婚約者は、藪の中
読みに来て下さって、ありがとうございます。
咄嗟の思いつき連載です。コメディですので、頭を空っぽにして、ただ、ただ、お楽しみください。
第一王子キグナス side
生け垣の中にグレイスが、いた。スカートに包まれた可愛いお尻が、生け垣の中から付き出している。
他の男に見られたら、どうするんだ?持って行かれるぞ!?
グレイス・ウェンガー公爵令嬢。私、第一王子キグナスの1つ年下の可愛い婚約者だ。
はぁ。普段は、クールビューティーを装う知的な婚約者だが、昔から、こう言う突拍子もない行動が、愛らしすぎる。
このまま、学園の執務室に、持って帰って愛でるか?
「殿下、鼻の下が伸びてます。あのお尻に顔を突っ込んでプルプルして『いやあん。殿下ったら』とか、言われたいって考えてないでしょうね」
お前は、私の婚約者で、何を想像してるんだ!?
「そ、そんな事は、想像してないぞ」
いや、思わずしてしまった。お前が、そんな事を、言うからだぞ!?
「大丈夫です。妄想は、自由ですからね。多少、変態っぽくても、誰にも判りません」
級友で従者のマルセルが、小声で私に囁き、ウンウン頷いた。
考えたのは、お前だろうが。
私達は、生け垣のすぐ側の木の裏に隠れて、グレイスの見ている者達を見ていた。
話は、少し遡る。
学園の夏休みがあけて、学園生活も始まった。ここの所、昼休みの私の特別室は、静かだった。
うん、静かだ……。
「なあ、ここ数日、グレイスを見かけないんだが」
「ええ、静かでよろしいですね。殿下」
グレイス・ウェンガー公爵令嬢は、一つ年下の私の婚約者だ。朝は、私の馬車を待って挨拶に来、昼休みは、いの一番に私の教室に押し掛けて来て一緒に特別室までやって来る。放課後も、いの一番に私の教室に押し掛け、生徒会室まで同行し、生徒会の仕事が終わると今度は馬車まで同行する。
おまけに、私が級友と話していると、割り込んでくる。
お前は私の護衛か?と思うくらい付きまとっていた。
が、全く、やって来なくなった。
「学園には、来てるんだよな?」
「来ていらっしゃいますよ」
マルセルが、私にお茶のお代わりを入れた。
「で、何をしているんだ?」
「さあ。拗ねてらっしゃるのかもしれません。もしくは、殿下をみ限られたとか?」
「はあ?」
「最後に、グレイス嬢にお会いした時の事を思い出されると宜しいかと」
「最後に会ったのは、グレイスが私の教室にやって来た時だな。級友と話をしていたら、いつもの通り、グレイスが割り込んできたんだ。その日にあった実技の話をしていたから、グレイスに『後にしてくれ』と言ったな」
私は、その時の状況を思い出しながら言った。何しろ、グレイスには関係ないからな。
「その時の級友は、どちらの方で?」
「お前も一緒に居たんだから知っているだろう?セリ-ナ子爵令嬢だ。グレイスは、いつも私が級友と喋っていると、口を出すからな」
「その前に、グレイス嬢が口を出してきた時は?」
私は、よく思い出してみた。その前も、その前も、その前も、いつでもグレイスが口を出してきたのは。
「セリーナ子爵令嬢と喋っている時だ。だが、私と話をするのは、お前を含む側近達とセリーナ子爵令嬢だけだぞ」
「セリーナ嬢と話をしていると、グレイス嬢がやって来ると?」
「ああ、グレイスだ。いつも可愛いな。と、ついにやけてしまうな」
「グレイス様には、セリーナ嬢と微笑みながら話す殿下が見えます」
わかったか、おら!
と言う、マルセルの心の声が聞こえた。マルセルの視線が冷たい。
「巷では、殿下はグレイス嬢を見棄てて、セリーナ嬢に、ご執心だと、もっぱらの噂です」
はぁ!?それは、ダメだ!絶対ダメだ!
紅茶を飲んで落ち着……。
「マルセル、紅茶が空だ」
「興奮して、紅茶を溢されても困りますので。私が」
ああ、お前は、そういう奴だよな。
私に付けられた影の1人に、グレイスの居所を聞いて、今に至る。
プルンとグレイスのお尻が動いた。いや、グレイスが身動きした。
通りすがりの男子生徒達が、グレイスのお尻を見て立ち止まるのを、私が睨んで追い払うのも、限界だ。
よし、執務室に連れて帰って、愛でよう。そっと、抱えて連れ去ってしまおう。
そう思った矢先、グレイスが立ち上がった。
私がお尻をじっと見ていたのが、バレた!?
「見ましたわよ!よくも、私の可愛い義弟を虐めてくれましたわね、貴方達!」
前方のベンチを指差して、グレイスは叫んだ。
「マルセル、持って帰り損ねたな」
「殿下がモタモタしてるからですよ」
取り敢えず、第一話は、第一王子でした。第二話は、誰にしようかな。5話程度で、終わりたいです。