ゲーム 2
「この間の期末テスト返すぞー!」
いろはの一つ前の出席番号の小出翔平がテストを片手に着席する。
「佐倉ー!」
いろはの社会のテストは72点だった。
「佐倉、今度は100点とろうな。」
「はい。」
『小学生の頃の麻田先生なら誉めてくれたのに…。』
いろはは、内心そう思った。
いろはは成績は悪くはない。
寧ろ中の上だ。
しかし、新しい環境に馴染めないという性で中々友達を作ることが出来なかった。
『はあ〜。
あっ!』
いろはは閃いた。
『今日、学校の帰りに雑貨屋さんでレターセットを買おう!
そして勇輝くんに想いを伝えるんだ!』
いろはは勇輝のSNSは愚か、メールアドレス、LINEすら知らなかった。
しかし小学生の頃、勇輝と年賀状を交換していた。
それを見れば宛先は一目瞭然だ。
『いいこと思いついた!』
『えーっと、勇輝くんが好きそうな柄はどれかな?』
いろはは雑貨屋のレターセットコーナーをまじまじと見ている。
たまに手にとって間近で見たりもしていた。
右手にクローバー柄、左手に桜柄のレターセットを手にした途端思い出した。
『そういえば卒業式の時咲いていた桜綺麗だったなあ。』
いろはは勇輝とまた桜を見ることが出来るようにと願いをこめる。
それを継続しながら桜柄のレターセットをレジのカウンターに持っていった。
「420円です、ありがとうございました!」
『勇輝くんへ。
今日和。元気?私は元気だよ!
そっちの学校で上手くやってる?
私はぼちぼちだよ。
勇輝くん、かわいいけどちょっと弱いから心配だなあ(汗)
今度一緒に遊ばない?
本当はお花見に行きたいけどもう7月だから勇輝くんの好きな場所でいいよ(*^^*)
じゃあ短文だけどまたね!
いろはより。』
いろはは手紙にこう綴った。
元々達筆ないろはだが手紙の上では文字が踊っている。
主婦のへそくりの様に隠しておいた勇輝から来た年賀状と110円切手を準備する。
大袈裟な行動かも知れないが、いろはの両親は厳格だ。
返事が来たら咎められることを覚悟していた。
「行ってきます!」
いろはは家を出た。
学校へ向かう途中、ポストに手紙を投函した。
「おはよう!」
登校中に学生達がそう言葉を交わすが虚しくいろはは挨拶ができる友達がいない。