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石の民〜幽体離脱無双〜  作者: つぶり
第一章

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見知らぬ天井 過去の記憶

 意識が浮上する感覚。目を開けると見知らぬ天井。


会った覚えのない人間が、

こちらを覗き込み何ごとか話しかけてきた。

優しい笑みを浮かべている。


オレはふたたび柔らかな温もりの中へ潜り込むべく、目を閉じた。


 次に目を覚ますと、覗き込む顔が増えている。


オレは二人に興味を持った。

長く忘れていた感覚がそこにあった。

これは何という感情だろう?

何か話しかけようとすると、

「あぁあ」という声が聞こえた。

耳慣れない声だが、これが自分の声なのか?


「あぁああ」


 二人は喜んだ様子でじっとオレを見守っている。

まるで、‥そう、まるでオレが彼らの赤子ででもあるかのようだ。

まったく、オレは立派な大人なのに。

‥ええと何歳だったか。

名前は‥忘れてしまった。


 ふむ。

オレは情報を求めて周りを見回してみた。

天井は太い木の梁に、古びた板が渡してある。

壁は淡いクリーム色で、漆喰のようだ。


天井に迫るほど大きく重厚な木の家具。

頑丈そうな鉄の金具がところどころに取り付けられていて、

取手としてだけでなく、意匠としても見事だ。


右手には窓がある。

ガラスは嵌っておらず、鎧戸を外に向かって観音開きにしただけのものだ。


冷涼で澄んだ空気がそこから室内に流れ込んでくる。

知らない植物の匂い。


 窓の外はどうなっているんだろう、と思った瞬間。


くくっと起き上がる感覚があり、

オレの意識は身体から離脱して身体のすぐ上にあった。


 この感覚は覚えているぞ。

昔よくこうやっていろんなところを彷徨ったものだったな。


慌てることなく、意識体となったオレは、

下を振り返り、自分の状態を確認した。


 ふむ。

羊毛の毛布やら、何かの動物の毛皮やらに何重にも包まれるように、

小さな顔があった。


赤子であるな。


オレを見つめる二人の様子からうすうす察してはいたが、

やはり赤ん坊に生まれ変わったようだ。


この二人は両親なのだろうな。

漂うオレの意識体には気づかない様子で、

身を寄せ合って赤子のオレの顔を飽きもせず眺めている。


 窓の外はどうだろう。

オレはフワフワと窓辺に飛んで行った。


見えたのは、

黒い豊かな土を覆うばかりの青々とした下草。

黄色や白の小さな花々。

少し先にある古びた木製の柵。

何かの薮がいくつか。

太く立派な木が数本。


砂利道の先には、

古い石壁や漆喰の、大きな家並みがあり、

その向こうに遠く岩山が連なっていて、

残雪が雪渓を作っているのが見える。


それらを、暖かく平和な日差しが包み込み、

柔らかな風が渡ってゆく。


上空では鳶か鷹のような鳥が、

山並みが生む上昇気流に乗り、

螺旋を描くように高度を上げてゆく。


美しい。


 北国の初夏といったところか。

植生は初めて見るものであったが、

古くから続く集落と、

その外れにある一軒家といった趣だ。


そして、このような景色をオレは前世でも見たことがない。

 


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