セックスレス
女1 紀代子(五十歳)
女2 珠子 (五十二歳)
女3 早苗 (四十七歳)
昼下がりとある喫茶店で女三人が談笑している。
女2「この喫茶店しゃれおつね~」
女3「今時の若い子はしゃれおつなんて言葉つかいませんよ!」
女3「あら!そうなの?じゃあ今時の子はなんて言うのかしら・・・・」
女3「私もよく分からないですけど娘はおしゃかわと言ってますね。」
女2「おしゃかわ・・・・なるほどねじゃあしきり直して・・・この喫茶店おしゃかわね~」
女1「もうどうしてそう若者言葉を使いたがるの?」
女2「そりゃいつまでも若くいたいからよ。」
女1「今更おそいわよ!」
女2「今は美魔女よ!美魔女!」
女1「美魔女ねぇ」
女2「早苗さんはそう言われたりするんじゃない?」
女3「いえいえ、美魔女とまでは、時々娘といると姉と間違えられるぐらいで・・・」
女2「良いわねぇ~私にも娘がいたらそう言われたのかしら。」
女1「あんたには無理よ。」
女2「何ですって!私だって顔を2~3個いじくりゃあね~」
女1「桁が足らないわよ?」
女2「・・・・」
女3「あの~私がいじくってるみたいじゃないですか・・・」
女1「あんたはいじくりまわしてるでしょうが」
女3「まぁそうなんですけどね・・・この三人の秘密ですよ?」
女2「あら!そうだったの?お隣の山田さんに話しちゃったわ!」
女3「珠子さんのご近所さんならいいですよ。私のこと知らないし私を知ってる人に言いふらしたりしないですもん」
女1「でもあんたがやってんの職場の全員知ってるよ?」
女3「へ?・・・言いふらしたんですか?」
女1「私はそんなことしないよ」
女3「・・・・」
女2「私も違うよ!」
女1「誰も言いふらさなくても分かるよ・・・皆陰でうわさしてるわよ。私は隠し事とか陰口とか嫌いなだけ。」
女2「そうそう私も」
女1「あんたは苦手なだけでしょうが!」
女3「ショックです~お二人が相当感の鋭い方でばれたのだとばかり・・・」
女1「私はまだしもねこの人が気付いてる時点で気付きなさい。」
女3「そうですね・・・」
女2「鈍感な私でも傷つくのよ?」
女1「明日には忘れるでしょ?」
女2「そう!」
女3「いいなぁ~私忘れられたらなぁ・・・明日からどんな顔して仕事場いけば良いか分からなくなしました。」
女1「あえてすっぴんでくれば?」
女3「絶対無理です。」
女2「そんなに落ち込むことかしら?私は早苗さんの美に対する努力凄いと思うのよねぇ。憧れちゃう。」
女3「そうでしょうか・・・・」
女2「そうよ!整形がなによ!それで綺麗になるなら素晴らしいことじゃない。」
女3「そう言われると素直に嬉しいです。」
女1「まぁ所詮、やっかみだから気にいなさんな。」
女3「なんか凄く泣きそうです・・・・化粧崩れるから泣きませんけど。」
女1「あんたすごいわ。」
女2「ねぇ私にも病院紹介してよ!」
女1「だからあんたはいいでしょうが・・・」
女3「いいじゃない!私だって綺麗になりたい。」
女1「いい年なんだから。」
女2「早苗ちゃんとそんなに変わらないわよ。」
女1「五つも違うでしょうが。」
女2「あってないようなものよ。」
女1「五年は大きいわよ。それに早苗さんはずっと努力してきたのよ?今更しても変わらないわよ。」
女2「物事に遅すぎるなんてないのよ。そうだ!あなたも一緒にやりましょうよ!」
女1「わたし?」
女2「そう!あなた化粧といったら紅ぐらいでしょ?元は悪くないんだから勿体ないなぁって思ってたのよねぇ」
女3「それは私も思ってました。」
女1「私はいいのよ。誰に見られる訳でもないし。」
女2「旦那がいるじゃない。」
女3「そうですよ!紀代子さんの旦那さん紀代子さんにベタぼれじゃないですか!」
女1「・・・・実は今日話したいことがあるって言ったのはその旦那のことなのよ。」
女3「まさかまさかの浮気ですか?」
女1「浮気だったらまだらくだったかも・・・」
女2「え?二十年連れ添って実は相手に家庭があったの?」
女3「自分が浮気相手だったパターン!」
女1「ちょっと話が飛躍してる!ただの夫婦間の問題。」
女2「あんたが雅人さんと喧嘩した話なんて聞いたことなかったけど・・・とうとうあんたの横暴に耐えられなくなったのね。」
女3「優しい夫が豹変!モラハラ夫にあなたの旦那さんは大丈夫?モラハラ夫を見抜く4つのヒント。」
女1「そんなヒント知りません!」
女2「はい!完全に分かりました。」
女1「では珠子さんどうぞ。」
女2「夫婦の営みについて悩んでいる。」
女1「正解」
女2「やっぱりね!」
女3「凄い珠子さん!」
女2「あんたが化粧しないだのなんだのいってるから色気感じなくなったのよ。」
女3「セックスレスですね」
女1「そうだったらどれほどよかったか・・・」
女3「え?違うんですか?」
女1「逆、私はセックスレスになりたいの!」
女2、3「セックスレスになりたい?」
女1「そう。」
女2「なんでよ!なりたいなんて聞いたことないわよ。」
女3「そうですよ!いつまでも女としてみられるなんて最高じゃないですか!」
女1「私もう五十よ!いい加減しんどいのよ。」
女2「あんたもう終わってたっけ?」
女1「・・・まだだけど。」
女3「珠子さんは?」
女2「私は終わったわね!」
女3「やっぱりしんどいんですか?」
女2「まあそれなりにはしんどいかな?でも聞いてたほどじゃ無かったわね。」
女1「あんた元々、女性ホルモンに頼ってなかったんじゃない?」
女2「褒めないでよ。」
女1「皮肉よ!」
女3「怖いなぁ・・・積み上げた物が一気に崩れるような感じがして・・・」
女2「なせばなるよ!」
女3「私、紀代子さんの言っている意味分かった気がします・・・」
女1「でしょう。」
女2「なにかしら?」
女1「いっそ終わってくれないかな::」
女2「なんでそんなに嫌なの?あんたの旦那シュッとしてさわやか系じゃない。」
女3「そうですよ、羨ましいです。大人の男性って感じで再婚するならあんな人が良いです。」
女1「人は見かけに寄らないのよ。」
女2「あんたの旦那、たんぱくって言ってなかった?」
女1「昔はね・・それを不満に思ったこともあったけど。」
女3「今はエッチしてるってことですよね?定期的に」
女1「週1・・」
女2「あら、凄いわね!あたし十年はしてないわよ。」
女3「十年もしてないんですか?」
女2「あんたも旦那と別れて十年たつじゃない」
女3「私月一ぐらいでありますよ。」
女2「そっか営業の田淵さんと。」
女3「え・・・なんで珠子さん知ってるんです?」
女1「これもバレてないと思ってたの?」
女3「だって私彼氏としか言ったことありませんよ?」
女1「だからあんたバレバレよ。不倫されて離婚したのに不倫する女として部署で有名・・・」
女3「うそ・・・もう私、仕事場いけない・・・」
女1「男共は整形すら気付いてないけど。」
女3「なら大丈夫です。」
女2「あ、いいのね。」
女1「そんなことより私の話でしょ。」
女3「週一なら、普通じゃないですか?」
女2「普通なの?」
女3「まあ、そろそろ熟年にしては多いと思いますけど・・・」
女1「これからもっと増えると思う。」
女2「なんでそう言えるの?」
女1「最近分かったんだけど、熟女が好きみたいなの、彼。」
女2「あら、そうなの?」
女3「急に変な声出すの止めて下さい。」
女2「・・・なんでそう思ったの?」
女1「単純な話、そういったビデオばかり持ってたのよ。たんぱく人だと思ってたから持ってのにも驚きだったけど・・・」
女3「若い子ゼロですか?」
女1「ゼロもゼロよ、あるのも私の年齢以上の方ばかりよ。もはやおばあちゃん」
女3「男って何だかんだ若い子が好きだって思ってたけどガチの人もいるんですね。」
女2「でも女にとったら理想じゃない?年をとればとるほど愛してくれるなんて。」
女3「そうですよどんだけやっても限界ありますからね・・・いいなぁ私もそういう人だったら楽なのに。」
女1「よかないわよ!しんどいの正直、そんな体力ないのよ私には。これからさらに増えると思ったらぞっとするわ。」
女2「何いっての私達、熟女の希望よ!まだ女でいいんだって思わせてくれるんだから。」
女3「それすてきです。」
女2「でしょ。」
女1「想像しなさい、私はばばあに彼はじじいにどんどんなっていくわ、そんな綺麗な物かしら?それにそのばばあになっててるって言われてるみたいでさすがに腹立つわ。」
女3「目が覚めました。」
女1「よろしい、これはかなり深刻な悩みよ。どうしたら良いかしら?いっそ別れようかしら。」
女2「そこまでする必要無いわ。ここに魔女がいるじゃない。」
女3「え?私ですか?」
一ヶ月後、同じ喫茶店に三人が集まっている。
二人は前回と同じ感じの服装、一人前回のTシャツジーパン姿ではなく、おしゃれな服装でメイクもばっちりである。
女2「見違えたわね!お世辞ぬきで10は若返ったんじゃない?」
女1「これも早苗先生のおかげ、あらから毎日お化粧してるし、服も三年ぶりぐらいに買ったわ。」
女2「さすが魔女ね。私も劇的ビフォーアフター頼もうかしら。お願いします早苗先生。」
女3「珠子さんは土台から建て直しですね。」
女2「そんないに悪いの私?」
女3「そんなことよりあれから旦那さんとはどうなんですか?」
女1「めっきり誘われなくなったわね。」
女2「よかったじゃない。」
女1「それが良くないの・・・自分でも驚くほど綺麗になったら欲が出てきてね。」
女2「・・・あんた。」
女1「セックスレスなんだけどどうしたらいいかな?」
終わり