石のちから
庭石に座り、
日の光に赤い石を透かしてみる。
透過した日光は屈折し、
細かな赤い光を周囲に散らした。
魔物の腹から出てきたとは思えない、
透き通った美しさがある。
まるで宝石だ。
長円形で、長い方の径が五センチほど、
短い方が三センチほど。
ちょうど握りやすい大きさだ。
表面はでこぼこしているが、
角はなく滑らかだ。
あまり硬さは感じない。
色こそ違うが、
全体として琥珀に似ている。
数日前。
〝ソマ〟さんの炭焼き小屋に続く途で
異形ウサギを打ち倒した後、
オレは里長の家へ向かった。
さすがに全てを話しても
信じてもらえないと考えたので、
森で異形のウサギに襲われたこと、
そのウサギが不思議な技を使ったこと、
それから、
腹を捌き赤い石を取り出したところ、
元のウサギに戻って死んだことだけを
報告するにとどめた。
里長や、そこに居合わせた
村の古老達は訝しみつつも、
類を見ないほど大きなウサギ
(落ち着いて見れば、
オレの背丈ほどもあった)や、
右腕についた黒い痣、
そしてこの赤い石を見て、
森の中に何らかの異変が
存在するとの結論に至ったのだった。
数日来、炭焼きの煙の立たない
〝ソマ〟さんの小屋へ
様子を見るため人を遣ったところ、
〝ソマ〟さんが行方知れずと
なっていることも判明した。
小屋には争った跡もなく、
ウサギの足跡が灰の上に
残されているのみだったという。
男達が山を見回ることとなり、
異常がないと分かるまでは、
女子供の入山は禁止された。
日課となっていた狩ができないので、
オレはこうして赤い石をこねくり回して、
時間を潰しているのだった。
石に鼻を近づけてみる。
よく洗った後なので、臭いはしない。
舌先で舐めてみたが、味もなかった。
岩塩というわけでもなさそうだ。
危険は無さそうだし、
フィオナにでもくれてやるかな。
そんなことを考えながら、
組み合わせた両の掌の上に
石を持ったまま、
気の鍛練を始めた。
胸中から右腕に流れた気が
石に触れた瞬間。
ドゥン
辺りの空間が揺れた。
ビシッ
音がして、目をやれば
数十メートル先の
大木の枝が落ちるところだった。
びっくりしたな。
今のはいったいなに――
すがぁあん
遅れて遠雷のような音が響き、
目を上げると、折れた枝の先、
遠い岩山に土煙が上がり、
残雪を巻き込みながら土砂が
崩落している。
地滑りだ。
……え?
周囲の山々に爆音がこだまし、
驚いた人々が家々から出てきて
山を見上げている。
掌の石に視線を落とした。
―この石のせいだ。
衝撃波を発した石は、
少し発熱しているようだった。
この石を使えば、
敵から皆を守れるかも知れない。




