第56話
投稿者:土方のわし 2026年6月1日
やったぜ。……と言いたいところじゃが、梅雨という名の「逃げ場のない湿った深淵」が、一ミリの猶予もなく完全に近づいてきよる。
窓の外は、卑しいほどにどしゃ降りの雨という名の「不純物(水)」がドバーっと降り注いどる。道路工事という名の「生の舞台」は当然のごとく全工程停止。わしの肉体という名の「55年物フレーム」は、湿気を一気に吸い込んだコンクリートのように重たうなって、布団の深淵へとじりじりと、一ミリずつ沈み込んどるわ。
鼻をひくひくさせると、カビという名の「微生物の繁殖」と、乾かぬ作業着という名の「外装」から放たれる『生乾き』という名の、一ミリの隙もない不快ガスが狭い拠点の中でドロドロに混ざり合っとる。あぁ~~たまらねえぜ。
だが、一番の「システムエラー」は太郎じゃ。
雨という名の鉄格子のせいで、散歩という名の「出力開放(出口)」を一気に奪われ、ストレスという名の内部圧力が限界突破しおった。わしの愛用する、数少ない安らぎという名の「重要・緩和構造物」をドバーっと、一ミリの隙もなくハツリ落としやがった。中から白濁したスポンジという名の「内部断熱材」と布切れが、無残にパージ(流出)しとるわ。
あぁー、もうめちゃくちゃや。一ミリの妥協もない破壊工事じゃ。
「こら太郎! そのソファ、わしの数少ない『生(拠点)』の要なんじゃぞ!」
叱り飛ばしても、太郎は「出口を一気に寄越せ」と言わんばかりに、野性を剥き出しにして部屋という名の「狭小工区」を猛スピードで、気が狂う程ストローク(走り回り)しよる。
そこへ、暇という名の深淵を持て余したおっさんと兄ちゃんという名の「不法侵入ユニット」が、雨にまみれて舐めるように転がり込んできた。
「わしさん、現場が休みならパチンコという名の『現金回収・出口』を……と言いたいですが、財布という名のタンクが空っぽの深淵ですわ」
おっさんが空の財布を、卑しくヒラヒラさせよった。兄ちゃんが黄色いラベルという名の聖水(万能洗浄液)をドバーっと一気に差し出しよる。
「トップバリュの酒でも喉の奥へ突うずるっ込まんと、この湿気で心という名の『基盤』にカビが生えますわ」
それからはもうめちゃくちゃや。兄ちゃんがソファの中綿(資材)を丸めて投げれば、太郎がそれを白濁した目で追いかけ、部屋中を身悶えしながら走りよる。おっさんが太郎の進路という名の導線に立っとったら、正面衝突という名の「生の盛り合い」が発生しおった。
「……わしさん、還暦の膝という名の『摩耗したベアリング』に、太郎の頭部という名の『硬質ヘッド』が鋭く圧入されましたわ。もう、おえんわ。異常振動が止まりませんわ」
「おっさん、そこは立ち入り禁止区域じゃと言うたじゃろ。物理法則に身を任せすぎじゃ」
「……聞こえませんでしたわ。衝撃で耳の出口が一気に塞がりましたわ」
中綿を卑しく拾い集め、おっさんの膝という名の「基礎部」の維持費を心配し、追いトップバリュを一気に一本、しこたま空けてやった。
――もう一度、太陽の下で泥の深淵をハツリ起こしたい。
アパートの床で、三人と一匹で湿気という名の不純物にまみれて寝転んだ。太郎がボロボロになったソファの残骸を「仮設枕」にして、システムダウン(果てたよう)に眠りよる。壊した張本人が、一番ええ顔で「生の眠り」についとるわ。
こんな変態親父と、雨天休工の「湿気まみれ遊び」、しないか。
あぁ~~早く太陽という名の「高出力照明」にまみれたいのう。
岡山の曇天の下、ボロボロになったソファの破片を一ミリの隙もなく握りしめながら、一ミリの狂いもなく待っとるぞ。
――剥き出しの断熱材を一気に封印する「高粘度・肉盛り補修材(接着剤)」をしこたま持って来てくれる奴、おらんかのう。
太郎には接着剤という名の添加剤は一滴も渡さん。土方姿という名の「本来の皮膚」を忘れて、55歳のわしは雨の退屈という名の強敵に、ドバーっと立ち向かい続けるんじゃ。




