修行
朝日の昇る前。
オレはいつも通り庭先に出た。
白い息を吐きながら、日課のトレーニングをこなしていく。
まだ早朝は寒く、所々霜が降りている。
空は深い菫色で、
東の山の稜線に淡い茜が滲み、
上空の雲がオレンジに染まると、
辺りから鳥がさえずり始め、
谷川のせせらぎに加わった。
朝だ。
一時間ほどトレーニングし、身体が汗ばんできた。
汗を拭い、家の脇へ向かう。
そこにある平な石の表面の霜を掌で払い、腰を下ろす。
背筋を伸ばし、足を組み、
静かに目を閉じる。
意識を内に向け、丹田に集中する。
ちりり、と丹田が熱を帯び始める。
圧を保ったまま、そこから体内を巡らせる。
まずは心臓の横あたりに熱の塊を移動させ、
ゆっくりと右肩から右腕に移る。
右の手まで到達すると、手のひらから、
組み合わせた左の手へと慎重に渡る。
塊が霧散しないように注意する。
左手から左腕、左肩を巡り、胸の中心に戻る。
これで一周だ。
徐々にスピードを速めながら、100周ほど循環を行い、
回る向きを逆転させ同様に100周させた。
身体は動かしていないのに、かなりの熱を帯びている。
次はちょっと難しい。
丹田の熱の塊を胸中に上げた後、
首から顎に上げていく。
下顎まで到達すると、舌の付け根に入り、
舌先から上顎に移動する。
細い経路を、これまでよりさらに圧縮させて辿る。
口中には唾液が溢れてくる。
上顎に移ると、鼻の裏側を通り、
目の奥を通過する。
いよいよ脳だ。
前頭葉から頭頂へと到達する。
全身に甘い痺れのような感覚が広がる。
後頭部に回り込み、うなじに降りる。
背骨を辿り、尻の辺りまで降りて来た。
後少しだ。
尻から身体の前面に向けて股を通り抜ける。
じわっとした感覚が下腹部に広がり、陰茎が充血し始める。
ここが難しい。
熱の塊が、まるで意志を持った生き物のように、
甘い誘惑の淵へと滑り込もうとする。
気を抜くと、あっという間にそちらに引き寄せられ、
激しい快感と共に射精となって散ってしまう。
10歳の生気溢れる肉体には、
この覚えたばかりの誘惑に耐えるのが、
なかなかにこたえた。
無事にソコを通過すると、塊は丹田に戻って来た。
「大循環」はこれで一巡だ。
先ほどの「小循環」と同様に100周させ、
さらに逆回転を100周行う。
日課を終え目を開くと、
山の向こうから朝日が射し込み、
辺りは金色に輝いていた。




