140文字小説まとめ21
海で遊ぶと、足を引っ張る女性の幽霊がいるらしい。だから、思い切り海に遊びに行った。海を泳ぐ内、急に足を引っ張られた。振り返ると、恐ろしい形相の女性がこちらを見つめている。
「俺だけ、死にきれなくてごめんね」
心中した時、先に逝った彼女を抱きしめ、一緒に海底へと沈んでいった。
『自ら』
お母さんが、この間出ていった。お父さんと一緒は嫌じゃないけれど、お母さんもいてほしい……。友達とお出かけしている時も、学校から帰る時も、無意識のうちに探してしまう。それが功を成したのか、お母さんを見つけた。知らない男の人と、笑い合っていた……ああ、もう『お母さん』じゃないんだ。
『さみしい』
「何故警察を辞めて、探偵に……」
彼は、綺麗な笑顔で語った。
「グレーなところも関係なく自由に捜査できますし……警察だからといって、法に従事して罰さなくて良いんですよね」
「私に汚職の濡れ衣を着せて、のうのうと平和に生きている貴方に、重い罰を与えられるんですよ。元同僚さん?」
『探偵の皮』
また、大きく背伸びをした。背伸びしすぎて、爪が割れちゃったから、爪切らないとな。
「ん? どうしたー?」
先輩は、そんな私を知らずに笑顔を向けてくる
「背伸びしたら、大人になれるかなって」
なんだそれ、と先輩は笑って、美人の恋人を見つけて走っていった。爪先が、じん、と痛んだ。
『ふかづめ』