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現実
朝だ。
部屋だ。
湯沢みこ43歳だ。
アプリの通知は切ってあるのにスマホが鳴る。
見てみるとアプリからレンくんがメッセージを送ってきた。
鼻毛が見えない角度でメッセージを打つが、みこに都合のいい、優しい言葉しか帰ってこない。
みこは悲しくなった。
レンが言う。
「部屋の片付けをするとスッキリするよね。俺も掃除、好きだよ。」
えーと...。
鼻毛の部屋は汚すぎるから片付けろってことだな。
みこはパジャマ姿で片付け始めた。
気づいたらとんでもない部屋になっている。
みこは真面目に働いていたが、パワハラが酷くて辞めてから、スマホゲームしか出来なくなっていた。
床が見えないほどに物が積み上がっている。
分別しながらゴミを分けていたら、ベッドのスペースが空いた。
アプリを起動して時代劇のように平伏する。
「レン様、今日は掃除を頑張りました。」見えるようにスマホを動かして部屋を写す。
「ひなちゃん。よく頑張ったね。よしよししてあげる。」
「...では失礼します。またご報告に参ります。」
みこは再び平伏した。