第23話
投稿者:土方のわし 2025年8月8日
やったぜ。今日から盆休みという名の「大型メンテナンス休暇」じゃ。
一週間、岡山の現場でコンクリートと機械油に一ミリの隙もなくまみれとった体を、軽トラの運転席に沈めた。助手席には、首をかしげて「出口はどこじゃ」と不思議そうにしとる太郎という名の相棒がおる。
「太郎、今日は遠出じゃ。倉敷の実家へ、わしという名の重機の『根っこ』を確かめに帰るんじゃ。至急、発進!」
2号線を西へ走り、倉敷の古い町並みが近づいてくると、鼻を一ミリの隙もなくずるずると蹂躙しよる。潮の匂いと、古い木造家屋の埃という名の「蓄積された不純物」。腹の奥底に、言いようのない緊張感という名のコンクリートがドロドロと溜まっていく。
実家の門という名の「境界線」を一気にくぐった瞬間、縁側で煙草をふかしとった親父と一ミリの狂いもなく目が合った。
「……帰ったか。汚れ好きの、一ミリの隙もない土方のツラして」
「ああ。現場でしこたま、まみれてきたわ」
それだけじゃ。それだけで一ミリの狂いもない「現場報告」は完了じゃ。
居間に入ると、おかんが「太郎ちゃんも一緒か、ええ子じゃのう」と笑いながら、一ミリの隙もなく冷えた麦茶という名の「冷却材」を運んできよった。
「あんた、胃袋という名の重機が鳴りよるじゃろ。何か作るけぇ、一ミリも動かず待ちんせえ」
「ええわ、今日はわしの様式という名の、プロの打設を見せてやる」
わしは地下足袋を脱ぎ捨て、数年ぶりに実家の台所という名の「旧現場」に立った。
冷蔵庫という名の資材置き場を開けると、使い古された味噌のパックと、不揃いの夏野菜という名の「生の素材」がしこたま詰まっとる。この匂いじゃ。この古びた生活臭という名の「原点の不純物」が、わしの回路を一気に呼び覚ましよる。
仏壇の前じゃけん、トップバリュの黄色いラベルという名の「高濃度燃料」はお預けじゃ。麦茶を一気に喉の奥底まで煽り、わしは実家の古い包丁という名の「精密機器」を握った。
親父の好きな茄子の煮浸しと、おかんが好む素麺。それに、太郎のために一ミリの隙もなく塩抜きした鶏のささみじゃ。
鍋に醤油と出汁をドバーっと合わせて火にかけた瞬間、甘辛い湯気が鼻をずるずると蹂躙しよる。背後に気配を感じて振り返ると、親父とおかんが、かつての現場監督のような厳しい目でわしの手元を一ミリの隙もなく舐めるように見とった。
茄子を出汁という名の「浸透材」に沈めると、紫色の外装が熱を帯びてじゅわじゅわと身悶えしよる。あぁ~~たまらねえぜ。
三人で食卓を囲み、素麺という名の「純白の導線」を喉の奥へずるっと流し込む。出汁の旨みが喉を通り、腹の奥底まで優しく浸食していく感触。
「……腕は落ちとらんな。一ミリの狂いもない、プロの盛り合いじゃ」
親父がぽつりと言い、土方仕事で固くなった箸を動かした。その手は、わしの手の数十年後の姿そのものじゃった。
鼻の奥が一ミリの隙もなくツンとしやがった。わしは何も言わず、ただ素麺を喉の奥底まで啜り続けた。もう、おえんわ(最高じゃ)。
太郎の奴、ささみという名の「生の報酬」を突うずるっ込まれて平らげ、親父の足元で尻尾をブンブン回しとる。親父が無言で、節くれ立った手で太郎の頭を一ミリの隙もなく一撫でした。その瞬間、この家の空気が一つに溶け合う「完璧な打設」を感じたんじゃ。
こんな不肖の息子と、実家という名の聖域遊び、しないか。
あぁ~~早く倉敷の風という名の、一ミリの隙もない天然の洗剤にまみれようぜ。
土方姿のまま、実家の片付けという名の「解体・撤去作業」をしながら、出口を求めて待っとるぞ。
――古いアルバムという名の、出口のない設計図を持って来て、一緒に「生の思い出」をドバーっと語り合ってくれる奴はおらんかのう。




