第10話
投稿者:土方のわし 2024年9月2日
やったぜ。今日で休暇も二日目という名の「二回戦」じゃ。
昨日あんなにカレーまみれになったのに、朝起きるとまたあの卑しい匂いが鼻を一ミリの隙もなく突いてきよる。二日酔いで頭という名の重機が重いし、スパイスが腹の中で出口を求めてぐるぐるしとる。
ふらつく足でキッチンという名の現場へ向かい、一晩寝かせた鍋の蓋を一気に突うずるっ込んだ。
――あぁ~~たまらねぇぜ。
兄ちゃんがブチ込んだ白濁したヨーグルトが、飴色玉ねぎと完全に融け合い、昨日よりも凄みのある「黒褐色」に仕上がっとる。これこそが熟成という名の「圧入」じゃ。元コックとして、鍋の前で思わず背筋が鉄筋のように伸びよった。
横では太郎の奴が、昨日かっさらった空きカップを枕にして、汚れ好きの寝顔をさらしとる。わしがガスコンロに火をつけた途端、飛び起きて尻尾をプロペラの回転速度で振り始めよった。
「待て太郎、これは昨日より刺激という名の圧が強えぞ。一ミリの妥協も許されんお前にはおえんわ」
テレビの中では松岡修造が「もっと熱くなれよ!」と咆哮しよるが、こっちの鍋の熱気も負けとらん。修造の熱血指導に合わせて、ルーが「フツフツ」と生の鼓動を刻みよる。
昼過ぎ、兄ちゃんとおっさんがまたアパートという名の出口へ転がり込んできた。
「わしさん、二日目のドロドロしたやつ、至急やりましょうや」
三人でまた地下足袋一丁という名の「正装」になった。兄ちゃんが「またこれですか」と一ミリだけ引きよったが、わしは答えんかった。これが様式じゃ。文句があるなら去れ。
冷えた飯という名の基礎の上に、熟成したルーをドバーっと出し、おっさんがどこからか調達してきた生卵を三個、深淵へ落とした。火にかけると、カレーと卵がずるずると混ざり合い、底の方がじりじりと、焦げという名の「勲章」を刻みきよる。
「おい兄ちゃん、この焦げたところを舐めろ。至急、舐めるんじゃ」
「えっ、舐めるんですか。一ミリも隙がないっすね」
「舐めるんじゃ。一番美味い、生の報酬がここにあるんじゃ」
兄ちゃんがフライパンに顔を密着させ、おっさんも卑しく鼻をずるずると突き出してきた。
「おっさんは呼んでねぇわ。向こうへ行け。一ミリもやるわけにいかん」
「……すみません」
三人で汗だくになりながら、ドロドロの二日目を喉の奥底まで貪り食った。一口啜るたびに、もう気が狂う程気持ちええんじゃ。ああ~~たまらねえぜ。
太郎の奴、あまりに旨そうな匂いに耐えきれず、わしの膝の上で鼻を鳴らし、松岡修造という名の救世主を見つめとる。
「すまんのう太郎。これだけは、お前の胃袋に突うずるっ込んでやるわけにいかんのじゃ」
それだけじゃ。
それからはもうめちゃくちゃや。おかわりという名の「追い打設」を二回出した。二回ともおっさんが一番先に皿を差し出し、最後は鍋の底を一ミリの隙もなく舐めるように平らげよった。
岡山市内のアパート、残りのルーはあとわずかじゃ。
こんな変態親父と、地下足袋一丁で二日目のカレー遊び、しないか。
あぁ~~早く焼きカレーまみれになろうぜ。
ジップロックやタッパーをしこたま持って来てくれる奴、おらんかのう。
土方姿のまま、ドロドロを分け合って、一ミリの隙もなく分かち合おうや。




