなずきかけたが。
「----2……ご…う……? ------愛人設定はナシよ! ナシ!!」
「本当ですか!? ルクレティア様!」
“もう、この世の終わりだ…!”というように、いきなり横から叫んだネリネ。
その顔はショックを隠せない。
ここまで反応するとは思わなかったルクレティアは、おもわずひるんだ。
(いや、ふつうはナシでしょう……!?)
「王女の計画にはもってこいの設定なんですがねえ」
アーネストが残念そうに言った。
「----なんですって?」
自分の計画にはもってこいと聞き、興味をもったルクレティア。
その時点で、もうアーネストの罠にかかっているとは気づかない。
相変わらず可愛い人だとアーネストに思われているなんて知りもせず、早く言うようにアーネストを目でうながす。
「はい。王女、舞台はこの王宮。
そして、この愛人設定。-------最高のドロドロな舞台を作り上げて見せますよ」
「ただの計画妨害だわ!!」
聞いたわたしが馬鹿だった、とでもいうように、ルクレティアは額に手をあて大きなため息をついた。
だがアーネストは、なお言葉を続ける。
「しかし、王女。舞台がドロドロであればあるほど、王女の“優しさ”が引き立つのでは?」
「…………いわれてみれば……」
「そうですよ、ルクレティア様! 絶望の中で差し伸べられた手はどんなものでも、心にきます! けして忘れられないものになるでしょう!」
(たしかに。
二人の案は一気に印象も上がるし……
でも、こつこつと積み上げていったほうが……
どちらにしても、気遣いは大切よね。
なら……)
「う~ん」
悩むルクレティアは気づいてなかった。
はじめは、悪い第一印象を修正させるためにも“リリーシェルに優しさをアピールする”だったのが、二人の案でさりげなく“リリーシェルを絶望に追い込ませて手を差し伸べる”ことになることに。
----そしてそれは、物語の悪役がヒロインに取り入るためによく使われる方法だと。
はたして、ルクレティアは二人の案を受け入れたのか。
「ふふふ。準備が着々と進んでいるわ!」
白と黒を基調とされた部屋に、女性のつややかな声が響いた。
第一回 リリーシェルと友達になろう大作戦! にて
〇目標ポディション……優しい姉兼友達
〇第一段階……お茶会に招待
↑
・会話をしてお互いを知る。
・笑顔を忘れない。
・プレゼントを用意。
〇優しさ・気遣いはさりげなく!
次はいよいよリリーシェルとお茶会……!?
次話もよろしくお願いします。