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やったぜ。(完全版)  作者: 水前寺鯉太郎
やったぜ。11―係長になったぜ

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第84話

投稿者:係長のわし 2027年6月12日

 やったぜ。

 ……嘘じゃ。一ミリの「やったぜ」要素もない、緊急事態トラブル発生中じゃ。

 2027年6月。梅雨という名の「一ミリの猶予もない・全工区・強制浸水モード」が岡山に着工しおった。

 外はバケツどころか、ダムの底を一気にブチ抜いたような大雨。現場は即座に「土砂崩れ警戒区域」に指定され、わしのアパートは気づいたら「湿度100%・白濁コンクリート養生室」へと強制改修(降格)されとった。

 壁も、床も、わしのTシャツも。一ミリの隙もなく湿気を圧入され、わし自身が「生きた建築資材」として養生されとるわ。

 問題は、散歩という名の「外部巡回」が不可能なことじゃ。

 太郎ビーグル次郎チワワ三郎パグ。さらに兄ちゃんの(パグ)、金髪のエル(ダックス)、ちまき(チワワ)。合計6匹という名の「自走式・ストレス重機」が、狭いリビングで一ミリの出口もなく同時アイドリングをキメとる。

 室内はもう、地鳴りのような唸り声でシステムオーバーヒート寸前じゃ。

 最初に限界をハツリ超えたのは、やはり三郎パグじゃった。

 三郎は無言でわしの正面に鎮座し、白濁したような瞳でわしを五秒スキャンした後、一ミリの躊躇もなく畳に向き直った。

 そして、ハツった。

「おい、三郎。そこは基礎(下地)じゃ」

 ぶひ。

「三郎、お前、畳を『解体』するな」

 ぶひぶひ。

 交渉決裂。パグの短い爪によって、い草がドバーっと宙に舞い、わしのアパートが一気に「産業廃棄物処理場」へと変貌していく。

 そこへ、今度はエルが金髪のニューバランスを咥えてマッハの高速旋回ぐるぐるを開始。金髪が「エル! それわしの主力装備(一万二千円)!」と悲鳴を上げるが、エルは「渡さん」という一ミリの妥協もない顔でソファの下へ潜り込みおった。

 リビングが「室内ハツリ」と「装備紛失」で一気にカオスと化した時、玄関がドバーっと開いた。

 ずぶ濡れのおっさん(62歳)が、びしょびしょのまま土足という名の「不法侵入」をブチかましおった。両手には「高濃度・アルコール添加剤(聖水)」の重機用燃料ビールが大量搬入されとる。

「おっさん、傘は」

「忘れた」

「タオルは」

「ない。雨じゃけえ、全部流してきたわ」

 理由が一ミリの合理性も持っとらん。

 おっさんはびしょびしょのまま胡坐をかき、ビールを一気に喉の奥底へ流し込む。水滴が床に広がり、わしの養生室の湿度がさらに圧入アップされる。

「係長。雨の日はな、女子レーサー渡邉のビデオを観て、脳内を高速旋回ターンさせるに限るんじゃ」

 おっさんが一ミリの隙もなくリモコンを奪取し、テレビに「SG・オールスター」を圧入(再生)しおった!

 画面の中で渡邉が、白濁したような水しぶきをハネ上げながら、一ミリの狂いもない鋭いモンキーターンをブチかます!

「おおっ……! でーれー速い! 一気に喉の奥底まで旋回しおったわ!」

 わしとおっさんが叫んだ、その瞬間じゃった。

 6匹の「自走式重機」に、一ミリの猶予もないシンクロが発生しおった!

 三郎を先頭に、6匹がテレビの前で高速旋回ターンを開始。時計回りに、一ミリの乱れもなく、ぐるぐると。畳のい草が遠心力で部屋中にドバーっと拡散される!

「なんでや! なんで犬が『1マークの攻防』に感応しとるんじゃ!」

 隅で三郎のヨダレを拭いていたハゲ(元課長)が、白濁したような瞳で立ち上がった。

「係長! 渡邉選手の旋回、三郎さんの『おやつ後の旋回』と一ミリの狂いもなく重なります! あぁ~~たまらねえぜ!」

 ハゲ、お前はもう主機(脳)がパグのチップに入れ替わっとるわ!

 そこへ山口の田村から「うちのハツリ(仔パグ)も、今山口でテレビの前を旋回中です!」と、一ミリの隙もない同期動画が届きおった。

 それからはもう、めちゃくちゃや。

 6匹が回り、ハゲがパグ語で叫び、おっさんが競艇を打設(解説)する。

 わしも、おっさんの「競艇教育」という名の高圧洗浄に耐えきれず、渡邉の旋回に合わせて、80kgの肉体を一気に傾けた。

 リビングで、55歳の係長が「魂のモンキーターン」を竣工させおったわ!

「係長、何してるんすか、その不審なフォーム」と金髪が引いとったが、わしは無視して、雨の中のローソンへ聖水(追加の酒)を買いに走った。

 傘はない。わしもまた、一ミリの狂いもなく「おっさん」と化したんじゃ。

 帰り道、ずぶ濡れになりながらアパートに戻ると、三郎はソファでひっくり返って爆睡しとった。

 旋回、終了。竣工じゃ。

「三郎。お前、渡邉選手に勝てるか」

 ぶひ。

「……『イン逃げ一択』か。お前、でーれー勝負師じゃのう」

 外では雨。リビングには犬の爪跡と、ハゲの涙と、おっさんの水滴。

 一ミリの出口もない岡山の梅雨が、最高に熱く竣工されとるわ。

 ――やったぜ。

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