第009話 君に捧げる恋心
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放課後になると部室棟へ向かった。
今までに部活というものを経験してこなかった俺にとっては、放課後の廊下が新鮮な景色に見える。
終礼が終わってからすぐに移動したので、まだ部室に人がいないのでは無いだろうか。
そうなれば、そわそわとした気持ちで三人を待たないといけないな。
ドアの前で悩んでいたが、時間だけが過ぎるので意を決して扉を開けた。
「あ、お疲れ様です。」
「お疲れ様!どうだい、相談の方は解決しそうかい?」
部室には俺以外の全てのメンバーがいた。
早い集合に驚きながらも糸井先輩の問いに返事をする。
「そのことなんですが情報を集めた結果、ある推測が生まれたので聞いて欲しいと思いまして。」
「どうやら佐倉くんも今回の件について気付き始めたようだね。ソファーに座りながらでも話そうか。」
興奮のあまり立ったまま話していたようで着席を促される。
きっと話せば長くなるだろうから、バッグを後ろの棚に置いて言われた通りソファーに腰掛けた。
席は古東の隣で、正面のソファーに糸井先輩と七瀬先輩がいる。
先輩二人に見られると少し緊張もするが、彼らの表情がそれを和らげる。
きっと人の考えを否定するようなタイプではないだろう。
「まずは、君の考えを自由に聞かせてほしい。」
「分かりました。今回の件についてですが、岡田真衣と今仲秀治の二名が相談を持って来ました。そして、重要なのは岡田真衣がストーカー被害を受けていることです。だから、俺は岡田真衣について調べる今仲が犯人だと思った。けど、それは間違いだったんですよ。」
「アタシ難しいことは分かんないけど、今仲は犯人じゃなかったってことで良いの?」
ここで上手い具合にパスが飛んでくる。
誰かがその言葉を投げかけてくれるのを待っていた。
俺は自信満々のドヤ顔で説明する。
それを見て、古東はちょっと鬱陶しそうな表情だ。
多めに見てくれよ。推理を披露するのは漫画とかだと一番重要な場面なんだから。
「俺が言いたいのは、今仲秀治"も"ストーカーだったということ。恐らく岡田真衣は複数の人間から被害に遭っていたはずだ。それも、かなり短い頻度で。」
「佐倉くんの推測は大当たりだよ。彼女の身辺調査を行ったところ、中学から高校まで彼女がストーカーの被害にあった件数は六件。どれも違う人物から受けている。」
糸井先輩からアシストが入り、俺の推測により信憑性が加わった。
後輩の初めての見せ場を補助してくれるとは素晴らしい先輩だ。
今度から足を向けて寝れないな。
「これは偶然じゃない。岡田は、女性慣れしていない男子生徒にわざと接触して仲良くなった。そして、相手の思いを弄びストーカーを作り上げた。」
「待てよ、それで六人全員が上手いことストーカーになるとか考えられないでしょ。」
「いや、岡田に話掛けられた男子生徒はもっといたはずだ。その中で反応が良かった獲物だけを選んでいたんだろう。その狙いは、恐らくストーカー被害を示談で無かったことにする強請りだろうな。」
「どうしてそう考えたの。もっと別の理由があってもおかしく無いと考えそうだけど。」
七瀬先輩から理由を説明しろと遠回しに言われた。
自分では分かるように説明しているつもりであったが、やはり説明不足なところが多いようだ。
「理由になるか分からないですけど、昼休みに岡田が男子生徒と話をしているのを見ました。確認できる範囲だけでも二人の友人がいる岡田が、ストーカー被害に悩まされている中で男子と一人で会うのは不自然だ。」
「つまりは、一人で会わないといけない理由があった。それが強請りってことね。」
「僕が調べた結果も大体同じかな。よくその結論に辿りついたね。」
賞賛されるのは嬉しいが気持ちは複雑だ。
相談に来た二人は、被害者でもあり加害者でもあるのだから。
恋に溺れた者の行先がこんなにも悲惨であるなら、俺は一生しなくて良い。
ピロンッ!
どこからか通知音が聞こえた。
自分の携帯を確認したがどうやら俺ではないようだ。
他の三人も同様に確認したが該当者はいない。
残されたのはテーブルの上に置かれたパソコンのみ。
代表して部長が開く。
「これはまずいことになったね。」
表情を曇らせながら、開いたメールを全員に共有する。
差出人は、今仲秀治。
内容は、岡田真衣から連絡があり、自分の行動がストーカーに該当することが告げられたことが書かれていた。
それに加えて岡田から呼び出されたので直接謝罪をすることも。
「今の状態で二人を合わせるのは危険だ。」
その言葉を聞くと古東は場所も分からないはずなのに部室を飛び出した。
考えるよりも先に体が動く気持ちは分かるが、無闇矢鱈に探すのは不可能だ。
「このメールの発信場所は学校から最寄りの駅近くのハンバーガー屋からだね。その近くを探してほしい、僕達は後で合流するから。」
それだけ聞ければ場所は大きく絞れる。
俺も古東の後を追って部室から飛び出した。
ん?ちょっと待てよ。
糸井先輩、発信元がどうとか言ったのか?
あの短時間で探知したの?
・・・今度から部長にメールするときは気をつけよう。
校門を出ると古東の姿を見つけた。
古東は俺の姿を見つけると急いで駆け寄ってくる。
「あのさ、どこ行けば良いんだろ?」
少し顔が赤いのが分かる。
恥ずかしかったのなら今度からもう少し落ち着いて行動しような。
「駅周辺を探そう。多分、その辺に二人はいるはずだ。」
とにかく走り続けた。
こんなに走ったのはいつぶりだろうか。
運動不足が祟って息も絶え絶えになっている。
それでも走ることと考えることをやめてはいけない。
場所はどこだ。駅周辺で、人目に付かない場所なはず。
地図アプリを開きながら探し出すが、なかなか候補を絞れない。
「見つけた!今仲だ!あの空きビルの中に入って行ったぞ!」
どうやら神は俺達の味方をしてくれるようだ。
偶然今仲を発見することに成功する。
しかし、ビルの中に入ってしまったので急がないとな。
携帯をポケットへ雑に押し込んで後を追う。
三階くらいまで上がると広い室内に出た。
そこに二人の姿も確認できる。
何か話始めているみたいだが、止めるしかない。
「そこまでに「貴方のことが好きなだけなんです!」
大きな声で俺の制止は掻き消された。
それにしても大胆な告白だ。
今仲の表情は覚悟を決めた顔だった。
ストーカーをしていたかもしれないが、彼女を傷付けるつもりはなかったのだろう。
だからこそ、遠回しに思いを伝えるのではなく直接会って話をしようと思ったのかもしれない。
「キモっ。お前、立場分かってるの?女のこと、コソコソ調べてた人間がまともに相手される訳ないでしょ。」
「それは本当にすみませんでした。」
今仲は地面に頭をつけながら謝罪をした。
それでも、岡田の表情は変わらない。
「無関係な二人まで付いて来てるしさぁー。マジで最悪。」
「無関係ってこともないと思うぞ。ターゲットの候補に俺も入っただろうからな。」
「げっ。佐倉陽太だったのか。」
俺の顔を見ると、ばつが悪そうになる。
今から説得を始めて、岡田に強請りをやめさせることは出来るだろうか。
緊張感のある空気がその場を支配した。
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