ゲーム 4
『ピンポーン。』
「はい、水瀬です。
どちら様でしょうか?」
「佐倉いろはです!」
「あっ、いろはちゃんね。
いらっしゃい。
すぐ開けるわ。」
優子は玄関の扉を開けた。
「いらっしゃい。」
「お邪魔します!」
そう、とある場所とは勇輝の自宅。
優子がいろはに予め電話しておいて招いたのだ。
いろはに紅茶とチョコレートケーキを出してから優子は言う。
「実は、こんな手紙が届いたの。」
いろはは渡された手紙をまじまじと読む。
『よお!俺様は怪人ボビーだ!
水瀬勇輝はこっちで預かっている!
そして…!
10/31のAM10:31、萌木武道館!
ここでゲーム大会をやる!!
そして勝ったら水瀬勇輝はお前のものだ!!
おっと!
警察呼んだらどうなるか分かってるよな!?
じゃあ待ってるぜ!!
怪人ボビー』
新聞の字を千切って糊で無造作に貼るという形式であった。
「手紙というより果たし状?
頭おかしいですね、この人。」
「そしてこんな写真が同封されていたの。」
差し出された写真を見た。
勇輝は手足をロープで拘束され、口にはガムテープで猿轡をされている。
その横でボビーらしき黒いマントを羽織った外国人がピースサインをしている。
恐らくアメリカ人かイギリス人だろう。
気味悪い笑顔は彼の愚かさを物語っている。
「私…どうしたらいいか…。」
優子は泣き出した。
少々考えた後いろはは言った。
「分かりました!
私このゲームに参加します!!」
「え…。」
優子は唐突ないろはの返事に目を見開いた。
「…ありがとう。
でもいろはちゃんのことも心配だわ。
やはり危なくても通報した方が…。」
勇気を振り絞りいろはは答えた。
「私、勇輝くんのことが大好きなんです!
いつも勇輝くんという存在に癒されてきた。
だから今度は私が助ける番。
それに、こう見えて私は成績も悪くないし運もいいんです!
お願い、行かせて下さい!!」
いろはの顔は真赤だ。
それを見た優子は、あやふやな気持ちになったが冷静を取り戻した。
「…分かったわ。
ありがとう。
ただ無理しないでね。」
「分かりました!
こちらこそありがとうございます!!」
いろはは、お礼を言うと時計を見た。
「あっ!いけない!!」
時計の針は19時を示していた。
「すみません!
長居してしまいました!
家、門限が厳しいのでまた!!」
「あっ!いろはちゃん!!」
優子が声かけるも虚しくいろはは急いで帰った。
テーブルには紅茶とケーキの残りが淋しそうに彩られていた。