ここは大学ですが
僕は今日いつも通り大学で講義を受けていた。
4月上旬、2年生の僕は真面目に講義を受けていた。…真面目に……まじ…め…に……。
やばいお昼を食べた後のこの時間が一番寝られる。
後ろの方でよかった。…よし寝よう。
机に置いてあったものをどかして僕は寝る態勢を整える。
「おやおや講義をすっぽかしてお昼寝なんて不真面目君だね~?」
スマホを見るとかなりいい時間になっている。僕は眠い目をこすりながら帰り支度をして、講義室を出ようとして…。
「ちょ、ちょっと待ってよ~」
後ろから焦ったような声が聞こえてきた。
最近よく耳にするようになったあの声。…そう昨日だって…。
『私ができる事があったら何でも言ってね』
マイハウスに押しかけてきて、なぜか僕への質問会になっていた。
そのとき僕の生活を知った彼女は、真面目な顔でそう言ってきたのだ。
なーんで言っちゃったんだろうな~。
妹と二人暮らしのこと、家族のこと、母のこと、あいつのこと。……全部彼女には関係なんてないのに…。
「こんな可愛い私が耳元でおこしているんだよ。何が思うことがあるんじゃないの?」
う~ん。強いて言うならその猫なで声が気持ち悪いってところだか…。
ってかなんでこいつが…いやこの人がここにいるんだ?
ここは大学なんたが…。
「春華さん、起こしてくれてありがとうございます。意外と気が利くじゃないですか。」
「なぜ上から目線?…ってそうじゃなくて!えっと、その…」
顔を赤らめる(なぜ?)彼女の次の言葉に何が不穏なものを感じ、身構える。
「その…ドキドキしたかな~って」
控えめに発せられた言葉に思わず顔を上げた。
彼女は満面の笑みを浮かべていた。赤らみは跡形もなく、ただニヤニヤといったようなむかつく顔がそこにはあった。
くそっ。からかってやがるな。
「ちょっとはるか~なにしてんの?早くしないと売り切れるよ」
後ろの方からちょっと強めの声が近づいてきた。声の主は春華といつも一緒にいる環という春華の同学年の女の子だろう。
ショートカットの髪とそこから覗く鋭い切れ目、すらっとしたスレンダーな身体。
…まぁどちらかというと男子に近いのだが。
「ねえ君なんか今私の親友に対して変なこと考えなかった?」
「そのような事実は一切ございません」
少し食い気味で答えてしまったが、まぁいいだろう。
「それなら…いいけど……」
春華の不機嫌そうな声が帰ってきた。彼女を見ると頬を膨らませている。
うんなんで?何その返事。その顔。全然意味わかんないんだけど…。
「じゃあ僕はもう帰るんで。さようならってあれ?」
「…そーだから今日は用事ができたから環とは帰れないから。ごめんね。ばいばい」
「…もしあいつが春華と変な関係になったら私があいつを……殺す!……」
「も~環そういう事いわないで。大丈夫だから、ね?」
何やら向こうの方で物騒な会話があったような…。聞かなかったことにしよう。
「明後日は君もひまでしょ?その日私に付き合ってほしいの。性的な意味じゃないよ?変なこと想像しちゃった?エッチだね」
僕らはあの後帰り支度を済ませて2人で帰宅していた。
帰るとき一人の少女から殺気を感じたのは気のせいだろう。
「何か反応してよ~。まあいいや。君には私のお父さんのお見舞いに付き合ってほしいんだ。言いたいことは明日聞くからさ。とりあえず駅に11時集合ってことで、いい?」
「あぁわかりました」
僕の返事を聞くと満足したようにうなずくと背を向けて帰っていった。
スマホを取り出してニュースを見るとこんな文字が目に飛び込んで来た。
『彗星地域に接近!衝突の恐れ』