第81話
投稿者:係長のわし 2027年5月4日
やったぜ。2027年5月4日、深夜の盛り合いから一夜明けた、一ミリの猶予もない絶頂の朝じゃ。
山口の不純物・田村は、三郎という名の「生牡蠣」に顔面をドロドロに舐め回されて目を覚ましおった。
正確には、三郎が田村の鼻の穴という名の「メンテナンス・ポート」に、湿った舌を一気に圧入しようとした瞬間、田村の主機(意識)が強制再起動したんじゃ。
「ぶっ――なんすかこれ!? 鼻の奥に一ミリの隙もなく『生』が入り込んできた!」
田村が跳び起きたが、三郎は一ミリも動じぬ。むしろ「逃げるな、全容量を受け入れなさい」と言わんばかりに田村の膝に前足を打設し、白濁したような鼻息を顔面にドバーっと高圧洗浄し続けおった。
わしはキッチンで、泥のようなコーヒーを淹れながらその「生物学的事故」をスキャンしていた。もちろん、助けはせん。
「係長! 助けてください! 粘膜が……わしの鼻の粘膜が一気にハツリ倒されとる!」
「慣れい。それがパグという名の『白濁した絶頂』じゃ」
「慣れる前にわしの理性がシステムダウンします!」
知っとる。人間はどこまでも慣れる生き物じゃ。それがどれほど臭く、湿り、白濁した生き物であってもな。
朝飯という名の「燃料補給」を終えると、田村の瞳から一ミリの知性も消え失せとった。
「係長……三郎さんと、散歩に行っていいですか」
さん、て言うた。26歳の男が、一ミリの出口もない「パグの深淵」に足を滑らせおったわ。
三郎を伴った散歩から帰ってきた田村の顔は、もう元の「山口の青年」ではなかった。全体的に「何かに一気にハツリ取られた人間」の、とろけた面構えになっとる。
「係長……三郎、歩くの下手すぎません? 足元で勝手に三周して、自分のリードで一気に自爆(転倒)しおった。……最高じゃないですか」
「知っとる」
「信号待ちでわしの足の上に乗ってきて、どこうとしたら『ぶひっ』て一気に怒圧をかけてくる。……たまらねえぜ」
「知っとる」
田村は三郎という名の「肉塊」を抱き上げ、その皺だらけの顔面に、自らの顔を一ミリの隙もなく圧入した。
三郎は「ぶひ」と、喜びか拒絶か判別不能な白濁した咆哮を上げた。パグの感情はすべて、あの深すぎる皺の間に埋没(埋め立て)されとるんじゃ。
「係長、山口でもパグは竣工(飼育)できるんですか!?」
「できるわ。犬に県境という名の防波堤はない」
そこからの田村は、一ミリの猶予もなかった。
スマホという名のスキャナーを取り出し、わずか五分で山口の在庫を確認。十分後には月々の維持管理費をわしからハツリ取り、十五分後には山口のショップへ、一気に「パグ発注」の通信をブチかましおったわ!
わしを手で制しながら「あ、もしもし! パグ入りました!? 今日の午後、一気にスキャン(見学)しに行きます!」と叫ぶ田村。
昨夜、深夜一時に三時間かけて来た男が、三郎の散歩を一回しただけで、今から山口にパグという名の「汚染資材」を搬入しに帰るという。
「お前、三郎に会うためだけに三時間高速を飛ばしてきたんか」
「結果的にそうなりました。可愛すぎて……無理でした」
結果的に、て。わしに会いに来たんじゃなかったんか。
わしはソファで腹を天井に向けて寝こける三郎を見た。こいつ、知らん顔して山口に「出張所」を一気に開設しやがった。一ミリの営業活動もせず、ただ転んで、足に乗っただけで、一人の男の26年間の人生設計をハツリ倒しおったわ。
田村は「また、次はパグ(新資材)を連れて来ます!」と言い残し、一ミリの隙もない速度で山口へ帰還していった。
玄関が閉まるまで、三郎はその白濁した瞳で田村の背中をじっと見送っていた。自分が山口という工区に放った「爪痕」を確認するような、でーれー罪な目じゃったわ。
「三郎。お前、罪な男じゃのう」
ぶひ。
「反省の色、一ミリもなし、か」
ぶひぶひ。
パグ汚染、山口上陸、竣工。
わしは一人、冷めたコーヒーを喉の奥底まで一気に流し込んだ。
――やったぜ。




