100点満点の
「人種は滅亡する」
西暦2045年、日本のあるプロ棋士が70年以内に大災害が発生する事が分かり、その先にある地球の運命を予言した。
彼は自分でつくったAIを使い、将棋の研究をしていたという。
最近ではAIとの対局で勝利して「AI超え」と呼ばれていた。
彼の予言に対する人々の批判は凄まじいものだった。
将棋のタイトル全制覇を目前にして彼は棋士の引退を余儀なくさせられた。
「きっと自分たちが間違っていたと気づくときが来る。僕が気づくのが少し早かっただけの話だ。地球最後の時は必ず来る。思っているよりずっと早く!」
記者会見でそれだけ叫ぶと彼は爆ぜた。どこまでも赤く美しく…。
IQ250超え世界で最も知的能力の高い人間がこの世から消えた瞬間だった。
一つのシステムを残して……
「…私が彼について知っているのはここまでかな」
「とりあえず名前を教えてください」
僕は夜空を眺めていたら突然声をかけてきた謎の女に引きずられて、公園のベンチに座らせられたのはほんの数分前のこと。…いや実際には引きずられてないけど。多分。
「っていうか公園なんだ。」
カフェに連れてってくれるって言ったからついてきたのに…。
僕は夜中の公園で独り言つ。
「何か文句でも?」
いや2人いた。彼女は笑顔でこっちを向いた。
「いや別に私が金欠な訳じゃないから。ただちょっと消費癖があって面倒くさがりでバイトをしてないからお金がないだけだから。ちゃんと私飲み物は奢ったじゃん?何か文句でも?」
何度も言うが彼女は笑顔だった。
それなのに身体が思うように動かず僕は首を横に振ってしまった。
彼女の目が笑ってないようにみえた。
もちろん4月上旬の夜中に冷え冷えのコーラを渡してくるのはどうなのかという疑問は言えるわけがなかった。
「さてこっからが本題なんだけど。私は小林春華。本名だから安心してね。君は私といっしょにとある棋士について調べてほしいの」
「そのとある棋士っていうのはさっき言っていた…」
「おっよく聞いてたね。えらいね~。その通り人類滅亡を予言した棋士だよ~」
よしよし~っと彼女、小林春華は頭をなでてくる。……なるほどなるほど僕は相当なめられているらしい。
「さて話は終わって連絡先も交換した事だし私は帰るね」
「ちょっと待て。僕の返事まだですし、いつ連絡先を交換したんですか!」
疑問が多すぎて頭がついていけない。
春華はそのまま歩きだそうとする。
「まぁ別になんでもよくない?そこは。奥の手だよ奥の手。話ってテンポが重要だから」
すると春華はくるっとこっちを向くと100点満点の笑みで「おやすみ」と言い、去って行った。
僕は彼女を呼び止める事もできずただ呆然と立ち尽くしていた。
100点満天の星空が僕を見下ろしていた。