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石の民〜幽体離脱無双〜  作者: つぶり
第二章

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15/16

イワナ


―ビシッ、ビシッ


人の気配のない森に、

枝が折れる音が響く。

オレは魔石を使う練習を続けていた。


魔石は、練った気を込めると、

溜まっているエネルギーを

解放する。

それは指向性を持った衝撃波で、

太い木を倒したり、遠い山にまで

達し斜面を崩落させる程の力がある。


オレの課題は、

・衝撃波の方向

・衝撃波の大きさ

この2点を主にコントロールすることだった。

また、できれば

・発動までの時間短縮

も、実現したいところだった。


ウサギの魔物のために、

今のところ森に入るのが禁じられているので、

こうやってコッソリ、

家の裏手から途なき道を通って

森に忍び込んでいる訳だ。


魔石を握り、

上空の曇り空を狙って

気を込める。


―ズン


空間が振動し、

空に巨大な円形の青空が

ぽっかりとのぞいた。


―ゴォオッ


遅れて風の音がする。

上空に開いた穴に、

周囲の空気が流れ込んでいるのだ。


午後の日差しが森に差し込み、

鳥達が慌てたようにさえずり始めた。


衝撃波は、

オレが見ている方向に飛ぶのかな。


今度は目をつぶり、

意識の焦点を右斜め上空に

結ぶ。


発動。


想定した通りの方向の雲に、

もう一つ穴が空いた。

―ゴォオ

なるほど。


見ている、いないに関わらず、

意識を向けた方に

衝撃波は飛ぶようだ。


方向のコントロールが出来るようになったので、

次は威力の制御を確かめることにした。

それが冒頭の練習だ。


予想した通り、

込める気が小さいと、

衝撃波もまた小さい。


オレは狙った小枝に衝撃波を

当てる練習を続けた。


一時間ほど経っただろうか。

魔石がかなり高温になってきたので、

今日の練習は終わりとした。


薮をくぐり抜け、村に戻る。


集落は、大変な騒ぎとなっていた。

家へは入らず、通りに出て

近くにいる大人に尋ねてみる。


「あの、何かあったんですか?」

「何かあったじゃないよ。

空を見なかったのかい?!穴が空いたんだよ。

それも二つも!!」

「…あー、なるほど」


こっそり隠れて行った練習が、

騒ぎを引き起こしてしまったようだ。

申し訳ない。


これからは控えめに練習しよう。


家に戻る前に、谷川へ降りる。

銛は持ち合わせていなかったが、

晩飯に魚を獲りたかった。


川の流れが淀み、

淵になっているところまで

やって来た。

水と藻の乾いた匂いがする。

すでに日は傾き始め、

水辺は陰の中に沈みつつあった。


淵の水面は、紅く染まった空を、

鳥が飛んで行く様を映していた。


羽虫が水上を飛び交っている。

時々魚が跳ねる。

静かな夕暮れだ。


オレは岸辺の手近な岩に腰を下ろし、

呼吸を落ち着けて、

意識を周囲の環境に同調させた。


身体の輪郭が拡大する感覚。

オレの意識は、辺り一面に広がり、

全てのものが自分の内側にあるように

感じられる。


瀬の小石の下ではざざ虫が蠢く。

清い水の流れが、心を洗うように

通り抜けていく。

渦に囚われた小枝がリズミカルに

浮き沈みしている。

無数の気泡。


足元の淵では、

数匹のイワナが

点在する岩陰に潜んでいた。


オレは、そのうちの3匹に照準を

合わせた。ごく細く練った気で、

魔石を3度つつく。


―ピシ、ピシ、ピシ


水面に小さな波紋が広がる。

程なくして、魚影が3つ、

腹の白い斑点を上に

浮かび上がって来た。


水の流れを誘導し、

岸辺に近づける。

側に生えていた葦を折り取り、

エラの所に引っ掛けて

獲物を腰に結えた。


今夜はご馳走だな。



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