お義姉様の後ろに、何かがいる
読みに来て下さって、ありがとうございます。
今回は、グレイスの義弟、サイラスの視点です。
義弟サイラス side
今日も、ベンチで1人こっそり昼食だ。教室でノロノロしていると、他の生徒に絡まれるから。
ああ、態々、僕の教室までやって来て、嫌味を言い、教科書を破いたりして嫌がらせをする暇があったら、勉強でもすれば良いのに。
莫迦じゃないだろうか?自分の立場が失くなるだけなのに。
それにしても、公爵家のサンドイッチは、美味しいな。
お義姉様も、繁みに隠れてこっちを見てないで、一緒に昼食をとろうって誘ってみようかな。それで、『あーん』とかしちゃったりするんだよ。
そう言えば、お義姉様の後ろの木の陰からジッとお義姉様を見て、時々通り過ぎる人達を睨んでいる男達は、何なんだ?
一体、何をしているんだろう。怪しい奴らだ。
そう考えてる内に、あいつがやって来た。
ああ、もう、面倒臭いな。今日で、決着を付けてしまうか?もう、大人しくしているのも限界だ。
子爵家になると、四男なんて、ゴミみたいな物だ。食事は出るけど、一番下の兄に取られて、少ないし。
部屋は、使用人部屋の1つ。学校も金が足りないとかで、兄のお古の教科書を渡されて、自分で勉強しろと言われた。服も兄のお下がりで流石に3人着た後なのでボロボロ。召し使いは与えられないので、自分の事は自分でしてきた。
あの日が来るまでは。
「うん、この子が、いいな」
その一言だけで、僕は公爵である叔父上の養子になった。
へ?
しかも、綺麗で優しくて、年上なのに何か可愛いお義姉様まで、出来て。可愛がられて、抱きしめられちゃったりして。
ここ、天国!?
お義姉様は、時々、悲しそうになる。婚約者の王子様が浮気をしているらしい。
こんなに綺麗で可愛くて優しくて、何事も一生懸命で素晴らしい女の子だぞ。
要らないんなら、貰ってしまおう。そうだ、そうしよう。
僕は、勉強に励み、公爵様にお願いして武術の教師を付けて貰って身体を鍛え始めた。
5人が、僕の座っているベンチを囲み、その内の1人……僕の一番下の兄が、僕の食べていたサンドイッチを払い捨て、僕の襟首を掴んで立たせた。
「お前ばかり、いい思いしやがって。みそっかすのチビのお前より、俺の方が、良いに決まってんだろ!公爵様に言えよ。自分には荷が重すぎますってな!」
兄は、僕に殴りかかり、僕は、じっとその時を待っていた。
正当防衛には、まず、相手に殴って貰わないとね。殴られる寸前に、先に吹っ飛んでおくと被害が少ない上に、派手にやられた様に見える。筈だった。
「見ましたわよ!よくも、私の可愛い義弟を虐めてくれましたわね、貴方達!」
勢い良く繁みから立ちあがったお義姉様は、右手に葉がフサフサの枝を持ち、こちらを差し示した!
「何だ?お前は?」
「その子の義姉だと、言っているでしょう?その子を、お離しなさい」
いや、危ないから、来ちゃ駄目だってば。
お義姉さまは、凛々しく美しく、冷たい目で、兄と仲間を睨み付けながら、こちらにスタスタと歩いてきて、兄の目の前に枝を突きつけた。
兄は、僕から手を離し、枝を払いのけた。
お義姉様の後方の木の陰から、男が2人、慌てて、こっちにやって来るのが見えた。
「何だ。公爵家のお嬢様か。そう言えば、婚約者の王子様が他の女に浮気して、婚約破棄される寸前なんだって?
丁度いいや、婚約破棄される傷物の令嬢は俺が貰ってやるから、俺を公爵の後継者にしろよ。
弟でも、俺でも一緒だろ?俺の方が弟よりいい男だろ?」
そう言って、兄は、お義姉様の手首を掴んで引き寄せようとした。
僕は、横から兄にタックルして、押し退けようとした。
「人の婚約者に手を出そうとするとは、いい度胸だな」
木の陰から走ってきたその男は、兄がお義姉様を掴もうとした手を掴み上げ、兄は、もう1人の男に、後ろから羽交い締めされた。
「変な噂を広めるな。私は、浮気なんてしてないからな」
「グレイス、私は、本当に、浮気などしてないからな」
「……そうですか。どうでも、いいですけど」
「本当に、本当に、浮気なんてしていないぞ。マルセルも、グレイスに何とか言ってやってくれ」
「はぁ。頑張って下さい。殿下」
もう何話か、続きます。




